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第64話 案内されたのは悪意に満ちた座敷牢

 左側に並ぶ部屋はそれぞれ捜査関係の部署らしく私服、制服の署員がひっきりなしに出入りを繰り返していた。男はその部屋をまるでそんなものが存在しないと言うようにまん前を向いたまま歩き続けた。


 なかなかたどり着かなかったが、エレベータルームを通り過ぎて人気がなくなると男の足取りは急に遅くなった。いくつかの閉まったままの扉。そのどれを開くか迷っているように何度か身を翻した後、その中の真ん中の一番地味な扉を男は開いた。


「おう、来たか」 


 すでに東都警察の制服に着替えていたかなめが目に飛び込んできた。黙っていれば制服が似合う彼女らしく襟に警部補の階級章を光らせていた。


「そういえば大丈夫?神前……一応巡査部長扱いでよかったんだな」 


 カウラから誠に巡査部長の階級章が手渡された。


「それにしても……私は似合う?」


 カウラとかなめが警部補の階級章をつけているのに対し、アメリアのそれは警部のものだった。


「おい、あの署長のとっちゃん坊やの野郎め計りやがったな。それと何でこいつが警部なんだ?佐官がそんなに偉いのか?くそったれが!」 


 誠をつれてきた男にかなめは喧嘩腰で食って掛かる。誠は止めようと手を伸ばす体勢で話を聞いていた。


「いやあ、僕は事務方だからねえ……そこら辺の事情は全て署長の権限になっていますので」 


 男性事務官はかなめの喧嘩腰の態度に引きながらそう答えた。


「事務屋だと現場のことがわからねえって言う気か?うちでさえ管理部門の大将はアタシ等の行動も把握済みだぞ。なんだか千要警察も落ちたもんだなあ。事務屋は事務仕事しか出来ねえのか……まったく使えねえ」


 かなめは不満たらたらでそう言って男性事務官をにらみつけた。 


「黙れ、西園寺!悪い立場をこれ以上悪くして何の得がある!」 


 カウラが思い切りテーブルを叩いた。


「一応、これでも仲がいいんですよ……ねえ?」 


 さすがにかなめの暴走が予想を超えていたのでフォローを入れるアメリアだが、にらみ合うかなめとカウラを珍しそうに眺める男の目に浮かんだ軽蔑のまなざしが見えた。こう言うことに敏感なかなめは怒りのようなものを覚えているらしいことは誠にも分かった。


「まあ……とりあえずこちらの部屋を使用してください。それと連絡は杉田と申す古株のものが担当しますので」 


 それだけ言うと男は出て行った。いつもの面々だけになると誠達は部屋の様子を思い思いに見回した。


「用具室か。結構片付いているんだな。うちの部隊とは大違いだ。まあ一番片付いてねえのは叔父貴の隊長室なんだがね」


 かなめはそう言うと苦笑いを浮かべた。 


「でも本来人のいるとことじゃないんじゃないの?ここ。この扱い……ちょっとひどいわよ。そんなに手柄を取られるのが嫌なのかしら」 


 アメリアは不満たらたらで染みだらけの部屋の壁を見回した。確かに何もなかった。端のほうに書類のダンボールが山積みにされ、とってつけたようにいつのころの時代のものかと聞きたくなる端末が置かれた机と椅子が四つ並んでいた。



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