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第30話 射撃にはまるで向かない青年

「これも高い弾なんですか?」 


 弾を全弾装てんしてフォアエンドを引いて誠は薬室に弾を込めた。


「ああ、これは使用範囲が警察任務に限定されてくるからね。当然製造数が少なければ一発たりのコストも上がる。だから予算の少ないうちのような部隊では撃つ機会が少ないから貴重な経験だと思っておいた方が良い。結構な値段はするけどスラグ弾やバックショットとはかなり弾道が違うんだ。特に急激に初速が落ちるからかなり狙いより下に当たることを注意して撃った方が良い。こころもち狙いを上に付けるのがコツかな」


 親切なかえでの言葉を聴くと誠は銃口をターゲットに向けた。


「ボスン」 


 誠の撃った初弾はあっさりと出たがターゲットの手前で着弾した。


「もっと銃口を上げてみたまえ。初速は普通のスラグなんかよりぜんぜん遅いんだ。そこのところを考えれば君でも当てることが出来る」 


 かえでの言葉に少しばかり焦りながらポンピングをする。


 そして狙う。照準装置の無いショットガンでは感覚で着弾点を覚えるしかないことが誠も知っていた。


「ボスン」 


 今度はターゲットを飛び越えて白い弾頭らしきものが飛んでいくのが見える。


「まったく……本当にオメエは東和宇宙軍の幹部候補の課程を通過したのか?」


 誠とかえでの様子を見守っていたかなめが呆れたようにそうつぶやいた。 


「お姉さま、そんな言い方は神前曹長に失礼なんじゃないですか?神前曹長。もっと落ち着いて撃つんだ。そうすれば君ならきっとできるはずだ」


 呆れるかなめに首をひねりながら再びショットシェルを込めて銃口をターゲットに向けた。その様子にかえでは反抗するように誠を励ました。


「ボスン」 


 ようやくターゲットの中央に弾が当たったのが分かった。人型の鉄板が揺れて着弾を表していた。


「ボスン、ボスン」 


 四発撃ち尽くして誠は大きなため息をついた。


「まるで駄目じゃないのよ。誠ちゃん。もう少し練習しようね」 


 アメリアもさすがに呆れたと言うように誠の肩を叩く。仕方が無いとうつむく誠を見ながらカウラは自分の銃に弾を込めていた。


「まあ神前には剣があるだろ?どうせこの距離くらいでの衝突だ。警棒で対応できれば文句は無い」 


 カウラは部下をフォローする様子で誠に向けてそう言った。


「その警棒で対応できないからこいつを使うんじゃねえのか?甘いねえ、隊長殿は」 


 カウラのフォローを台無しにするかなめ。誠はいつものことなので逆に開き直って銃に弾を込め始めた。


「お三方とも厳しいが、厳しさだけが人を育てるものでは無い。愛が有って人は育つんだ。信じているよ、神前曹長。なんと言っても君は僕の『許婚』なんだから」


 かえでは銃を撃つ誠の背中から熱い視線を送りつつそうつぶやいた。


「とりあえず管理部の高梨部長が言うには今日中にこいつを消化しろとのお達しだ。特に神前は構えるところからはじめる必要があるな……日野!出番だ!オメエが神前の構えを矯正しろ」 


 ランは誠の下手ぶりに誠に触れたがっているかえでに誠に触れることを許可した。


「はい!日野少佐、神前曹長の射撃指導に入ります!」 


 ランの言葉にかえでは頬を赤らめながら笑顔でそう言うと誠の銃に手を伸ばした。誠はこのまま何時間かこの樹脂製の割りに重い銃の構え方を繰り返させられるかと想像して大きなため息をつくのだった。



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