表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/41

11日目~29日目


 新しいスキルの確認を終えて、結局は前日までと変わらない訓練の繰り返しの時間となった。


 土魔法で土人形を作って、それの拘束と光魔法による攻撃。ひたすらこれの繰り返し。


 しかし潜在能力という可能性を失ったことも有ったため、魔法力が尽きたらその日はもう何も行わず、植物らしく日光浴を楽しみ、時にドリアード体を出して本体の周りを散歩したり本体に何かおかしな点が無いかを確認する日々を繰り返した。


 正直やっていることは畑の世話と変わらない。前世との生活の違いを挙げるとするなら、動物性たんぱく質摂取の必要が無いため狩りを行わないことや料理をしないぐらいである。


 訓練を行わないことに不安が過ることは何度も有ったし、その不安に駆られて訓練を行いたくて仕方がないことはまま有った。だがその結果支払う代償を思えば今の生活が1番だと自分を誤魔化し過ごす日々は、不安はいつまでも付き纏うが充実した日々だったと言える。

 言ってしまえば俺のこの不安は明日死んでしまうかもしれない、交通事故に遭うかもしれない、歩いていたら急に後ろから後頭部を殴られてしまうかもしれないみたいなタラレバの極地のような不安だ。

 前世では感じなかった筈のこの不安は、ならば一種の本体の不安なのかと思えた。


 そうして過ごす日々の中で、とある可能性に行き着いた。それは前世の記憶を持つこの俺という人格は、あくまでドリアード体での俺で本体とは違う存在だということだ。

 ドリアード体である俺が水魔法を使えてステータス画面を確認出来るのに対して、本体ではこれ等が出来ないことにずっと疑念が有った。それがこの約1ヶ月を過ごす中で、次第に言語化出来るようになっていき、そこで初めてドリアードである俺と本体は別の生き物なのだと理解した。


 そう考えると辻褄が合うことの方が多かったのも理由の1つだ。

 先に挙げたステータス画面や水魔法のこともそうだが、ステータスの備考欄のドリアードに関する記述が正にそうだ。書き方としては本体=ドリアードと捉えることが可能だが、何処か違和感が有る。もしドリアードという存在を樹木の付喪神と捉えれば、そりゃあ本体とドリアードが別の存在だと言ってもおかしくない。

 言ってしまえば新生児に大人の意識と知識が有るようなもの。幼少期は自分と他人の境界が曖昧な時分だが、それが物を考えられる年齢になってからならば自分と他人の境界は明確に別れるもの。


 雑草と言えるほど弱い存在だった若芽は幼木を経て若木に到った。

 俺と本体は別の存在と言ったが、もしかしたら双子の方が近い表現なのかもしれない。だからステータスの備考欄はどちらとも言える書き方だったんだろう。

 恐らく本来は付喪神に成るほどの時間を経ることで本体=ドリアードの図式が確立する筈なのに、俺達は最初から1つの生命として在った。だから本体が若木へと到ったことで、本体を別の存在だと認識出来るようになったのかもしれない。


 思えば俺は最初から本体を自分の筈なのに『本体』と別の存在として扱っていた。ドリアード体である俺と本体は別の存在と扱った結果が未来の可能性を狭める結果となり、それが明確な違いを認識出来るに到った。



 自分達以外の生物への恐怖に突き動かされスキルの訓練を行った。その結果が成長を早めたんだろう。


 皮肉な話だ。他者との関わりが嫌で植物に成りたいと生涯を終えた筈が、結局その植物に成っても別の人格とでも言える何かを無意識に生み出していたなんて。

 もしかしたら前世でも知らない内に人格を生み出していたかもしれない。


 そんな風に思い、今後の本体との付き合い方をどうしようかなんて考えていた翌日のことだ。

 遂にその時が来てしまった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ