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第9話 あまりに射撃が下手な警察官

「本当に狙いを定めるのが苦手だな、お前は!貸してみろ!こうやるんだ!」 


 かなめはそう言って誠からホースを奪い取ると火の中心に的確に放水をした。ポンプの設定が済んだカウラも顔中墨に塗られた状態で力が抜けて倒れそうになる誠を何とか支えた。


「大丈夫か?さっきはお前にも何かあったんだな」 


 カウラの言葉に力なく誠はうなずいた。


「パイロキネシストの力の発動を感じました。ただ……あまりに突然だったので本人の意志で発動したのか……法術暴走なのかまでは分かりません」


 誠は戸惑った表情のままカウラにそう答えた。 


「そうかわかった。それ以上の事は考えるな。貴様にまで法術暴走が起こられたら私も辛い」 


 目の前ではほとんど鎮火してきたお堂に水を撒くかなめの姿があった。そして避難の誘導の為警官隊を指揮していたアメリアも誠達の所に戻ってきていた。


「ああ、これ結構高かったのよね……これじゃあまたかなめちゃんに買ってもらわなきゃね」 


 そう言うとちぎった袖をひらひら振りながら必死に高圧の水圧のホースにしがみついているかなめに見せびらかした。かなめはちらりとアメリアを一瞥したが、任務に忠実に無視して放水を続けていた。


 かなめの放水は的確だった。確実に火の勢いは弱まっていくのがわかった。そしてほぼ鎮火したんじゃないかと誠の素人判断で思えるくらいになったときに、ようやく防火服を着た消防団の面々がかなめと交代することになり誠達は消火作業から解放された。


 しかしそれからは誠達の本業である遼州同盟司法局特別機動部隊の仕事の領分となった。焼けた振袖のままのかなめを先頭に誠達は本宮の裏手に並んでいる警察車両の中の指揮車と思われる車へと足を向けた。先にこちらで被疑者の拘束を担当していたアメリアが疲れた表情で誠達を迎えた。


「容疑者は特定できたのか?」 


 警察車両と警察官を目にするとカウラはそう言って周りを見渡した。


「一応近辺にいた人達はすでに車両で移動して警備本部でお待ちいただいているわよ。パイロキネシスなんて珍しい能力だものすぐに犯人は特定できるわね……それにしても馬鹿な犯人ね。こんなに人がいるところで発動させて誰にも気づかれないとでも思ったのかしら」 


 アメリアはそう言うと発火事件のあった場所の状況をシミュレートしている画面を眺めている女性警察官の方に目を向けてため息をついた。


「どうした?アメリア。なんか珍しいもんでもあったのか?」 


 かなめは一仕事終えた感慨から笑顔でアメリアにそう尋ねた。


「これ……穴が開いちゃってる……かなめちゃんにまた買ってもらわなきゃ」 


 かなめの問いにアメリアは火の粉で穴だらけになった青い振袖の袖を翻して見せた。


「緊急避難的処置だからな。あとで弁償してやるよ」 


 ため息交じりのかなめの一言。アメリアはいかにもやって見せたと言うような表情で誠に笑顔を向けた。


「まあ……けが人も無かったわけだからな。あとは所轄の警察の資料が上がってくるのを待とうか」 


 そう言うとカウラはそのまま指揮車の入り口に手をかけた。



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