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第50話 悪い酒の飲み方

「あのー。そんな強い酒割らずに飲んだら胃が焼けますよ」 


 さすがに黙っていられなくなった誠がつぶやいた。しかしすぐに誠は自分の間違いに気づいた。だがすでに茜は満面の笑みを浮かべて茜が振り向いていた。かなめを生贄にしてカウラとアメリアはまるで通夜のように静かに息を殺していた自分の苦労が泡と消えたことに気づいた誠の頬のほろ酔いの気分が瞬時に醒めていくのを感じた。


「だってせっかく蒸留して濃くなったアルコールですのよ。そのまま飲まないともったいないと思いませんの?それともかえでさんの喘ぐ姿を想像して興奮してらっしゃるのかしら?今から電話して呼び出したら渡辺大尉の運転ですぐに駆け付けてくださるわよ……かえでさんはそれほど誠君を愛してるもの」 


 言っていることがだんだん支離滅裂になってきているが表情はまるでしらふの時と変化が無い。誠は(うわ)(ばみ)と化した茜にじっと見つめられながら三人に目をやった。当然カウラ達は関わってたまるかと言うように目を伏せた。


「あ……そうですよね……もったいないですよね。折角蒸留してアルコール度を上げたんですから。それとかえでさんに拉致されると何をされるか分からないのでそれは止めておいてください」 


 誠はまさに蛇に睨まれた蛙だった。


 茜はそんな腫れ物に触れるような誠の態度が気に入らないと言うように自分の目の前の皿に目を向ける。すでにつまむ物は食べつくして何もなくなった皿の上の箸をかんかんと鳴らして見せた。


 もう限界だった。そんな時の度胸はアメリアが一番なのは誠も知っていた。


「茜さん……もうすぐ看板だと思いますから……」 


 いつもはそのポリシーである『面白ければ全てOK』と言う行動様式のアメリアもこれ以上茜の絡み酒に付き合うのは限界だった。


「良いのよクラウゼさん。これでかなめさんがまたボトルを入れてくれればうちも助かるもの」 


 そう言って気を利かせて女将の家村春子がビールを運んできた。誠はまだ二杯目。アメリアとカウラは相変わらず烏龍茶を飲み続けていた。


「なんですの?皆さん黙り込んじゃって。今日はわたくしのおごりにしますからどんどん頼んでいただいて結構ですのよ」


 酒の酔いで気の大きくなった茜はいつもの父親の無駄遣いを責め立てる姿はどこへやら、すっかり酒で散財する気満々になっていた。 


「じゃあアタシの入れるボトルもか?」 


 かなめの一言に茜はキッと目を向ける。


「すいません、警部……アタシの酒はアタシで払いまーす」 


 かなめも年下の従妹の青い鋭い目つきに負けて遠慮がちにそう言った。


「ラムは高いから駄目ですけど、ボトルを入れるくらいはいいんですのよ。焼酎なら入れてあげる」 


 酒で上機嫌の茜はそう言ってかなめを見つめた。


「アタシは焼酎は飲まないんだけどなあ」 


 酔っぱらうところころ表情を変える茜が急に機嫌が良くなった。多少はアルコールが回っているらしい。誠達はやっと一息ついた。誠はビールを飲みながら先ほどの茜の絡み酒の間に冷えてしまったトリモツに手を伸ばそうとした時だった。


 茜の通信端末が呼び出しの音楽を奏でた。



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