第35話 ナルシストの性向
「それにしてもかえで……オメエちょっと図に乗ってねえか?べたべた神前に触りやがって……いくら『許婚』だからって限度ってもんがあんだろ?そんなに男が触りたきゃAV女優にでも転職しろ。向いてるぞ、かえで。オメエのカラダとテクとケツも使えるえぐいプレイが出来るってことならすぐにトップ女優の仲間入りだ」
機動部隊の詰め所に戻るとかなめはかえでの席まで言って平然と自分の金色に染めた髪を整えているかえでに因縁をつけた。
「そうかな……あれぐらいのボディタッチは僕にとっては当たり前の事なんだけど……もしかしてお姉さまもやって欲しかったのかな?嫉妬かな?それに僕が求める男性は神前曹長以外にはこの宇宙には存在しないんだ。これまで男とはセックスはしたことは有るが愛を感じたことは一度も無い。愛を感じた初めての男性……それが神前曹長なんだから」
股間に付けていたバイブを例の女子トイレで外して涼しい顔をしているかえでの余裕のある態度がかなめの怒りに火をつけることになった。怒りに真っ赤になって立ち尽くすかなめの隣に現れた本来この部屋の住人ではないアメリアがいつものアルカイックスマイルを捨てて怒りの表情でかえでをにらみつけていた。
「かなめちゃんの言う通りよ!『許婚』?そんなこと私達は認めない!誠ちゃんだって嫌がってるじゃないの。プレイガールを気取って来たのならそのくらいの相手を思いやる気持ちくらい持てないの?男が好きになれないなら甲武に居た時と同じように東都に行ってセレブの若妻を孕ませてまた女ばかりのハーレムでも作れば良いじゃないの」
誠は自分の第一小隊の机のある島で静かに戦う女たちの様子に耳をそばだてていた。
「クラウゼ中佐のアイディアも中々だが、僕としては今は神前曹長に夢中なんだ。確かに初めは僕のボディータッチを嫌がる女性もいずれ僕の魅力に気付くことになる。僕の美しさは完璧だからね。そしてベッドに入ってしまえば僕の勝ちだ。僕のテクニックと僕の乱れる様を見て心奪われなかった女性はいないよ。まあ男はただ興奮するだけで二度と会う気になることは無かったがね」
余裕のある笑みを浮かべながらかえではそう返した。
「日野少佐。そのような話は職場でする話ではないな。それに貴様のその自分の容姿に対する自信過剰なところ。私には同じ小隊長として許すことは出来ない」
これまでかえでの自慢話を自席で聞いていたカウラが立ち上がってかえでの所まで行くとカウラはそう言ってかえでの机を叩いた。
「ベルガー大尉。これはかえで様のこれまでなさって来たことの事実なんです。その場に侍らせてその夜伽のお供を仰せつかった私が申し上げているのですから間違いありません」
それまでかえでの席の正面で静かに様子をうかがっていた渡辺リン大尉はそう言ってかえでを擁護した。
「おい、かえで。オメエは女とヤッてる間もリンを隣につけてたのか?オメエ本当にオカシイんじゃねえのか?ああ、オメエは人に見られると燃える質だったな。オメエが変態なのは良く分かった」
かなめはそう言ってリンとかえでを見比べるようにすると嘲笑うような笑みを浮かべた。




