第48話 やる気の感じられない警察
「アメリアさんの言うことも分かるんですけど、一つ大事なことをお忘れでは無いですか。東都警察がこの種の事件に興味を持っていればって限定が入りますわよねそのような大規模操作を東都警察が行うのは?このような軽犯罪、東都警察のお忙しい皆さんは関わりたく無いのが本音ではないかしら」
茜は静かな口調でそう言った。そして自分達が遼州同盟の司法捜査官であり東都警察の捜査官と違うと言う現実に目が行った。
「確かに東和警察は解決を急ぐつもりは無いようっすね。どれも他愛の無い悪戯程度で済んでいますから……でも得てしてこういう愉快犯はいつか暴走して……」
法術関連の捜査官の勘がラーナに最悪の事態を予想させているのが誠にも分かった。
「要は大事になる前に捕まえろってことか?面倒だなあ。どうせならその犯人がこっちに引っ越して来てくれるといいんだけど」
かなめはまるで絵空事を望んでいるかのような口調でそう言うと関心が無さそうな笑みを浮かべた。
「そんなに都合よく行くわけ無いだろ?貴様のご都合主義にも困ったものだ」
かなめの言葉にカウラがツッコんだ。そのいつもどおりの情景に誠はいつの間にか癒されるようになっていた。
「でもあれだぜ。あの正月の事件以来同種の事件は発生していねえからな。もしかすると引っ越し準備でもしてるんじゃねえの?行き先が豊川じゃないと良いな。そうすればうちとは関係ねえ」
周りを見渡してかなめは無責任にそう言うとにんまりと笑った。だが全員が大きなため息をついて白い目で彼女を見つめた。
「西園寺さん。もしかして犯人は現在引っ越し準備中で豊川近くに部屋でも借りに来ているとでも言うつもりですか?」
それまで沈黙を黙っていた島田がそう言った。隣では彼に同調するように赤い髪のサラが大きくうなずいている。
「でもあれだぞ!今の時期は年度末を控えていろいろ引越しとか……」
かなめはなんとか自分の意見を正当化しようと強情にそう言い張った。
「だとなんで豊川市に引っ越して来るんだ?東都首都圏は広いんだ。そんなに都合よく物事が運ぶわけがない」
カウラは呆れるを通り越して哀れみの目でかなめを見つめた。追い詰められたかなめは必死に出口を探して頭をひねった。そして手を打って元気良く叫んだ。
「そりゃあ法術を最初に展開して今みたいな状況を作ったアタシ等に復讐するため!」
かなめは決め付けるようにそう叫んだ。
「あのなあ、西園寺。その発想は島田レベルだぞ……まあいいや。第一小隊はこの件での嵯峨警部の補佐任務を主任務とすることにしよう。もし隊長の許可が出たら機動部隊としては隊長のクバルカ中佐に上申して第二小隊を詰めさせるから。それで勘弁してくれ」
第一小隊小隊長としてのカウラの言葉に茜はうなずくとテーブルを整理始めた。周りの面々もそれぞれに立ち上がり持ち場へと急ごうとした。
「何だよ!テメエ等!寄ってたかってアタシを馬鹿にしやがって!」
怒鳴るかなめの肩にそっとランが手を乗せた。
「よろしいんでは無いですの?要は犯人を捕まえれば分かることですわ」
これ以上無い正論を言われてさすがのかなめも参ったというように肩を落とした。誠もカウラもこれから先彼女と付き合って捜査を行うだろう今後を思いやりながらそれぞれに席を立った。