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第100話 待ち人来る

「遅れてすいませんっす!」 


 食堂に集う寮の住人達にざわつく気配を感じて顔を上げた誠の耳にラーナの声が響いた。


「良いわよ私達も見ての通り食事中だから」 


 私服の皮のジャケットを着たラーナはいかにも申し訳ないというように再びうどんを啜り始めたアメリアの正面に腰を落ち着けた。


「どうせ命令の範疇(はんちゅう)を超えた話になるんだからもう少し楽にした方がいいな」 


 カウラはそう言って遅れたことを今にも詫びかねないラーナに向けて優しく笑いかけた。


「おい、カウラ。いつからそんなに話が分かるようになったんだ?以前なら『捜査は捜査だ。非番だろうが関係ない』とか言い出す奴だったのに」 


 かなめの皮肉にこめかみをひくつかせながらカウラは無視してうどんの汁を啜った。


「話が分かるも何もベルガー大尉には本当に感謝っすよ。東都警察機動隊の端末を経由して千要県警本部のサーバーにアクセスできればかなり詳細な分析結果を見れっすから」 


 ラーナはこの早朝からすでに捜査官モードに入っていた。


「機動隊?サーバー?」 


 突然のラーナの言葉に誠は吸い込んだ麺を吐き出すところだった。


「機動隊の隊長をしているカウラちゃんの友達のエルマさんがいるでしょ?その人にお願いしたら上には内緒と言うことで手配してくれたのよ。しかも非番の日だからネットを監視している管理者の人も今日はお休み……楽しい仕事になるわよ」


 アメリアは嬉しそうにそう言いながらうどんを食べていた。 


「でも良いのかねえ……機動隊のパスでサーバーに入るってのは本来拙いんじゃないのか?」 


 誠よりも早くうどんを食べ終えたアメリアの強気な言葉が誠には気になった。そんなアメリアに言ったかなめの一言に周りが凍りついた。


「かなめちゃん……いつもかなめちゃんがやるようなことじゃないの。それとも気付いてないの?それともいつも自然にやってることだから無自覚なだけかしら?」 


 アメリアはうどんの汁を飲みながらかなめを見上げた。


「西園寺が鈍いのはいつものことだ。自分がやっていることが命令に即していないと言う自覚が無いんだろうな。だが、命令無しに発砲はするな。それだけは止めてくれ」 


 アメリアとカウラの皮肉に明らかに気分を害したと言うようにかなめは立ち上がると冷えたどんぶりと番茶の半分ほど入った湯のみを持って厨房に向かった。


「でも……機動隊の端末を弄るとなると東都警察の本部に行くんですよね。入館証とかは大丈夫なんですか?」 


 今度は誠の言葉にアメリア達はきょとんとした顔で誠の顔を見つめた。


「馬鹿だろオマエ。端末のところまで行かなきゃ情報が見れないなんて……いつの時代だよ。うちの端末から機動隊の端末にアクセスして県警本部のサーバーにログインしてそのまま今回の事件のアストラル波動計測のデータを覗くんだよ」 


 戻ってきたかなめはそう言うと番茶の入ったポットに手を伸ばすがすでに湯飲みを返してきたことを思い出してすぐに手を引っ込める。カウラがその様子をうどんの汁を飲み干しながら見つめている。そしてその視線に気付いたかなめが威嚇するような顔をするのを見て苦笑いを浮かべると、満足したようにどんぶりを置いた。


「それと……ついでと言ってはなんだが、これまで何度か豊川署のデータベースにアクセスしたときに見つけた私達の知らないデータもあるからな。そちらも見てみるのもいいかもしれないな」 


 かなめとカウラの言葉に今ひとつ納得が行かないまま誠は静かにどんぶりの底に溜まった汁を啜り始めた。


「それにしてもさあ。いけ好かない警察連中の下衆野郎が必死で隠している秘密を探るってのはさあ……わくわくしねえか?」 


 かなめの表情にはいたずらっ子のそれが浮かんでいた。


「貴様は子供か?秘密を知るのが目的なんじゃない。その先の事実を知ることが目的なんだ」 


「子供で結構!アタシはその場の雰囲気が楽しければそれで良いんだよ!」 


 ノリの悪いカウラを馬鹿にするようにかなめが手を振り回す。驚いた整備班員がかわそうとするがよけきれずにそのまま顔面にサイボーグの怪力でのパンチが入った。



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