最重要事項その2
本日から1日1ページ、正午を基準に更新していこうと思います。
ステータス画面のスキル欄に水魔法の文字が記されたと同時に、恐らく自己知覚の効果でそれの使い方を理解する。
直ぐ様俺は本体が濡れないように、本体周囲から俺が離れられる最大距離の間を魔法力が許す限り濡らし続けた。
RPGをプレイしていたおかげでドリアードという種族の特徴はある程度理解出来ていた。このドリアード体である俺は、この本体である雑草から遠く離れることが出来ない。
だから本体を中心に、本体の根に十分な水分が届くように水をやった。水やりは前世で散々やったし、本体がこの世界の生物故か魔法の使い方はスキル習得と同時に理解出来たから、しっかりジョウロの水やりの如く地面を濡らした。
荒野だからか、はたまた荒野にしてはか、水捌けは思った以上に良かった。この周りだけ地面が土砂降りの後の土の地面みたいになるかと思ったけど、しっかりと水を吸って根にも届いてくれた。おかげで生命力がほんの少しだが回復してくれた。今は46だ。
反対に魔法スキルを使ったからか、一気に魔法力は数値は20以下まで下がった。今は17だ。
どうやら魔法力の数値がここまで下がるとこのドリアードの体を維持するのがかなり辛いらしい。現在進行形で倦怠感が半端ない。
回復の見込みも無いため、もう少し動きたかったが断念してドリアード体を消すことにした。
消すのは簡単だ、消そうと思えば簡単に消える。そして再び出そうと思ったらまた魔法力を1割使えば良い。毎分1減るが、減ればまたドリアード体を消せば良い。
消すと自然と視線の高さは低くなり、先程まで以上に全てのスケールが大きく見えるようになった。地面が近過ぎる。明らかに萌芽の視点だった。
この視点の高さは元人間の俺からすればとても珍しい。もし仮に赤ちゃんの頃の記憶が有ったとしても、この視点の高さは経験出来なかっただろうから。有るとしたら体を鼻上まで埋めたらこのぐらいの高さになるか。
そうして少しすると、感覚的に魔法力がかなり回復したように感じた。
試しにドリアード体を出せば簡単に出せて、再び視界が高くなった。
状態を確認しようとステータス画面を開けば、生命力が50になっていて魔法力は89にまで回復していた。
ドリアード体を出すのに10使ってその維持に1使用したとしても、生命力の回復具合と釣り合わない。明らかに魔法力の回復が早過ぎる。
しかし考えても今はわかりそうに無いため、一旦考えるのを止めて自分の周りの土壌の改善のため、水魔法による水撒きを再開することにした。
ドリアード体を出しては消し、魔法力が回復すればまたドリアード体を出すというのを繰り返して行く内に、ある程度回復速度の効率の良さというのがわかってきた。
当然だが俺の本体はこの雑草(萌芽)で、ドリアード体を出していなければ土の栄養と太陽の栄養でみるみる内に生命力は回復していく。消費しておらず食べ続ければ蓄えられるのだから、生命力の回復が早くなるのは自然と言えた。
ただ反対に、魔法力の回復は数を重ねる毎に遅くなっていった。
これは本体の周りの土に含まれる魔法力の基が急速に減って行ったからなんだろうと予想出来た。魔法力の栄養とか魔力と言った方がイメージしやすいか。
一応水撒きに使われている水は元は魔力の塊だ。それを空気中の水分を集めて~とか、そういう小難しいことを行うことで水を創り出していたんだろう。
魔法力が失くなるまでドリアード体で水撒きを行い、魔法力が失くなれば本体による回復を行う。使って、回復して、使って、回復する。これを何度も繰り返すと、気付けば空が朱くなっていた。
そろそろ夜ということなのだろうが、ここで思わぬ誤算が有った。
どうやら植物にとって日の光ってのは絶対だったらしい。完全に太陽が地平線の彼方に沈むと、強制的にドリアード体は解除され、同時にどうしようもない眠気に襲われた。
名前:(この個体を示す名称が存在しません)
種族:雑草
称号:転生者
能力値:生命力―93/100
魔法力―54/100
知力―79
潜在能力―10/20
スキル:自己知覚、自己強化、自己保存、水魔法
備考:何の因果か神のイタズラか、水も無い生物も居ない大地に生えた奇跡の植物。その萌芽。生えたてであり植物にも関わらず、本来発生しない筈の植物の精霊であるドリアードとしての自我をこの時点で確立しているとても稀有な存在。水不足は解消され、大地の栄養を独り占めして大きく育つ準備をしている。