第29話 張り合う小隊長
「神前、とりあえず見本だ。それに日野少佐はショットガンに自信があるようだから私の撃ち方に欠点があるならご自由に指導していただいても構わないのだが」
カウラは明らかにかえでへの敵意をむき出しにしてそう言うと等間隔で五発の連射を行なった。ターゲットの金属プレートが煙に覆われた。
「カウラさん凄いです!低殺傷能力でもこれは危ないんじゃないですか?」
誠の言葉にかなめが心底呆れたという顔をしていた。
「『低』だからな。オメエが三ヶ月前まで使ってた22LR弾だって当たり所が悪ければ人は死ぬぞ。こいつも同じだ。頭とかに当たれば場合によっては十分死ぬからな」
かなめはそう言って以前誠が使っていたグロックG44を例に出してそう言った。
「西園寺、そんなことはどうでも良いんだ。それより日野少佐。私の撃ち方に問題点は?」
珍しく感情的な視線をかえでに投げつつカウラはそう言った。
「いいえ、何もありませんよ。僕から教えることは本当に何もない。この銃弾の性質を理解した上で的確に射撃をしている。本当に見事なものだ、さすがですね」
かえでは本心からそう思っているようで誠にランにバレないようににじり寄りながら拍手をしていた。
「カウラちゃんの射撃が上手いのは『ラスト・バタリオン』なんだから当然よね。まあこの種の銃器を使うのは警棒を振り回すよりは文化的でしょ?それにかえでちゃん、誠ちゃんにそれ以上近づかない方が良いわよ。私も黙って無いから」
アメリアは意味のある微笑みを浮かべてかえでとカウラを見比べながらそう言った。それを見ながらかなめは機械のような動きで一発づつ確実にオレンジ色の派手な色のショットシェルを押し込んでいた。
「日野少佐。アメリアの言うように無用な神前へのボディータッチは止めていただきたい。神前も戸惑っているように見える」
カウラはそう言うと呆然と突っ立っている誠のひじを小突いた。仕方なく誠も不器用な手つきで弾倉を開いてショットシェルを押し込んでいった。
「オメー等の神前へのセクハラ・パワハラごっこもいい加減にしろ。遊びじゃねーんだからな。狙う対象は暴動に発展しそうな興奮状態の暴徒。それを一撃で殺さずに行動不能に陥らせる。それを頭の中でシミュレーションしながら撃てよ」
ランもまた装弾を開始していた。バスケットの中の弾は五箱。実銃の射撃訓練に比べると明らかに少なかった。