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第42話 『淑女協定』

「その『協定』って?何ですか?なんか決めたんですか?二人で僕抜きで」


 誠はかえでとアメリアと言う二大女性策士に振り回されているらしいことを察してそう言った。


「知らないんだ。誠ちゃんがかえでちゃんと結婚するでしょ?そうすると当然子供が出来る。かえでちゃんには5人の家臣が居るからその子達にも子供が出来る。お腹に子供がいる間は誠ちゃんはエッチなことが出来ない。その間は私が誠ちゃんを好きなように使って良いって言う『協定』。誠ちゃん的には性的欲求不満が一切たまらないわけだから良いことずくめじゃないの……まあ、その間に私も誠ちゃんの間に子供が出来るわけだからこんどはかえでちゃん達が子供を作る番。これを永遠に繰り返すのよ。私達『ラスト・バタリオン』は地球人の遺伝子を用いて作られてるから覚醒した法術師である誠ちゃんとエッチなことをするとその力を受け継ぐことが出来るかもしれない……私の『剣よ!』と叫んで光の剣を展開してみたいのよね!」


 アメリアはとんでもないことを口走ったので誠は開いた口がふさがらなかった。 


「それなんですか!妻公然の不倫ですか!嫌ですよそんなの!それに地球人の女性が覚醒した法術師の男性とセックスして法術師になったという話は実験室レベルの話でしょ?そんなのあてになりませんよ!」


思わず誠はそう叫んでいた。


「でもかえでちゃんと結婚すると『日野家臣団』を作るためにリンちゃんを筆頭とした家臣達を側室としてひたすら子作りに励むことになるのよ?それも不倫じゃないの?」


 そう言うアメリアの言うことももっともな事実だった。


かえでは再興した日野家に強力な家臣団を作ると日頃から言っていた。リンは『ラスト・バタリオン』で地球人の遺伝子を継いでいる。そしてかえでが甲武から連れてきた元女郎として体を売っていた没落士族の出身であるかえでの家の召使達も全員元地球人だった。


覚醒した法術師の能力は異星人との混血児にほぼ確実に受け継がれることになるのが科学的に証明されている以上、覚醒した法術師である誠の子供達はほぼ確実に法術に覚醒した子供となる。


 元地球人で構成された国家である甲武国で法術師の家臣を多数抱えることは当主であるかえでの地位を高めることになり、ひいてはかえでが持つ日野家と嵯峨家の家督を継いだ次期当主の甲武国内での発言権の強化につながる。


 かつては『斬弾正』と呼ばれ、今は『斬大納言』と呼ばれる切れ者のかえでらしい策に満ちた誠との結婚の先に待つ未来に誠のただひたすら不安しか感じなかった。


「そうするとアメリアさんと僕の間の子供も法術師になるわけですよね……アメリアさんもそれが狙いなんですか?」


 にこやかに笑うアメリアに誠はそう語りかけた。


「それはただのついでみたいなもの。愛する人との間の子供を産んでみたい。ただそれだけ。私が前の大戦の残党狩りでネオナチの連中に犯されて出来た望んでも居ない子供じゃなくて自分の意志で子供を産んでみたいの。まあ、その様子だとまだまだ先の話になりそうだけどね」 


 そう言うと誠から関心が無くなったというように振り向いて彼女の本来の職場である運行部の部屋の扉に手をかけた。


「まあ、私達の『協定』をあのかなめちゃんとカウラちゃんがそう簡単に認めるとは思えないけどね。ああ、そうだ。シャワー浴びてからでいいと思うんだけど……」 


 今度はうって変わった緊張したまなざしを誠に向けてくる。いつものこういう切り替えの早いアメリアには誠は振り回されてばかりだった。


「ええ……なんですか?」 


 そう言う誠が明らかに自分を恐れているように見えてアメリアは満面の笑みを浮かべた。


「茜のお嬢さんが今日はこっちに来てるのよ。何でも司法局本局からのお願いがあるみたいで」 


 アメリアはそう言うとそのまま階段下の運航部の詰め所に入っていった。


「嵯峨警部が?あの人もここと本局の往復で大変だよな……かえでさんとアメリアさんに振り回されてる僕が言えた義理じゃ無いけど」 


 誠は予想されたことがやってきたと言うように静かにうなずいた。


ここの豊川分室と司法局本局にある法術特捜本部を頻繁に往復する彼女の忙しさは誠も良く知っていた。司法局のビルには最新設備がある。データもすぐに同盟本部や各国の軍や警察のデータがかなり機密レベルの高いものまで閲覧できる権限を有しているのが売りだった。


 だがその筋の専門家の技術部の情報士官に言わせると『ハッキングして下さいといってるみたい』と言うメインフレームを使っていると言うことで、茜はあまりそのことを喜んでいないようだった。事実、こうして時々司法局実働部隊に顔を出しては彼等が設計したメインフレームを使用している司法局のメインコンピュータを利用して手持ちのデータのすり合わせなどの地味な作業を行うことも珍しくなかった。そしてその時に人手が足りないとなると一番暇と呼ばれている誠の第一小隊がその作業を担当させられることが多かった。


 そしてそんなデータの照合作業を断れない案件には今回ばかりは誠でさえ思い当たるところがある。


「面倒だなあ」 


 そう言いながら運行部の詰め所を抜け、シミュレータ室の前を通り過ぎて待機室の手前にある男子用シャワー室に誠はたどり着いた。



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