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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第四章 低殺傷兵器(ローリーサルウェポン)
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第20話 低殺傷兵器(ローリーサルウェポン)

 会議室を出ると冷たい風が吹きぬけたので誠は思わず首を(すく)めた。後ろに続くかなめはそれを見て何か言いたいことがありそうだがあえて黙っていると言う表情でそのままアメリアの後に続いて進んでいった。


「早くしろ。重要な会議を中座してまでの訓練だ!気合い入れろよ!」


 ランに背中を叩かれて我に返った誠はそのまま廊下を小走りに進んで勤務服のポケットに手を突っ込んだまま足早に歩くかなめに追いついた。


「制圧用の火器ってガス弾か何かですか?」 


 誠の問いにいかにも不機嫌そうな顔をしてかなめが振り向いた。そして大きくため息をついて後ろを歩いているカウラに目をやってまたため息をついた。


「そんなもん警察の機動隊がデモ隊相手に使う道具じゃねえか。うちはもっと非常事態に適したのを使うんだよ」 


 それだけ言うとかなめは満足したように早足でアメリアの後を追った。誠はまだかなめの言葉の意味もつかめずに彼女達の後を追った。そのまま機動部隊詰め所と管理部の前を通り過ぎハンガーの広がる景色を見ながら階段を下りた。


「待ってくれないかな?神前曹長」


 駆け寄ってきたのはかえで率いる第二小隊の面々だった。誠はその中でかえでの歩き方が少し不自然なのが気になった。


「日野少佐も来たんですか……日野少佐も訓練ですか?」


 誠は自分の『許婚』だと頑なに主張するこの男装の麗人がそのあまりの変態的な欲求により自分に迫っていることに少し不安感を隠せずにいた。


「それはかなめお姉さまと神前曹長の居るところには必ず僕が現れる。そしてお姉さまと君は必ず僕を必要とすることになる……違うかな?」


 いつものさわやかな笑顔を浮かべて迫ってくるこのナルシストの気のあるかえでの態度に誠はいつも違和感を感じていた。


「かえで、なんでオメエをアタシが必要とするんだ?アタシは自分の事は自分でできる。ただオメエが必要になるのはストレスが溜まった時の虐め甲斐のある雌奴隷としてだけだ」


 かなめは自分が『女王様』として調教したかえでに向けて冷たくそう言い放った。


「いいえ、お姉さま。お姉さまにはまだ法術師としての覚醒が無い。もし敵として法術師が現れた場合、即戦力になるのには神前曹長は荷が重すぎる。その点、僕はお母様に鍛えられたクバルカ中佐の本気を引き出すほどの実力を持つ法術師です。その辺はお忘れなく」


 自信を込めた調子で言うかえでのいつものさわやかな笑顔に誠はつい引き込まれそうになるが、ランからの『恋愛禁止』と『かえでとの結婚は絶対に認めない』と言う二つの言葉により凝り固まった理性がそれを押しとどめた。


「確かに、日野少佐の法術師としての能力は隊長を遥かに凌ぐものだとは知っているが、あまり自分を過信するのは良い傾向ではないな」


 ここは一人冷静だったカウラの言葉で場が収まると誠達は先に行ってしまったアメリアの長身を目印に射場を目指した。


「ベルガー大尉。僕は事実を言ったまでの話だよ。僕の力は義父上を遥かに凌駕する。確かに義父上は不死人だが、能力制御がアメリカの実験でまるでできない状況なんだ。その点、僕は全ての能力を自由自在に使いこなすことが出来る……まあ、手の内は君達にも見せるつもりは無いがね。『法術師同士の戦いでは先に手の内を見せた方が負ける』これは法術師の戦いの鉄則だからね」


 かえではそう言うといつも通りのさわやかな笑みを浮かべた。



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