7日目
7日目。6日目の大失敗を反省して、今日は光魔法の練習は行わずに行ける範囲までの散策をすることにした。
前世の生物のように、本体も日に日に大きく育って行ってるのか、それとも種族が変わると同時に大きくなっているのか、その辺がどういう風になっているのか定かじゃない。だから、太い根に沿って昨日と比べてどれだけ進めるようになったのか調べてみたくなった。
今日行けるギリギリの所、そこに何かしらの目印を付けておいて、明日か明後日か、数日中にまたそこまで移動して、その目印を超えていれば種族が変わらずとも本体は成長している、超えておらず変わらなければ種族が変わらない限り育つことはないと判断出来る。
数日中なのは根が原因である。根はこの時も体感前世の植物の成長の2倍から4倍の速度で伸びている。特に一夜明けた時の伸び具合が前世基準だとおかしい。いくらなんでも育ち過ぎてる。1日でだいたい20センチは根が伸びてるだろう。
しかし本体の全長そのものが伸びている気配は無い。だから調べる。
往々にして、何事も大きくなれば出来ることの方が多くなる。大は小を兼ねるだ。この世界に来て今日でちょうど7日目。本体も危篤な状況を脱した。ならば、より本体への理解を深めることが今後の永い刻を生きるのに必要なのではないかと思う。
と、いうわけで限界位置まで移動したんだが……。
幼木へと進化した際、地平線の彼方が光って見えた。それが海なのか、それともただの水辺なのか、判然としなかったわけだが、どうやら本体の全長はしっかりと伸びていたらしい。その光の正体が水面であり、その向こうにはしっかりと対岸らしきものが見えた。それも地平線の内側の方にだ。この7日で初めて代わり映えしない景色の変化で、思わず年甲斐も無く駆け出してしまった。まるで弾力性が高い壁に突っ込んだかのようにある程度まで進んだ後、後ろへ吹き飛ばされる形で押し戻されたが、それでも確かに、此所は、海面にポツリと浮かんだ足場程度の地ではなかったらしい。もうしばらく塩枯れる心配は無さそうで心底安堵した。
もしかしたら他の方角はそうではないのかもしれない。
押し戻されたことで少し冷静になった頭でそう思い、その後は見えないゴム性の壁に手を添え沿って歩くように、活動限界範囲の端を進んだ。
その結果わかったのは、この場所は湖のような場所の真ん中に在る浮島のような土地で、この浮島なんかじゃ及びも付かないような広大な大地が拡がっていそう、ということだった。しかし不思議なことに、その目視出来る広大な大地には俺以外の植物は居ないらしい。焚き火の跡のような人の痕跡は確認できたため知的生命体が居ることは確定しているが、それらしい影は見当たらなかった。
知的生命体が居る。その事実の確認は、判断に困る事実だ。
俺以外に知的生命体が居ることは前以て当然のことだと割り切っていた。しかしその事実を確認できたというのは、前世を思うと言葉にし難い嫌悪感に近い気不味さのようなものを覚える。その焚き火跡を作った張本人がまたこの地へ訪れるかもしれない。もしかしたらそれ以外の存在がこの地を訪れるかもしれない。知的生命体に限らず、近くには水場が在り、その奥には明らかにこの1週間前には存在しなかっただろう植物が、それも成長スピードが明らかに早い幼木が在る。
幼いとはいえ太陽光や雨風凌げそうな木が在って、その近くには水場が在って、その木は今後何かしらの実を付けるかもしれない。
生物が活動の拠点にするには十分な条件が揃ってしまっている。最悪の場合、本体の幹をくり貫いてそこを住居にされる可能性が有る。
この地を知るだとか、そんな悠長なことを言っていられる暇は無い。悠長なことをしている時間が惜しい。
そう判断した俺は、ドリアード体を消して直ぐ様魔法の訓練を日が暮れるまで行った。




