6日
6日目。前日の反省を活かして、水魔法で水の絨毯を作ってそれを地面に浸透させるように優しく乗せるというのを試してみた。試みは見事成功し、満遍なくほぼ均一に地面を濡らすことが出来た。
ただやはり反省点も有り、そもそも均したとはいえ地面というのはデコボコとしていて均一ではない。その均した地面も風が吹けば土が舞い別の所で山を作る。それに満遍なく均一に地面を湿らせることが出来たとしても、そもそもその水分が根の周りの土を濡らさなければ意味が無い上、植木鉢なんかでの栽培ではないから結局地中で濡れムラが発生して根腐れの可能性が出てくる。
そもそも木を育てるなんてことをしたことが無かったため失念していたし、本体の感覚がドリアード体──この場合は人型になるか──より鈍いから思い至らなかったが、この木は根とその周りの土さえ濡れていれば比較的に何もしないで良い植物のようだ。それを根に伝わる水分で理解した。だから今後はステータスを見て、水が必要そうな時にだけ水撒きを行えば良さそうだ。
とは言ってもまだまだ本体は幼木。日の有る内に水撒きを行えばその日1日は水撒きを行わずに済むが、翌朝には根の周りの土の水分は乾いているらしく、もうしばらくは水撒きの毎日が続きそうだ。変な小細工は行わず、今後は本体の根に沿ってだけ水撒きを行うことにした。
そんな水撒きは太陽が頂点に来る頃には終わり、午後からは土魔法の練習と光魔法の練習に費やした。
魔法なんて代物が有るし、流石に生物が自分以外存在しない訳がないため、いずれ来る生物に備えて最低限の自己防衛力は必要だろう。前世でも得手不得手は有れど人間という生物は動物的に退化せど殴る蹴るはやろうと思えば出来た。意味が有るか無いかはともかく、自衛手段は種として保持していた。
対して植物、それも木にそういった自衛手段は今のところ確認出来ていない。強いて挙げるならこの魔法こそが自衛手段だ。だからいずれ来るだろうその日に備えて練習する。
木と対話なんてするヤツはまず居ないだろうし、仮に対話出来たとして友好的かどうかはまた別だしな。
前世で言えば野生動物が正にそうだ。ヤツ等は平気で人が育てる作物を食い荒らすし、熊や猿なんかは人間ですら食い物だ。ヤツ等を仕留めるにせよ、追い払うにせよ、それ相応の力が要る。
そういう想いで練習をしている訳だが……、やはり攻撃となると光魔法という選択になった。
水での攻撃というのは、前世ではウォーターカッターなるものが有ったが、アレが強力なのは水の勢いが強いこととウォーターカッターとして成立する範囲が決まっていたからこそ強力だった訳で、その範囲外にまで行った水の勢いではウォーターカッター足り得なかったように記憶している。それと同じで水魔法でウォーターカッターを再現出来たとしても、じゃあウォーターカッター足り得る部分はどうするのかとか、その維持にどれだけの魔法力が必要なのかとか、様々な問題が出てくる。
水なのだから窒息という方法も無くは無いが、そもそもこの世界の生物に窒息なんて概念が有るのかというそもそもの問題が有る。
土魔法は攻撃メインではなく補助目的で、本体でのコントロール練習を行う。
ドリアード体でも良いが、ドリアード体だと魔法力が常に失くなり続けるため非効率だ。いくらドリアード体の方がコントロール向きとはいえ、いざその時に起こるのは余力勝負だ。国同士の戦争に例えたら国力のことだ。どれだけ余裕が有るかで戦いの行く末が大きく変わる。
余力勝負となればドリアード体より本体で戦う方が圧倒的に有利にことを運べるだろう。ドリアード体と違い魔法力が維持費で失くなることはなく、高速で魔法力を回復することが出来、尚且つドリアード体では体の全面以外が基本死角なのに対して本体は地中含めてその視野は全方位だ。戦うならどちらの姿をと問われれば、迷うこと無く本体で戦う。
話は逸れたが、だから土魔法の練習だ。
土魔法さえ思うように使えれば、日頃の地均しも簡単になるだろうし、今後当たるかもしれない岩盤も楽に壊せるかもしれないし、何より地に足を付ける相手には地震を起こせる。地震なんて大掛かりなものに頼らずとも、その足を土で拘束してしまえば良い。拘束したところで光魔法による攻撃で、大抵の相手は養分になってくれることだろう。養分にならずとも、分が悪いと退いて本体を荒らされることは無くなるだろう。
水が自己強化、土が盤面整理だと例えたら、光は正に一撃の矛と言えるだろう。
前世でも光はとても強いものだった。太陽が正にそうだ。複数の鏡やガラスなんかで太陽光を屈折させて1ヵ所に集めれば、その場所は燃えるんだ。水も圧縮すれば強いだろう。土も固めて圧迫すれば石のようにより硬いものへと変えれるだろう。だが光はそれだけで強い。そしてその太陽光のありがたさ温かさはこの体に成ってからより強くその恩恵を受けている。
光に物理的圧力は無いが、強い光というのはそれだけで圧を感じるもの。イメージは真夏の太陽。真夏の太陽のように強く鋭く肌を焼くあの熱さを束ねるイメージで、ただそこに在るだけで全方向に光を放つ光の放射方向を一方向に束ねる。そしてそれを、土魔法の練習で産み出した人型に見えなくもない塊に向け放つ。
これを何度も何度も繰り返して、土魔法の拘束よりも光魔法の攻撃を重視して練習した。
眠る直前に、無自覚に寝惚けていたのか地中の根まで焼いてしまったようで、熱いを通り越して痛いで意識が落ちた。
明日はこの反省を活かして練習しようと思う。




