イイワケ
問うても貴方は答えない。廻る迷路の腐肉の上で、積み木遊びに夢中だから。
妾の声に貴方を貫く力は存在しないから、少しだけ寂しいの。
だからもう少しだけ白い糸を濁った空にひたしておこう。
もしかしたら、紅く綺麗に貴方と妾を繋いでくれるかも。
醜い希望は、酷く絶望と似ているけれど、目を瞑れば視えないから気にしない。
「大丈夫?」と言われたら、「大丈夫」と還そう。
希薄な言葉に縋る妾を無様と嗤う影法師は、明後日、沈めてしまおう。
罪と罰とを間違える、逢魔ヶ時に、出会った兎の名前は何だっけ。
「随分と壊れてきましたね。重畳で御座います」
有り難う。死んでしまえ。
喪う事が怖いのに、その首を絞めてしまう親指の力は不安定。
愛してる、とその形良い唇が紡いでくれるなら、一片の涙をあげよう。
後悔と慟哭は、サァビスでつけといてあげよう。優しい妾。
嘘なんて野暮なモノで、モノクロ世界を塗り潰せると、本気で貴方は信じていたの?
「諦めるのですか。諦めるのですか。素晴らしい事で御座います」
お前も道連れだ、畜生め。
本当よ。現実よ。この眼球に映る貴方を哀して穢して愛していたの。
だけど妾は、泣き虫やさんだから、いい加減弱音を吐いてもいいよね?
日々は崩れた万華鏡のように儚かったけれど、それでもう十分です。
「さようなら」
大好きを孕んだ殺意のキスを、白い貴方の首筋に捧げましょう。
これで、ずっと一緒だわ。
でもそれは、敗けたもののただの言いわけ。