第5話 ついに実現した『魔法学校』
「『東福岡魔法学院』……?『魔法』?物語の中だけでなく実際に有るんだな、魔法と言うものは地球では」
カウラはぼんやりとしながら繰り返した。アメリアはついに口を押さえて大爆笑を始めた。
「アメリカさんはアタシ等遼州圏の人間が『法術』と呼んでいるものを『マジック』と呼んでるからな。和訳したら『魔法』だろ?連中からしたら遼州人はみんな魔法使いだ。きっと遼州人は箒に乗って移動しているに違いないと連中は思ってるぜ」
かなめは相変わらずニヤニヤ笑いながら誠に向けてそう言ってきた。
「ああ、そうですね。確かにアメリカでは法術を『マジック』と呼称してますから。ただの言葉の遊びですか。分かってしまうと意外とつまらないですね」
思わず腹を押さえて二つ折りになっているアメリアに周りの視線が痛いほど突き刺さるのを見ながら誠はそうつぶやいた。
「……可笑しい!じゃあここの学校の生徒はみんなマントに杖を持っているわけね!ファンタジー!誠ちゃんも入学したら?もうそろそろ男は魔法使いに慣れる年齢でしょ?」
アメリアは24歳にしてキスさえしたことが無い誠に向けてそう言ってからかった。
「ばかばかしい。そんな都市伝説は地球だけのものだ。それをあてはめたらこの東和では男の70%が魔法使いと言うことになる」
上機嫌のアメリアの言葉をカウラはあっさり斬って捨てた。それでもアメリアの笑いは収まらなかった。そんな中、急にかなめが真剣な表情で誠にそのタレ目を向けて来た。
「神前はあと最低一年は必要だな、ここに入学するには」
かなめは急に真面目な表情になってそう言った。
「え?そう言う条項があるんですか?学校としてはかなり高年齢の人しか入れない学校なんですね」
誠はかなめの言っていることの意味が分からずそう聞き返した。
「だってお前童貞だろ?今は24歳だから……25になるまであと一年。がんばれよ、菰田に負けるな!アイツは魔法使いになるのは30からだと言い出してるが、それはアイツが26だからだ。もうすでにアイツも魔法が使えるかもな……ああ、使えたわ。アイツ魔法使える。キモイとかキタナイとかケチとか言う種類の魔法」
誠は怒り狂う誠を敵視してやまない管理部の主計曹長の菰田邦弘の四角い顔を思い出した。かなめの得意げな顔に誠は頭を掻きながら視線を画面に移した。その様子がおかしかったらしく今にも半分に折れそうな様子でアメリアは爆笑を続けていた。誠はかなめの言葉にとりあえず愛想笑いを浮かべながら時間が過ぎることだけを待っていた。