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第203話 後味の悪い事件

「後味が悪い事件だったわね……結局、『法術』が明らかになったことが全てのきっかけ……私達の仕事が全てを始めることになった……」


 アメリアの言葉に誠は静かにうなずいた。誠自身が蒔いた種が今この星を覆いつくそうとしていた。


「なにしけた面してるんだよ!事件も片付いたんだ!もっと喜べ!今日は吐くまで飲ませるからな!また見せろよ!神前ご自慢のアレを!脱げ!」


 急に明るい表情になったかなめがそう言って誠のジョッキを誠の口に近づけた。


「そんな……また僕がそんなバカなことばかりさせられて……」


 誠はまた脱ぐことになるかと思うと良い気分にはなれなかった。


「オメエは童貞喪失の機会を失ったんだ。まあ、かえでによる逆レイプだったとしてもそれは東和国民としては残念極まりない事態だってことはわかるよ……アイツはテクニシャンだからな。しかもケツの穴まで使いやがる。最高のエッチの機会を逃した気分はどうだ?」


 かなめは笑いながら誠に話しかけてきた。


「嫌ですよ、そんなの。僕は普通に恋をしたいんです!」


「毎週、かえでちゃんの無修正動画を見ている人の言える台詞かしら?そんなこと」


 ひたすら強弁する誠にアメリアがツッコミを入れた。


「あれは!かえでさんが!勝手に送ってきている訳であって!」


 誠は真っ赤になって反論した。


「でも見てるんだろ?不潔だな」


 カウラは烏龍茶を飲みながら誠を汚いものを見るような視線で見てきた。


「仕方ないでしょ!アレを見ないともし島田先輩とかに流出したら大変なことになるじゃないですか!」


 誠は顔を真っ赤にして言い訳を続けた。


「島田を便利な道具として使うか……まあ、アイツは『愛とエロを完全分離した貴重な個体』だからな。島田の事だ。ネットに上げて大騒ぎになるのは目に見えてる。まあ、神前も男の子なんだからああいったのが見たいのは当然か……なんならアタシのを見るか?」


 そう言ってかなめはニヤけた顔つきで誠に迫ってきた。


「西園寺さんはいつもそれなんですね……僕は誇り有る童貞です!そう簡単には捨てるわけにはいきません!」


 誠はそう強弁するとビールを煽った。


「誠ちゃんも意地はっちゃって……そうなると喜ぶのはカウラちゃんよね。カウラちゃんも誠ちゃんのそう言うところが好きみたいだから」


 アメリアは笑いながらカウラを見つめた。


「何を言っている。世界情勢はそんな私情など許してくれる状況にはないぞ」


 カウラは手羽先を口に運びながらそう口にした。


「まあ誠ちゃんの童貞はどうでも良いとして。この事件は終わったことなのよ、これは。良いなじゃないの!過ぎたことは忘れましょう!」


 アメリアもいつもの能天気な調子に戻ってジョッキに手を伸ばした。


 豊川の冬の夜は更け行こうとしていた。


                                        了


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