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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第十六章 立場が変わったと言っても
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第82話 悪だくみに加わりたい人

「何か作戦会議でもしてたんでしょ?続けてくださいよ……何かいいアイデアとかあったら教えますから。俺は馬鹿ですけど悪知恵だけは働く質なんで……なんか狡いことを考えていたんでしょ?」 


 島田は自分が原因だと分かっているくせにニヤニヤ笑いながら誠達を面白そうに眺めていた。


「続けろったって……よう」 


 かなめはそう言うと再び酒の入ったグラスに手を伸ばす。島田はそれを奪い取った。むっとした表情のかなめだが、すぐに彼女はいつもどおりつまらなそうに視線をそらすとそのまま立ち上がろうとする。


「酒に逃げるのは辞めた方がいいですよ。限界なんでしょ?通常の捜査なら……」 


 島田はどうやらアメリアの出向が上手く行かないだろうことをヤンキーの野生の勘で理解していたらしい。そして、その時こそ自分の出番だとひたすら待ち続けていたという顔をしていた。


「令状無しじゃ何にもできねえんだよ!犯人は確実に東都都心からこっちに移って来た!しかもこの一月の間でだ!そこまでわかっていながら……」 


 そこまで言うと悔しそうにどっかりと腰を下ろすかなめ。同じようにカウラとパーラがうなずきながら唇を噛み締めていた。


「俺は難しいことは分からねえですから。でも奴はこの豊川に居る。そして警察は奴を特定できていない。だったら西園寺さん達でとっ捕まえてやれば良いじゃないですか」 


 あっさりと島田はそう言う。彼の部下の技術部の士官達なら警察上層部に知られずに楽に不動産取引のネットワークに侵入して情報を得ることができることは知っていた。だが犯人を闇に葬ることが目的の非正規作戦任務ならともかく警察官の身分の誠達にはどれも無理な話だった。


「それに今回は足を使うしかねえですかね……隊長は『放っておけ』って話ですし」 


 島田は春子が運んで来たウーロン茶を飲みながらそう答えた。


「叔父貴が?アイツはサドだな」 


 かなめの言葉にサラが噴出す。かなめがにらみつけるが迫力不足のようで二人は相変わらず笑い続けていた。


「大変みたいね……私のおごり」 


 厨房から出ていた春子が鶏の刺身の盛り合わせを持って現れた。


「いいんですか?」


 誠の言葉に笑みを浮かべて春子がうなずいた。母親の甘さに小夏がいつものようにかなめをにらんだ。


「ええ、色々大変なんでしょ?でもいつでも新さんの力を借りてばかりじゃ駄目でしょうしね」 


 春子は年上の余裕で諭すような口調で誠達にそう言った。


「あー!頭にきた!」 


 そう言いながらかなめは立ち上がると厨房に飛び込んだ。


「大丈夫かな……かなめちゃん」 


 アメリアの心配そうな声だが厨房ではまったく音がしなかった。


 誠達が黙っていると無表情のかなめが手に取り皿を持って現れる。そしてそのまま一同に配り始めた。必死に怒りを押し殺している。そのかなめの奇行を見ながら誠にはそんな彼女の思いが痛いほど分かった。


「そうカリカリしなくてもいいじゃないですか」 


 島田はそう言うとにんまり笑う。その表情にあわせるように小夏が笑みを浮かべた。


「なんで笑ってるんだよ。人が困ってるのに笑うなんて人格を疑われるぞ」 


 そう言いながらかなめは刺身に一番に手をつけた。うまそうに頬張りまた酒を口に流し込む。


「捜査の基本は……餅は餅屋だ。真摯にお巡りさん達に教わればいいでしょ?豊川署の連中が信用なら無いなら茜警部からラーナ巡査でも借りれば良いじゃないですか。あの人は法術関係の捜査のプロですし、警察の事情にも精通してますから」 


 島田の一言はまるで天啓のように一同を驚かせた。



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