54日目その1
54日目の朝、目を覚まし彼等の動向を確認しようとしたら、畑の辺りが少し緑色になっていた。
約2週間で発芽というのは、前世の野菜を思えば遅い方だ。
彼等の姿は無い。近付いてあの植物がどういう系統の種なのか知りたいが、やはり彼等が来て帰ったことを確認するまでは安全の為に姿を見せることは出来ない。
故に、本体の伸びる根を介して土の中からどういう植物なのか把握することにした。
今や本体の根はここら一帯の地中深くにまで張り巡らされていて、その密度は育ちに育って植木鉢の土の中全てが根になっているものに近い。
流石に端の方まで行けば人間の視認出来る大きさの血管のように枝分かれしていて、根で土が見えないなんてことは無いが、少なくとも泉の外周であり畑の在る辺りの地中は全て本体の根がビッシリだ。
そうして調べた結果、根に実のような物が成っていた。それも蔦のような根を伝っていくつもの塊で出来た実が沢山。
つまりこれは芋だ。
…………芋だ!
芋か?!!
この世界の芋がどうかはわからないが、少なくとも前世で芋を育てた時には思わぬ方へ蔓が伸びて、少々面倒臭いことになった。
芋だ。そして植物の生命力は凄まじい。
この根に絡まり、根から栄養を摂取するなんてことをやられる可能性が有る。
やはり他に植物が在るというのは害か。となるとこの畑は排除しなければならない。
そう考えたところで2人がやって来た。
やはり瞬間移動というのは神出鬼没だ、戸惑ってその場に留まってしまった。
いつもより断然距離が近いからか、彼等の話し声が聴こえる。
『スァールァドーク殿には困ったものだな。不信感を持たれることに否は無いが、アルメガは私のモノだというのに隙有ればアルメガを襲おうとする。夫である私は気が気ではない』
『ブラファー様にそれだけ想っていただけて感無量でございます。ですがブラファー様?彼の方は確かに私を襲おうとしますが、中身は正直子供と変わりません。ですから子供を相手するように、彼の方がより他に興味を示すものを用意すればとても素直で聞き分けの良い方に早変わりですのよ?』
『とは言うがな、あの方の本質が獣ということは理解しているが、やはり心配になるというのが夫である私なのだぞ?』
『あらブラファー様、まるでご自身のことは棚に上げられて仰られていますが、気が気でなかったのは私の方でしてよ?例えば婚前の頃、ブラファー様が森で────』
『アレは、それを言うならアルメガだって────』
『まぁ、それを引き合いに出されるのですか!でしたら私の方も黙って────』
何を喋っているのかはわからないが、ドンドン声が大きくなっていってることを思えば、もしかしたら痴話喧嘩を始めたのかもしれない。
痴話喧嘩はすることを全部済ませて別の場所に移動してからやってくれ。
私の前作を読んでくださった方は聞き覚えが有るかもしれませんが、そうです彼等です。