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第97話 次なる展開に向けて

「よし……ラーナの資料のアストラルデータから神前のアストラルパターンを抜き取れば……出た!」


 豊川署の狭い部屋。かなめの叫びにカウラとアメリアが一気にかなめの端末に顔を寄せた。


「狭い!」


 かなめが元用具入れであるこの部屋の天井を見上げて叫んだ。


「文句ばかり言うな!貴様は文句を言うのと銃を撃つことしか能が無いんだな」


 いつものようにカウラのツッコミが入った。


「そうよ、狭いのは部屋だけで十分……間違いないわね」


 表示されたアストラルパターン解析の結果がそこに現れた。そこには明らかに強力な法術師の存在があったことを示すアストラル波動の揺らぎが見て取れた。


「神前の登場で揺らぎが増幅されて浮き上がったわけだ。まったく持って神前のおかげだな」 


 かなめが快活な笑顔で突っ立っている誠を見上げる。誠はそのタレ目を見ながら面映い気持ちで頭を掻いた。


「神前曹長のパターンは独特っすからね。まだ仮説なんすけど他者の能力をコントロールするということは強い法術反応があれば、かすかな残留波動でも増幅されるんじゃ無いかと思うんすけど……当たりました!」 


 ラーナは端末の画面を指差してニヤリと笑う。その表情に誠も安堵の息をついた。


「この資料の意味するところは、あの場所に間違いなく法術師、しかも特殊な能力を持った人物が事件発生時刻前後に確実にいたと言うわけだ……」 


 カウラはそう言って特殊な波動が映されている画面に見入った。


「近くの防犯カメラの映像。これを証拠に開示を頼むことはできないの?」 


 かなめもアメリアもすっかり乗り気でラーナを見つめた。


「任意になるんでしょうが……事件が事件すからね。自治会とかには私が手を回しておくっす。まあアタシ達でなく所轄の仕事になると思うんすけど」 


 ラーナは安堵の表情を浮かべながら力なくうなずいた。自信を持って誠達の質問に答えているように見えた彼女もこのようなケースの対応は初めてなのだろう。何処と無くそのやわらかそうな頬が紅潮している。


「所轄任せになるのはしかたねえな。それにアタシが知っているだけでも引ったくりの発生で有名な場所だ。何台有るか分からんが、監視カメラはそれなりの数があると思うぞ。それとアタシ等が歩き回って見つけた要注意人物と照らし合わせればかなりの確立で容疑者を絞り込めるんじゃないかな」


 かなめもラーナにあわせて椅子の背もたれに体を任せてだらしなく伸びをしていた。


 だがカウラはすぐに冷静さを取り戻したように難しい表情を浮かべていた。 


「希望的観測だな。すべてが上手く行くとは限らないのは不動産や巡りで分かったことじゃないのか?」


 そんなカウラの言葉に一番に反応してにらみ付けたのは意外にもラーナだった。だが彼女も捜査官である。カウラの言葉に一理あることは十分承知していた。


「う……るせえよ。何か?文句でもあるのか?」 


 かなめの声は怒りに震えていた。だがカウラの表情は変わらない。


「確かにカウラちゃんの言うとおりかもね。希望的観測。最初だって不動産屋をまわればすぐに犯人に行き着くって思って失敗したじゃないの」 


 アメリアもまた結果に満足が行っていないようだった。


「確かに」 


 アメリアに駄目を押されて落ち込んだようにかなめは頭を垂れた。でもそれは本気でしょげているというよりもふざけているように誠には見えた。事実そんなかなめを見るカウラの表情は真剣だが暗いものではない。そんな上司達を見ながら誠もこれまでの手探りで何もできないと思っていた自分達の手に入れたものがそれなりの手柄かも知れないとわくわくする気持ちを抑え切れなかった。


 その時不意にドアを開くものがいた。



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