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第94話 待ってくれない事件

「これも仕事ですから。それにこれで15件ほどにターゲットは絞れて来ましたね」 


 ラーナは淡々と会話の要点をまとめて歩きながら端末に入力していった。


「でもまだ全体の50パーセントくらいしかまわっていませんよ」 


 誠の言葉に納得したようにラーナうなずいた。そしてカウラが駐車場から車を出そうとした瞬間に緊急用の端末が起動して事件の発生を告げた。


『豊川駅東口で傷害事件発生!各員現場に急行せよ!繰り返す……』 


 非情召集のアナウンスに一同の顔に緊張が走った。


「どうしますか……あの杉田とか言う刑事には現場に行くなと止められてますよね?」 


 誠の顔を見るとすぐにラーナは自分の端末を起動させる。すぐに近くの防犯用のカメラの映像が捉えられた。


 そこには右肩を握り締めて転げまわる男性の姿が映っていた。よく見るとその隣にはちぎれたばかりの腕が転がっている。


「こんな手口は……」


 これまでとは違う明らかに殺意を帯びた光景に誠の顔は曇った。


「空間を切断しての殺傷事件。ついに起きましたね」


 モニターの中、うめく男。その暴れまわるタイルの敷き詰められた地面に真っ赤な血が広がり始めた。


「決まりだな。行くぞ。杉田とか言うあの食えない刑事の言うことにすべて従う必要はない」 


 答えを待たずにカウラは車を発進させた。ラーナも淡々とダッシュボードからパトランプを出して窓を開いて屋根につけた。


「間違いなく法術関係なんですか?」


 誠の水を差すような言葉。恐らくこの場にかなめがいたら殴りつけられていたことだろう。 


「ともかく起きたばかりの傷害事件っすから調査はすべてに優先するっす。しかもモニターを見る限りあれだけきれいに腕を切り落とすのは素人にはちょっと無理っすよ……。ただ干渉空間を展開できる法術師なら可能っす。そう考えれば今回の事件との関係性も考えられるんすよ」 


 ラーナの説明に静かにうなずくとカウラはクラッチを踏んだ。


「そういう事だ」 


 ラーナもカウラも乗り気で車を目的の駅前に向けて走り出させていた。


『おい、そっちも現場に向かうのか?』 


 画面が開いてかなめの活気に満ちた表情が目に飛び込んできた。


「こういう時は生き生きしているんだな」 


 かなめのやる気のある顔を一瞥してカウラは呆れたようにそう言った。


『余計なお世話だ。あの杉田のじいさんの鼻を明かせると思うとすっきりするもんだ』 


 かなめの言葉にこちらも妙に生き生きしているカウラは車を緊急速度で走らせて行った。


「事件が起きてくれるのを待つなんて……」 


 誠は自分達のふがいなさを恥じた。


「感心できないっすね。でも起きてちゃったことは取り消せねえっすからね」 


 自分に言い聞かせるようにつぶやくラーナ。誠もそんな言葉に大きくうなずいた。



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