グリズラーとブラッドマン
テンマとソフィアはショッピングモールから帰ろうとした。
テンマはソフィアの荷物持ちだ。
「ふいー、けっこう買ったな」
「ごめんなさいね。あなたに持たせちゃって」
「彼女の荷物を持つのは当然だろ?」
「あ、そう? うれしいわ」
「こんなことくらいでうれしがるなら喜んで」
「きゃあああああああ!?」
「うわあああああああ!?」
「助けてくれー!?」
「!? ソフィア!」
「ええ、この感じ、アルコンテスね!」
「ここで襲ってきたか!」
二人は駆けた。
「あ、あ、あ、あああ……」
女性の前には空の蛇がいた。
その蛇は透明で、シルエットが浮かび上がってる。
蛇は女性にくらいつこうとしている。
女性は恐怖で凍り付いた。
蛇はゆっくりと近づいてくる。
「シャーーー!」
蛇が女性にかみつこうとする。
その時。
「大丈夫か!」
テンマが現れて、蛇を斬り裂いた。
蛇は消失した。
「今のうちに逃げるんだ!」
「は、はい!」
女性は駆け出して行った。
「こんな人が多いところで、襲撃か。今度の奴もふざけたことをする。ソフィア、戦いの準備はできているか?」
「ええ、もちろんよ!」
「クックック、これはこれは天使がるぞ?」
「ほう、我らの前に立ちはだかるか?」
「? おまえたちは何だ?」
テンマたちの前にクマの獣人、バラの妖魔が姿を現した。
おそらくこいつらもアルコンテスの手下だろう。
「俺様はグリズラー(Grizxler)」
「我はブラッドマン(Bladdman)。アルコンテスの一人メトシェラ様の配下だ」
「メトシェラ……そいつが今回の事件の首謀者か」
「セラフィエルとソフィエルだな? おまえたちは俺たちがぶっ殺す!」
「我がいばらの鞭を味わうがよい」
「フン、いいだろう。ソフィアはあっちのバラ型の奴を頼む。俺はグリズラーをやる」
「ええ、いいわ!」
テンマ対グリズラー。
「フッ、この爪で切り裂いてやるぜ! 死ねえ!」
テンマはそれをあっさりとかわす。
それからすみやかに反撃した。
白い剣がグリズラーを襲う。
「ぐあっ!?」
「どうだ!」
「へっへっへっへ! 効かねえなあ!」
グリズラーは爪で突いてきた。
テンマはそれをよける。
「何っ!? 効いてないのか!?」
「俺様の体はそう簡単に刃は通じないぜ!」
グリズラーが手に力を集める。
黄色い光がグリズラーの爪に宿る。
何かが来る!
テンマは警戒した。
「うりゃあああああ! 死ねえええええええ! クレッセントクロー!」
グリズラーが三日月型の攻撃をした。
テンマはそれを跳びのてかわした。
「ちいっ! かわしやがったか! 動きが速い奴だぜ!」
今のは危なかった。
まともに受けていたら、この体では一刀両断にされていただろう。
グリズラーが吠ええるように連続で攻撃してくる。
「グオオオオオオオオ!」
グリズラーは体の大きさの割に俊敏だった。
テンマには反撃の機会がつかめない。
「くっ!? やる!」
「いい加減にくだばりやがれ! かわすんじゃねえ!」
グリズラーはどうやら短気な性格らしい。
徐々にイラつき、攻撃が雑になってくる。
テンマには有利になったということだ。
「はああああああ!」
テンマの光の剣とグリズラーの爪が激突する。
グリズラーは力で押そうとする。
テンマは力ではかなわないと見て、それを受け流す。
「うおおおおおりゃああああ!」
グリズラーが両手に黄色い力を集める。
クレッセントクローだ。
今度は両手でそれを放つつもりだ。
「死にやがれええええ! ツインクレッセントクロー!」
グリズラーの攻撃がテンマを襲う。
テンマはそれを高くジャンプしてかわすと、そのままグリズラーの頭に落下し、剣をグリズラーの頭に突き付けた。
「グヒョッ!?」
グリズラーがふらつき倒れる。
グリズラーはテンマの一撃で死んだ。
一方ソフィアとブラッドマンは……。
「ひゃああああああああ!!」
ブラッドマンは緑色の鞭をソフィアに振り下ろした。
ソフィアはそれを横によける。
ソフィアは手に三又の槍『トリアイナ』を持っていた。
ソフィアは反撃に機会をつかもうとするが、ブラッドマンの鞭はそれを許さない。
「フッフフフフフ、よくかわすねえ! だが、我の攻撃をそのままかわすことができるか!」
「あら? あなたの攻撃も全能じゃないわ。せいぜい今のうちにほざいていることね」
「ちいっ! 女ごときが生意気な! これで死ね!」
ブラッドマンは鞭を硬質化させて、伸ばしてくる。
冗談の攻撃をソフィアは槍で受け流し、下段の攻撃をかわしてよける。
ソフィアは強がったものの相手の攻撃に反撃の機会が見つからない。
ブラッドマンの攻撃は厄介だった。
ソフィアは槍を構えて、反撃の機会をうかがう。
「ふふん、鞭は効かぬか。なら、これをくらうがいい!」
ブラッドマンが頭の花弁を飛ばし始めた。
赤い花弁は宙からソフィアへと降ってくる。
ソフィアはその危険性に気づいた。
「これは……眠り!?」
「そうだ! 眠りの花弁だ! さあ、まどろむがいい!」
ソフィアはスピリチュアルフォースを集中させた。
ソフィアは槍に水をまとわせる。
そしてそのまま水の回転を上方に向けて放った。
「滝打ち!」
水が回転しながら上へと昇った。
ブラッドマンの花弁はすべて消し去られた。
「な、何だと!?」
ブラッドマンが驚愕する。
そこに隙が生じた。
それをソフィアは逃さない。
そのままブラッドマンに近づいて、ソフィアは水の竜の一撃を繰り出した。
「くらいなさい! オロチ突き!」
「うおおおおおおおおおお!?」
水の竜はブラッドマンを体ごと呑み込んだ。
ブラッドマンは今ごろ、竜の中で斬り刻まれているだろう。
この技はソフィアの最強必殺技だった。
水の竜が消えてブラッドマンが現れる。
ブラッドマンの体はズタボロだった。
「私の勝ちね!」
ソフィアは軽く勝利を宣言した。