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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第十三章 寮から始まるいつもの一日
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第68話 世話焼きな上司

「まったくなんであの餓鬼だけ寮に通ってくるんだ?寮生全員を『漢』にする?そんなの無理だって。なんなら手っ取り早く金さえもらえばアタシが女を教えてやって『漢』にしてやろうか?」


 かなめはそう言うといやらしい笑みを浮かべて誠を見つめた。


「かなめちゃんの男日照りの犠牲者を出してどうするのよ。ただ男が欲しいだけなんでしょ?それだったらかえでちゃんの屋敷に行ってかえでちゃんに男役をやってもらえばいいじゃないの」 


 アメリアの茶々を完全に無視するかなめの機嫌はあまりよくなかった。そしてこうしてつい三日ほど前までは倉庫だっただろう豊川警察署の北側の狭い与えられた部屋を見回すと余計今朝のランの言葉が気になるようで伸びをしながらそうかなめがつぶやいていた。


「あの人は世話焼きだからねえ……」 


 アメリアは半分諦めた調子で世話焼きを通り越したランのお節介に呆れていた。


「世話を焼くにも限度と言うものがあるだろ?西園寺の言うようにあのだらけた連中を『漢』にするにはあと百年はかかるぞ。クバルカ中佐は生きているだろうが、寮生は島田以外は全員老衰で死んでいる」 


 口を挟んだカウラをかなめはにやけたたれ目で見つめた。


「おい、珍しいなあアタシと同意見とは。あれか?それは建前でなにかすごい深い理由が別にあるのか?オメエには」


 そこで初めて笑顔を見せたかなめがバックミラーに映るカウラの目を覗き込んだ。


「深い理由?」


 しばらく無表情で黙っていたカウラが急に頬を染めて目をそらすと自分の端末を起動した。


「やっぱり下心か……むっつりスケベは手に負えないねえ。かえでみたいに堂々としたエロの方がまだ手に負える」


 かなめはいつもかえでのセクハラにうんざりしていると言う割にそんなことを口にした。


「どっちもどっちじゃないの。それにかえでちゃんのはエロじゃなくて変態行為よ。付き合ってるかなめちゃんもどうかしてるわよ」


 アメリアは呆れたようにそう言ってため息をついた。 


「なんだ?アメリア!言いたいことがあるならはっきり言えよ!」


 かなめの声が急に怒声に変わった。それを見てカウラはなぜかホッとしたように吐息を漏らすと起動した端末に目を向けてキーボードをたたき始めた。


 誠はこれ以上の騒ぎはたくさんだと先ほどのランの話題に話を持っていこうと口を開いた。


「クバルカ中佐はどこに住んでるんです?」


 そんな誠の問いに三人は黙り込んだ。 


 かなめは怒るのも馬鹿馬鹿しいとそのまま椅子に腰を下ろす。それを見ながら自分の机に腰掛けたままのアメリアが指を頬に当てて少し考えていた。


「ノーコメント」 


 かなめは明らかに興味無さそうにそう答えた。


「ここから近いわよ……歩いていけるくらい……まあ誠ちゃんは言ったらビビっちゃって口もきけなくなるような場所だけど。カタギの人はあんなちっちゃな子に部屋を貸すなんてしないからあそこくらいしか住む場所が無いのよ」 


 アメリアの言葉に一言突っ込むとカウラは再び目の前の画面に向かう。しばらくカウラのキーボードを叩く音ばかりであたりを沈黙が支配した。



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