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サキエル

風が吹いてきた。

天使サキエル(Sakiel)の顔に風が当たる。

サキエルはビルの上で服をなびかせていた。

じきに日が暮れるだろう。

サキエルの任務はセラフィエル、ソフィエルと合流し、アカモートを滅ぼすこと。

つまり、この世界の救済である。

「さて、二人とどう合流するか……二人がすでにこの世界に来ていることは確実なんだが……」

この広い世界で、二人の気配を探るのは容易ではない。

「君は誰を待っているんだイ?」

サキエルの背後に何者かが現れる。

サキエルはこの世界に侵入した存在、つまり異物だ。

この世界の管理者はそれに気づくのだろう。

「おまえは?」

サキエルが振り返る。

「失礼、ぼくはアルコンテスの一人、名はメトシェラ」

「そうか。さっそく、敵が現れたということだ」

サキエルとメトシェラは対面する。

「ふふふ、君も天使かイ?」

「そうだ。俺は天使サキエル。(キュリオスの要請を受けて、この世界に降り立った」

「天使……天使と戦えるのは初めたダ。フッフフフ!」

「なるほど、おまえは俺の敵らしいな。ならば戦うだけだ」

周囲の緊張感が一気に高まる。

もはやここに他人が入れる領域は存在しない。

「エアカッター!」

メトシェラは右手をかざした。

サキエルは右に跳んだ。

風の刃が振るわれた。

「おやおや、ぼくの攻撃をかわしたかイ? 不意を突いたと持ったんだけどネ」

「フン、そんな攻撃を受けるほどのろくはない。今度はこっちの番だ! リヒト・ゼーベル!」

サキエルがマテリアライズした。

サキエルの手には一本のサーベルが握られていた。

「へえ……それが天使のマテリアライズかイ? 初めて見たヨ」

「見たところおまえは武器を持っていないようだな。なら。接近戦に持ち込めば、こちらに勝機がある!」

サキエルは一気にメトシェラと間合いを詰めた。

サキエルの剣が振るわれる。

メトシェラはまったくガードするそぶりを見せない。

このまま斬れる!

サキエルはそう思った。

「フッ!」

サキエルのサーベルが何かに当たった。

「何!?」

それは蛇の頭の形をしていた。

それがサキエルのサーベルを防いだのだ。

「これは!?」

「フフフ、驚いたかイ? ぼくの力がただ風を操るんじゃなイ。風の『蛇』を操るのが僕の力サ!」

メトシェラからいくつもの風の蛇が顔を出して、サキエルにかみつこうとする。

サキエルは危険を悟って後退する。

サキエルの服にはかすり傷ができていた。

サキエルの服も気息をマテリアライズしたものだ。

つまり、服も体の一部と言える。

この白い服は甲冑より、防御力が高い。

それを破ったということは、メトシェラの風の蛇は相当なものだ。

「エアスネイク!」

風の蛇がメトシェラから出てサキエルの襲い掛かる。

それも何体もだ。

サキエルはサーベルでそれらを斬り払う。

「フン! こちらの攻撃でも切れるらしいな。なら、こちらにも勝機がある!」

「へえ、すごいんだネ。ぼくの攻撃を防いだのかイ? だが、風の蛇はこんなものではないヨ!」

メトシェラから風のコブラが出て、サキエルに襲いかかる。

サキエルはコブラの牙をよけて回避した。

だが、まだ油断はできない。

大きなコブラはこちらを狙っている。

「リヒト・シュヴェーアト!」

サキエルが光の斬撃を出した。

大きなコブラはあっさりと切断される。

「フン! なめるな! この程度でやられる俺じゃ……なっ!?」

サキエルの胸にガイコツ型の蛇がかみついていた。

サキエルの服が血で赤くなる。

サキエルはビルから落ちていった。

「へえ……あれはわざとビルから落ちたネ。まあ、いいサ。これで満足するとしよウ」

メトシェラはビルの上から地上を見わたした。



「いろいろと手伝ってもらってわるいわね、ソフィアちゃん」

「いえ、これも私がしたいと思っていることですから」

テンマの家で、ソフィアがマリヤを手伝っていた。

ソフィアは今、テンマの家に『留学』したということに『なっている』。

ソフィアは活動の拠点をタナカ家からテンマの家にうつした。

この方がアルコンテスと戦うには合理的だったからだが、実のところソフィアはテンマの近くにいたがったからだ。

テンマからすれば、ソフィアの誘惑にさらされるということになるのだが……。

マリヤとソフィアは洗濯物を干していく。

「でも、こんなことをしていていいの、ソフィアちゃん? 学校の勉強もあるでしょう?」

「いいんです。勉強はテンマともできますし、それにこういったことも経験しないと、家事ができませんから」

「ソフィアちゃんはえらいなあ。テンマなんてそんなことしてくれたことないのだけれど」

「安心してください。テンマは私が支えますから」

「それじゃあ、今日のお昼もいっしょに作る?」

「そうですね。私も料理のレパートリーを増やしたいですし、何を作りましょう?」

「うーん、カレーにしようと思っているの。ほら、テンマってたくさん食べるじゃない? やっぱり量がないとあの年頃の男の子はおなかがすくと思うのよ」

「わかりました」

テンマはそんな様子を中から眺めていた。

ソフィアはマリヤとはすぐに仲良くなった。

もともと性格的に相性が良かったのだろう。

テンマはひそかに心配していたが無用だったようだ。

「テンマ、少し話があるんだけど?」

ソフィアが声をかけてくる。

「何だ?」

「こんど、いっしょに海に行かない?」

「海?」

「そう、私も水着を着てみたいし、買い物に行きましょうよ」

「確かにここ数年海には行ってなかったな。いいだろう。付き合おう」

「やった! じゃあ、期待していてね。テンマは何色が好き?」

「色か? そうだな。俺は青が好きだ」

「青ね……それは参考にさせてもらうわ。そうだ、いっそのこと泊りで海に行くってのはどう?」

「それをマリヤが許すと持っているのか?」

テンマは反論した。

マリヤは倫理には少しうるさい。

高校生が泊りで海に行くなど許すはずがない。

「うーん、残念! 私の魅力をもっと知ってもらいたかったのに!」

「いいか、俺たちは一応、この世界では高校生なんだ。それから逸脱することは慎めよ?」

「テンマってお堅いのね。まあ、そんなところも私は好きだけど」

「……」

テンマは好きと言われてドキッとした。

ソフィアは好意をシンプルに向けてくる。

それはうれしくもあったが、時にテンマは動揺させられるのであった。

こうしていっしょに買い物に行くことが決まった。

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