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第96話 始まった役所の法術対策

「繁華街でのアストラルゲージ設置の話は知ってますか?」


 ラーナの腫れ物に触れるような態度が気に食わないのか、かなめはざわざわ騒ぐ野次馬達に威嚇するような視線を何度か送ったりしながら立ち尽くしていた。


「西園寺!」 


 カウラが急かすとようやくかなめが俯きながら言葉をつむいだ。 


「知ってるよ。法術の違法使用を防ぐ目的であっという間に広がったからな。元々民間企業にまで法術の噂が広がってたとか言ってマスコミが大騒ぎしたあれだろ?まあ法術の存在は企業も知ってる公然の秘密だったからな。知らなかった……いや、知らないふりをしていたのはマスコミだけ。何も知らない庶民たちには寝耳に水なんだろ」 


 かなめは人の目が無いのをいいことにここでタバコを吸い始めた。


「そのあれっす」 


 そう言うとラーナは街灯を指差す。LEDの電灯の下に小さな見慣れない箱が誠にも見えた。


「この反応のデータを転送するならわざわざこんなところに来なくても……」 


 タバコの煙を吐きながらかなめは余裕のある態度でそうラーナに言った。


「西園寺大尉。捜査の基本は現場を見ることっすよ。これは覚えといてくださいよ。やっぱ全般的に……」 


 ラーナの説教が長くなりそうな気配を感じてかなめは首を振りつつタバコをふかした。


「分かったよ!つまりアタシ等にここを見せたかったんだろ?雨がきついんだから帰るぞ」 


 そう言うとまだ不満そうにかなめは立ち入り禁止のロープをくぐる。野次馬達もその剣幕に押されて遠慮がちに彼女のための道を作った。アメリアも同じく納得できないと言う表情でそのままかなめについていった。


 集まる群衆にパニックが始まるのを予防するべく、警防を振って通行人を隣の中央口に誘導する警察官の姿が見える。誠は周りを見ると自分達が何とか雑踏から脱出できたことを確認した。


 雨は強くなった。すでに三人とも胸の辺りまで冷たい水が染み込んできていた。


「もしかして僕が来るのが重要だったんじゃないですか?」 


 そのまま急ぎ足で駅前ターミナルに並んでいる警察車両を見回しているカウラの後ろで誠が呟いた。肩の水滴を払っていたラーナは驚いたような表情で彼を見上げていた。


「法術使用の場合、アストラル系の変動の残滓が残るらしいからな。神前ならそれを見分けられると踏んだのか。見たところ無駄だったようだが」


 自分の車を見つけたカウラはそれだけ言うとそのまま車に向けて走り出した。誠とラーナも遅れまいとその後に続いた。


 カウラの車にはそれを不審がる警官が一人張り付いていた。旧車の見慣れないスポーツカーに誠達、東都警察の制服を着た人間が乗り込むのを見ると、彼は合点が行ったというようにそのまま路線バスの通行の妨げになっているテレビ局のマイクロバスの運転席めがけて走り始めた。


 低い車高の車に誠達は体を押し込んだ。しばらくホッとして濡れた上着をどうするかというように顔を見合わせた後、ラーナはシートベルトに手を伸ばした。


「鋭いっすね。今回は一人の人間が重傷を負う事態になっちゃいましたから。これまでより大きな精神波動があったって予想したんすよ。で、もしかしたら波動の残滓が残ってんじゃないかと思って……最低でも能力発動を引き起こした人物の思考特性の特定くらいはできるかなあと思ったんす……」 


 ラーナはそう言うとこの中ではそう言うことには一番あてになりそうな誠を見つめた。


「なら無駄にならないように神前の感想を聞こうか」


 エンジンをかけたカウラが誠を振り向く。 


「特に……すいません。役に立たなくて」 


 体を折り曲げながら狭い後部座席で呟く誠の言葉。ラーナは少しばかり残念そうにうなずくとそのまま正面に点滅するパトカーのテールランプに目をやった。


「気にすることは無いっすよ。これまでは人的被害が無かったと言うことは元々犯人はそう言うことを望んでいる人間では無いらしいって思ってたんすが……そうでも無いみたいっすね。これが分かったことでさらに犯人像が出来上がってきったっす」 


 自分に言い聞かせるように呟くラーナを思いやるような視線で見つめたカウラ。車はそのままロータリーを出て豊川署への道を走り始めた。



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