第37話 愛のビデオレター
「それしかいけないんですか?こんなに美しい僕の身体を前にして神前曹長にはもったいないと思うのですが……」
かえではランに向けてそう言うといとおし気な視線を誠に投げてきた。誠はこれまでにないかえでの純粋そうな瞳に引き付けられて目を逸らすことが出来なかった。
「神前が真の『漢』になればその程度の事では動じねー強い心が生まれる。邪心に心を乱されるのはまだ『漢』になっていない証拠だ!そんな奴には恋など千年はえー!」
らんはそう鋭く言い放った。
「それでは僕が毎週神前曹長に送っている『愛の動画』は……あれは許していただけるのですよね?僕のすべてを神前曹長に見ていただきたいこの欲望だけは僕にはどうすることもできないのです!」
かえでは誠が一番恥ずかしがるかえでが誠の夜のお供にしている自分の嬌態を撮った無修正動画を送る行為まで禁止されるのではとランに詰め寄った。
「オメーが露出狂の変態だってことは知ってる。その標的が神前だけにとどまっているからオメーが島田の様にアタシに警察署に出向いて身柄の引き受けなんていう面倒なことをさせて無いのは事実だ。だが、それは異常なことも事実だしなー……。そうだ、週一時間分だけ送るのは許可してやる。神前もそれで我慢しろ」
ランは自分が裁いた大岡裁きに満足するように笑みを浮かべてそう言った。
「えー!かえでちゃんだけそんな飛び道具をランちゃん公認で使えるわけ?狡いわよ!ねえ、かなめちゃん!カウラちゃん!」
アメリアは自分の同人エロゲの参考にする為とかえでの無修正動画の内容を見ているこの場に居る誠以外の唯一の人物だった。
「そーだ、狡いぞ。ランの姐御。アタシ等もその飛び道具を神前に送りつけるのはアリなんだな!じゃあアタシも自撮り画像を送るからな!神前!しっかりおかずにしろよ!」
かなめまでもがランに向けて責めるような口調でそう言い切った。
「そうよ!アタシも送る!アタシのはかえでちゃんほど過激な内容じゃないけど……夜のお供に……ね?」
そう言ってアメリアは誠に向けてウィンクをした。誠はあまりの出来事にただあんぐりと口を開けたまま呆然としていた。
「う……それはだな……しかたねー!アタシも女だ!一度吐いた言葉に二言はねー!認めてやる!神前!ちゃんと平等に見るように!」
アメリアとかなめに自分達まで無修正自我撮りエロ動画を誠に送りつける宣言をされてランは意表を突かれて誠に無茶苦茶な命令をした。
「私はそのような卑怯な真似は取らない。神前は私の初恋の男だ。正々堂々を戦って恋人の座を勝ち取る」
カウラまでもこのノリについて行ったことに誠は恐怖感すら感じていた。
「神前曹長……いや、これからは恋人候補として『誠君』と呼ばせてくれたまえ。僕のことは『かえで』で良い。双方の両親の許可がある時点で僕の勝利は見えているんだ。これからもよろしく頼むよ、誠君」
かえではそう言って誠の手をしっかりと握りしめた。
「日野少佐……いや、かえでさん。よろしくお願いします」
誠はかえでの圧に耐えかねてそう絞り出すようにそう言った。その様子を見て薄ら笑いを浮かべているリンの存在に二人は気づいていなかった。