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法術装甲隊ダグフェロン 永遠に続く世紀末の国で 低殺傷兵器  作者: 橋本 直
第一章 祭りと何かを誤解している地球人
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第2話 元非正規部隊員の祭り

 非正規部隊上がりで祭りと言えば混乱を利用しての暗殺、あるいは逆に暗殺の阻止と言う任務と直結して考えてしまう自分を変えたいと言い出したかなめが、東都浅間神社の新年が見たいと言い出したのは新年まであと4,5分のことだった。


 最初は外惑星の貴族制国家『甲武国』切っての貴族のである四大公家筆頭西園寺家の当主として庶民的な出店の品々に歓喜の声を上げていたかなめだが、すぐにその関心は店番や時々店を冷やかして回る堅気とは見えない面々の方に向いてしまっていた。


 ちょうど酒が飲みたくなった彼女はそんな一人のチンピラを羽交い絞めにするとそのままこの出店を仕切っている元締めに会わせろと怒鳴りつけた。その迫力に負けたチンピラがつれてきたのがこの出店の間の待合所のようなところだった。一緒に出かけてきた誠の上官のカウラ・ベルガー大尉とビニールの入り口を塞ぐシートの隙間から顔を出して道行く参拝客に目をやるアメリアもとりあえず人ごみに飽きたという感じですっかり和んで酒樽の隣に置かれた達磨ストーブの暖かさに酔いしれていた。


 そんな和んでいる女性陣とは対照的にただ申し訳なさそうに立つ誠にゆらりとかなめが顔を向けた。


「すまねえなあ。ウケル話が届いちゃって……ったく酒がもったいねえよな……神前、オメエもそう思うだろ?」 


 かなめはそう言うと空になった升を額をぬぐい終わったオヤジに差し出した。オヤジもかなめの話に興味があるものの一応司法執行機関の大尉と言う境遇のかなめに話を持っていくのは遠慮しているらしく、にやにやと笑みを浮かべながら黙って升に酒を注いだ。


「さすがに西園寺だな。まだ飲むのか?ラム酒にウォッカにジン。蒸留酒しか飲まないと思っていたが、西園寺は日本酒も飲むんだな。これは新たな発見だ」 


 カウラが皮肉を込めてそうつぶやいた。緑色の若葉を模した文様がエメラルドグリーンのポニーテールに映えた。彼女もまたかなめが相当なピッチで酒を飲み始めてからもう二十分が経っているのでさすがに呆れてきたように同僚の飲みっぷりをただ黙って眺めていた。


「ふう……、だってよう……ああ、思い出しただけで笑えて来るわ」 


 ようやく升を置いてカウラに向き直るかなめに大きく安心のため息をつくオヤジの表情に少し笑みを浮かべる誠にかなめは話を切り出そうとした。ひらりとその赤い絹の袖が翻るといかにも正月だと言うことが誠にもわかった。


「それにしても西園寺さん。なにがそんなにおかしいんですか?教えてくださいよ」


 かなめを見ながら改めて自分がスタジャンにジーパンと言うありきたりな冬の服装をしていることに気づいてなんだか場違いなような感じがして思わず苦笑しながら誠はそう尋ねた。


「私も知りたいわね。本当にすみませんね、暴力馬鹿の誰かさんに酒を盗まれた挙句に顔に吹きかけられるなんて……。これは間違いなく人災ね。警察沙汰だわ。ああ、私達が警察官だったわね、失礼しました」 


 アメリアがオヤジに頭を下げるのを見てカチンと来たかなめがアメリアの紺色の長い髪を引っ張った。



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