73日目~103日目
夜間起きれるようになったからと言って、その夜間に活動するわけではない。あくまで今の俺の本懐は植物であり、植物は夜には寝る。少なくとも俺は眠る植物だ。だから寝る。でもたまに"あともう少し"をやりたい時だけは少し日が沈んでからも訓練する。
73日目~87日目までの2週間はそんな風に過ごした。
約半月ちょっと夜更かししたりして訓練した結果、少なくともドリアードの体で視認出来ない速度で攻撃が当たる領域まで来ることが出来た。その時に溜めた光のエネルギーは月が空の天辺辺りまで来てようやく眠くなるという程度。たぶん、魔法力に換算したら今の上限である650より少し多いぐらい、660程度のエネルギーになってそうだ。
上限を超えて魔法力を使えるのは完全に本体の種だけが持つ力なのだと最近理解し始めた。
この未だ名も無い木は極めて豪壮な木だ。そしてもしかしたらだが、この木以外この木の種はこの世に存在しないんじゃないかと思うくらい文字通り潜在能力が優れていると言える。
他の植物の潜在能力がどの程度とかは定かじゃないが、最初は雑草だった筈なのにたった1日不足していた水分を得ただけで幼木にまで成長するような種、例えこの魔法力なんてものが有る世界でもそうそう無いだろう。
生えている場所も思えばおかしい。こんなまるで人工的に造り出しましたみたいに何も無い大地に1本だけ木の芽が生えるってどんな確率なんだ。もしそのまま雑草だったのだとしても、だとしたら他に雑草が生えていないことの説明にならない。
ドリアード体と本体での魔法力の回復速度も明らかに違った。
この事から、だからこの木はこの木で完結している種なんじゃないかって考えた訳だ。
閑話休題。
魔法力に富んだこの木の限界は、溜めれば溜めるほど、膨らませた風船が空気が入ると伸びて元の大きさに戻らないように、溜めれば溜めるだけその限界容量を増やしているんじゃないかと感じる。そのおかげでこの木は限界魔法力以上の力が使えるし、そうして限界まで溜めて放たれた光のビームはとうとう的にした土人形をガラス化させるに到った。
目論んでいた炭化以上の結果だ。最大がガラス化なのであれば、それより先に発射することがほぼ確定している光のビームによる攻撃は、十分炭化に近い結果を生み出してくれることだろう。
88日目~103日目まで。
一旦最大まで溜める訓練を行うのは止めにした。そもそも最初の目的は炭化だ。そう決めたのは例え誤射したとしてもなるべく根へのダメージが少なくしたいがために目標をそこに定めた訳だが、蓋を開けてみたらその上を行ってしまった。
だから、改めてより速く溜めて発射する訓練を再開した。
それに加えて、その速く溜めるの行程の時にどの程度身構えていない咄嗟で溜められるかも試し、それを発射なんてこともやった。
不意打ち対応の訓練だ。
攻撃は一撃必殺を誇っても、当たらなければ意味が無いし、避けられ見失えば必然的に咄嗟に防御か攻撃を選ばなければならなくなる。
防御は今のところドリアード体での方が行いやすいが、考えずに力業で押し切れるのは断然木での攻撃だ。そして竜人の彼等含め、今後相手にするだろうもの達へは繊細なコントロールによる攻撃ではなく、力業によるゴリ押しの方が猛威を奮いそうだ。だから"咄嗟"の時の訓練も平行して行う。
そんな訓練を竜人達にバレないように行っていた日々、105日目の朝。どうやら収穫の時が来たらしい。




