半官半民を考える
かつては、公団なるものが存在しました。NPOやNGOは非営利団体ですが、やりたい事をやるだけなので半官半民ではありません。オープンAIなんかも実は非営利団体です。半官半民って何なのでしょうか?
「小さな政府」「官から民へ」「規制緩和」これらは先進国で温度差あれど、基本的には同じです。一方、郵便事業、水道事業、空港事業、鉄道事業等は、民営化や企業経営にそぐわない失敗ケースも各国で見られます。必ずしも失敗するとは言えませんが、あまり民間企業に趣旨がそぐわないと考えられています。それゆえ官が事業を行っている国も多いです。日本でも上下水道事業だけは未だに官事業です。
官から民へでは、国鉄からJR、道路公団からネクスコ、郵政公社から日本郵政等が有名です。民間企業になると効率や採算の意識や成果が現れますが、一方でモラル低下(不正増加)や不採算事業切り捨ても顕著になります。一長一短であり、地方切り捨てに繋がると言えばそれまででしょう。これらの企業よりも半官半民と考えられている企業があります。それらは、ガス・電気事業です。現在でこそ競争原理が導入されていますが、かつては地域別独占事業でした。一方、料金は国の認可制となっており、適度にしか儲けれない仕組みになっています。福島原発時の東電は叩かれまくりましたが、基本的に評判がよく、年収が高く安定した企業のため新卒人気も高いです。これらの企業は、否が応でもその事業内容の公共性(公益性)から、半官半民のような立場になります。
さて官民ファンド6割赤字と話題になっていますが、これこそ半官半民であり、実質救済制度、再チャレンジを国が助けていると言えるでしょう。美味しい儲けが見込まれリスクが少ない事業は、民間金融機関があの手この手で支援します。いわば民間金融機関で救済がない場合、雇用やその地域経済を鑑みなんとかしようとリスクオンで救済しているファンドとも言えます。似たような意味では、少年院や比較的軽微な囚人を入れる刑務所と同じです。多額の税金を使い更生して再び社会の一員として復活する事を願っているのです。置き換えると、政府系が多額の資金や助言を与えて経営を黒字化し、再び地域経済や雇用を活性化させるという狙いがあります。勿論、債券は回収します。再犯のように倒産して回収不能になるケースはあれど、社会的意義は大きいでしょう。全体として黒字なら、目くじら立てる話でもないでしょう。それこそ社会復帰した人間が誰一人再犯しないなんてありえない話同様です。
同様の話題としては、バス路線の96%が赤字という事実です。どうしているかと言えば、公共交通確保のために自治体が補填したり、社会的役割として鉄道やホテル・飲食事業の黒字で賄うという形です。上場企業であれば、株主から指摘され赤字路線廃止や朝夕以外の減便要求を飲まされる事でしょう。そうなるとどうなるか?簡単です。利便性が低下する地域では更に若者が出ていき少子高齢化で負のサイクルに陥ります。同族企業とか昔から地域密着で取り組んできた企業でないと、赤字でなければ出来るだけ地域に還元というスタイルを押し通せないでしょう。だって、極めて社会主義的な資本主義経済であり、昭和時代では多かったですが、現代では利益至上主義、売上・利益こそが経営者評価のバロメーター時代に変化しているからです。鉄道やバスも電気・ガス同様、自由に料金設定できません。しかしながら、関西私鉄を例にとると、営業利益率が近鉄5%、阪急阪神10%、京阪13%、南海13%と非常に優秀な数値が並びます。自動車ではスズキの11%が最高ですから、如何に高い営業利益率か解かります。ただし、日本最高の営業利益率を誇るのはJR東海であり、30±5%ぐらいの値を毎年叩き出しています。これは、東海道新幹線というドル箱を持っているからです。親ガチャならぬ路線ガチャと言えるでしょう。例えるなら、不動産をたくさん持っている親から譲り受けたボンボンみたいなものです。そう考えると、東海道新幹線の値下げとか北陸新幹線問題に協力してあげるスタンスでもいいように思えます。完全なる民間企業とは言えない形態ですからね。高速道路の方では本来無料化される東名高速の利益を用いて、地方部の高速道路建設や第二東名建設しています。公益性や受け継がれた元国有資産という点をもう少しクローズアップするべきかもしれません。
同様の事例として注目されるのが電波関連です。テレビ局は公共電波の独占事業形態であり、それゆえ公共の大器と言われます。不動産事業他の関連事業も複数手掛けており、近年は利益率はそちらの方が高いです。昭和時代のテレビに公共性はあったのか?ただの娯楽やスポンサーや政界に与える大きな一巨大民間権力だったのではないかという気もしますが、令和になり行政に近い倫理観を求められるように変化しています。それ同様が電波(周波数)を割り当てられている携帯事業です。認可されているのは、NTT、AU、ソフトバンク、楽天のわずか4社であり、民放に似ている立場だと言えます。最近は、配信コラボ(ネフリ、アマプラ他のセット)・金融セクターの付加価値で儲けるようになっていますが、グーグル等のように独禁で有利な立場誘導や切り分けをいずれ指摘されるようになるでしょう。これらの業種は非常に社会的に与える影響が多い反面、あまり社会性や公共性を意識していません。元公団であった企業や鉄道・バス、電気・ガス等のようにお上にお伺いを料金変更でお願いしなくてよいからだからでしょう。
これだけ格差が広がり、貧困層は増加傾向で日々の生活がやっとという人々が増加すると、エンゲル係数や光熱費+通信費には敏感になります。勿論、内閣(政府)支持率も当然下がります。値上げは仕方ない、適切な利益は必要だという電気・ガス事業者、鉄道・バス会社のような印象を広く国民から持たれているでしょうか?電気・ガスは、政府支援(補助で値下げ)が行われました。もし高い公共性並びに高額妥当と考えられるなら、政府は携帯通信費補助金をぶっこむと思うのです。何でも行き過ぎるとその寄り戻しは大きくなります。資本主義が先鋭化した政府、金儲け主義に走り過ぎた半官半民的企業(公共的役割企業)に関しては、意識改革が必要に思います。それはある意味、話題になっている知事達同様であり、利己的、成果主義が行き過ぎているように感じます。