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第10話 一仕事終えて
「カウラ……」
かなめは少し気の抜けたような顔でカウラに声をかけた。
「なんだ?」
かなめの顔を見てカウラは煤で汚れた頬を拭いながら振り向いた。
「誠の家……ラムはあるか?オメエは一番あの家で薫さんを手伝ってた。酒の場所ぐらい何度も見ただろ?」
かなめのこんな場所でも酒を欲しがるその神経に呆れ果てたような顔を浮かべるカウラが居た。
「は?」
カウラもアメリアも誠も突然のかなめの言葉に呆然とする。
「いやあ、こういう突然の仕事の後は強い酒をきゅっと飲みたい気分でさあ……」
かなめの突然の問いに誠は戸惑いつつ実家の父の酒の事を考えてみた。
「父は基本的には焼酎より強い酒は飲みません!母は酒を飲みません!」
誠も大人になってからは全寮制の私立高校の剣道教師をしている父が帰ってくるたびに酒に付き合わされるのでそのことくらい分かっていた。
「ああ……そう……」
本当に力なく、まるで抜け殻のようになりながらかなめはそれを見守るカウラ達に見送られながらよたよたと指揮車を後にした。




