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第46話 デリカシーの無い姫君

「まあいいか。アン!かえでが探してたぞ!第二小隊でクバルカ中佐相手にシミュレータで模擬戦するそうだ。オメエのテリトリーのサーチ能力が必要なんだと。早くしろよ」 


 かなめはいかにも先輩風を吹かせてアンに向けて無遠慮にそう言った。


「ああ、すいません!今すぐ行きますので!」 


 着替えの終わったアンはかなめの言葉にはじかれるようにして飛び出していった。


「あのー西園寺さん」


 誠はデリカシーと言う文字が辞書にないかなめに向けて恥ずかしながらそう言った。 


「なんだ?」 


 訳が分からないと言う顔でかなめはそれに答える。


「パンツを履きたいんですけど」 


 シャワーのブースの中でじっとしている誠を見てかなめは急に顔を赤らめた。


「散々見せられてるから平気だよ。テメエのが立派なのはアタシも自慢なんだ。さっさと着替えろ」 


 かなめは誠の股間を見つめたままそう言い放った。


「ふーん。こうして一歩、誠ちゃんと仲良くするわけね。それで妹から『許婚』を奪う……『悪女』であるかなめちゃんの考えそうなことね」 


 突然の言葉に誠もかなめも驚いて入り口に視線を向けた。満足げな表情のアメリアが全裸の誠をまじまじと見ていた。


「アメリアさんまでそんな……」


 誠は予想外の闖入者に慌ててそう言った。 


「さっきかなめちゃんが言った通りじゃない。私も見慣れてるから平気よ。それに私もかえでちゃんから誠ちゃんを奪う気満々だから。かなめちゃんも覚悟しておくことね」 


 アメリアは得意げにその大きな胸を揺らしてかなめをにらみつけた。


「お二人とも!二人が平気でも僕が平気じゃないんです!」


 誠にとっては今は静かにパンツを履くことだけに集中したかった。 


「へ?いつもあんなに自慢してるじゃない。確かにうちの隊では一番大きいのは間違いないんだし良いんじゃないの?」 


 呆れたような顔に変わったアメリアの表情。明らかにそれが作ったような顔なのでかなめはその頭をはたいた。


「痛いじゃない!いつも気に入らないとすぐに暴力に訴える。マゾのかえでちゃんなら喜ぶでしょうけど残念ながら私はマゾじゃないの。ああ、かなめちゃんに行っても無駄よね。かなめちゃんはぶつのもぶたれるのも好きだから」 


 アメリアは嫌味の様にそう言って怒りの表情を浮かべるかなめを見下ろした。


「くだらねえこと言ってねえで仕事しろ!茜の奴に法術関係の捜査の資料を取って来いとか言われてたろ?」


 かなめは怒りに任せてそう叫んだ。 


「それはかなめちゃんも一緒じゃないの。このまま全裸の誠ちゃんを押し倒してかえでちゃんの先を越そうなんて言うかなめちゃんの魂胆はお見通しよ」


 勝ち誇ったようにアメリアはそう言い放った。 


「誰がするか!それに神前が『漢』になるまで恋人以上にはさせねえって言うランの姐御の言葉は本気だった。あの『人類最強』はアタシのお袋とガチでやれる戦場の鬼だ。あんなのの言うことに逆らえるかよ」 


 入り口でにらみ合う二人。誠は仕方なく飛び出してバッグから換えのパンツを取り出し無理に履いた。体を拭いていないので体に付いたお湯が冷えて水になってパンツにしみこむ。


「誠ちゃん風邪引くわよそんなことしていると」


 アメリアは完全に傍観者を気取ってそう言ってパンツ一丁の誠を笑う。 


「お二人が出て行けばこんなことはしなくて済んだんですよ!」


 ともかく二人に出て行ってもらいたいという気持ちが誠にそんな言葉を吐かせた。 


「もしかして私のせい?」 


 かなめと誠にアメリアはそれぞれ視線を向けた。二人がうなずくのを見ると次第にすごすごと入り口に向かうが、当然のようにかなめの袖を引いている。


「外で待ってるからとっとと着替えろ」 


 それだけ言うとかなめは入り口の引き戸を閉めて外に出て行った。


 一人きりになりようやく安心してズボンに足を通す誠。そのままワイシャツを着てボタンをつける。


「まだかー」 


 待つと言うことを知らないかなめの声が廊下に響いた。


「まだですよ」 


 待ちきれないかなめが外で叫ぶ。その隣であくびをしているアメリアの吐息が聞こえる。誠はワイシャツの腕のボタンをつけてさらにネクタイを慣れた手つきでしめると上着を羽織り、バッグを片手に扉を開いた。


「よし、行くぞ」 


 ようやく出てきた誠を一瞥するとかなめはそのまま歩き始めた。


「本当に気が短いんだから」


 アメリアは短気なかなめに呆れたようにそう言うと足取りを早めた。 


「何か言ったか?」 


 かなめは妙な緊張感を孕んだままアメリアをにらみつけた。


「べーつーに……」 


 振り返るかなめにとぼけてみせるアメリア。いつものように運行部の扉の前にある階段を上がり、医務室と男女の更衣室が並んでいる二階の廊下を歩いた。誰もいない廊下に足音が響き。誠達はそれを確認しながら会議室の扉の前に立った。



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