105日目その5
…………。
色々と考えた末に、彼等が望むようにドリアード体を出す決心をした。
もしドリアード体だけを殺したかった場合を考えはしたかったが、彼等の声が思ったより剣呑なものではなく穏やかなものだったこと、恐らく彼の御方というのがこれまでの彼等の行動から俺のことだろうと推測出来たことから、話だけは聞こうと思ったためドリアード体で対応することにした。
もしこれでよくも攻撃したなと攻撃されたならもはやどうしようもない。そこまで考えて動くのなら、自動車や飛行機が事故に遭って死んでしまうかもしれないと考えるのと同義だ。流石にそこまで考えてリスクヘッジするのは病的だし、現状そこまでのリスクヘッジは出来ない。ならば、話だけでも聞いて、ここがどういう土地なのかを聞いてからでも遅くはない筈だ。
ドリアード体を彼等の居る位置より高い場所で出す。しかもその体は鳩尾の上辺りから下が幹に埋まった状態で。これで少しでも攻撃された時の対処法とする。
「なんですか」
2人の顔が揃って上を向き、そして俺を捉える。
彼等の目が大きく見開かれ、次いで2人はその場に傅いた。
……何故傅く?
「我々の声をお聞き届けてくださり誠に恐悦至極に御座います。私はブラファーと申す竜人族の長だった者。隣のは我が伴侶アメルガに御座います。この度は我々の願いをお聞き届け願いたくこうして御身に近付かせていただきました」
「そうですか」
俺から攻撃を仕掛けた筈なのにこの恭しい態度。違和感というか言い知れぬ不快感が凄まじい。まるで俺の方が圧倒的に偉くて、先の攻撃も彼等からすれば攻撃されて当然と考えているような言動だ。
彼等が竜人族というのはまぁ予想通りだったけど、その長だったって。なんでそんな人物がここにその奥さんと2人だけで居るのか甚だ疑問だ。
相槌でそうですかと返したけど、彼等は俺に何かお願いしたいことが有るらしい。それを聞いて、何故そのお願いをしたのかその背景を聞いて、それからそのお願いを聞き届けるのかそれとも却下するのか判断しよう。
「つきましては、我々がこの地にて暮らすことの許可を戴きたく存じます。我々には今のところここ以外に生きていくための安息地がほとんどありません。ですのでここで生きていく許可を戴きたく」
そう言って2人は傅くそのまま、より一層頭を下げた。
安息地が他に無い?ということはこの2人は竜人族という括りから追われた身なのか?もし追われた身なら、彼等の生死を確実にするためにと他の竜人族達が現れないか?そんな厄介事に巻き込まれなくないぞ?
……およそ40年以上振りの他人との会話はやっぱり刺激が強過ぎる。輪廻転生を果たしたからか、アレほど他人に興味が無かった筈なのにアレもコレも気になって仕方がない。
一通り彼等にはその辺のことを説明させよう。
それでここで暮らして良いか、最終的な判断を付けよう。
少なくとも情報の少ない今の段階では絶対にダメだ。近くに住まわせるだなんて絶対に出来ない。もしこれから話されるだろう話や今の話が嘘だったとしても俺にはその真贋を判断出来ないけど、話を聞かないことにはその決断も出来ない。
別に話を聞かずに却下するのは簡単だけど、そもそも現状で既に俺は命の危機に立たされている。俺が今彼等に殺されていないのは、彼等が俺に対して恭しい態度を取り続けることをメリットだと考えているからだ。なら断るにせよ、話を聞いて寄り添おうとしたという実績を作った方が断りやすい。だからまずは話を聞こう。そうしよう。
逸る断りたい欲を我慢し、俺はそうなった経緯は?と彼等に問い掛けた。




