第201話 米帝と国際圧力
「そう言うこと。なんでもアメリカさんが水島の旦那を自分の保護対象者だって同盟に言ってきたらしいんだわ。それで秘密裏に奴は地球に出国済み……俺達は骨折り損のくたびれもうけだ。まあかなめ坊は骨折り損どころの騒ぎじゃなかったけどな」
嵯峨は力なく笑った。誠はあまりの結末に絶句した。
「警察は何も言ってないんですか?あそこは自分の手柄にしたくてうずうずしているはずなんですが……」
カウラも納得がいかないというようにそう抗議した。
「お前等の御守の杉田とか言う刑事がいたろ?奴は外事課の出でね。そう言う所にも明るかったんでね。それに豊川署の署長も将来を嘱望されているキャリアさんだ。その点は空気を呼んだんだろ?アメリカ相手に喧嘩しても誰も何も得をしない。あの国とはね、関わり合いにならずにただの貿易相手として利益をむしり取ってやるのが賢い国の運営方針なんだ」
苦々しげな笑みを浮かべて嵯峨は扇で埃を避けた。
「これが結末か……これで納得しろって訳だな」
かなめはそう言うと嵯峨に背を向けた。
「西園寺、怒らないのか?」
尋ねるカウラにかなめは軽く手を振った。
「こんなこと軍の工作員時代はよくあった話だ……今回は何も起きなかった……世の中は平和だった……そう思えって話だろ?」
やけに物わかりの良いかなめに誠は唖然とすると同時にかなめの生きてきた工作員の世界では良くある話なのだろうと推測した。
「そう言うこと」
出ていくかなめを見送りながら嵯峨はそう言って視線を誠に向けた。
「神前。これが世の中なんだ……悲しいけど仕方ないよね」
嵯峨の言葉に誠は息をのんだ。
「まあ仕方ないじゃないの。誠ちゃん、今日は月島屋で飲みましょ。おごるわよ」
そう言ってアメリアは誠の肩を叩いた。
「そんなもんですか……」
誠もカウラもただ納得できないというようにその場に立ち尽くした。




