ロンドンで蠢くヴァンパイアの陰謀
いよいよ対決の予兆が...
「外国の秘密部隊10~15名が綿密な計画のもと一糸乱れぬ連携で事に当たらなければ、こんな結果は残せない。しかし、オランダという国家に対してこのような攻撃を加える国家はヨーロッパにはないはずだ。となると国際犯罪組織か?しかしそのような存在は警察では把握されていない。本来なら運び出された金塊の足取りを追うべきだろうが、12本、通常の鞄に詰めれば4個に収まる。1つずつ別ルートで運べば怪しまれることもない。鉄道の貨物受付でも調べようがない。船も同じだろう。犠牲者の殺害方法は絞殺、あるいは頸椎破壊。鮮やかに一撃で決められ争った形跡もない。む、待てよ。犠牲者はすべて元軍人の猛者たちだ。戦闘のプロだ。それがこうもやすやすと赤子のように殺害されたのだ。となると相手は人間離れした戦闘力を持っている。ヴァン・ヘルシング教授にお願いして検死をやり直してもらおう。何かわかるかもしれない。」
「ご近所の方に聞いたのだけど、この屋敷は事故物件らしいわ。」エイダが言った。
「住人が自殺してその幽霊が出るとか?」カロリーヌが眉間にしわを寄せた。
「なんでも夜中にオオカミが窓を突き破って、そのショックで心臓を患っていた奥様が亡くなって、しばらくして娘さんも謎の病気で死んでしまったとか。」
「オオカミねえ...」ジョアンナには思い当たる節があるようだが、気にはならないようだ。「まあ魔物や幽霊の類いは私たちと似たようなものだから心配する必要はないわ。」
「ジョアンナ様、売買契約書ですが、確認なさいますか?」ワイルドが書類を持ってきた。
「そうね、面倒くさいので長期賃貸はやめて買い取ってしまったのだったわ。見せて。」ジョアンナは書類を受け取ると中身を吟味した。「あ、この名前、記憶に残っている。私の記憶というよりあの男の記憶なのだけれど、ジョナサン・ハーカー、あの男とともにドラキュラを討伐した男たちの1人。事務弁護士なんてやってるのね。たしか妻がいて,名前はミナ。ふーん、なるほどね。」ジョアンナの顔に残酷な微笑みが浮かぶ。「ちょっとみんなを集めてちょうだい。」
ロッテルダム、警察病院、死体安置所。今回の犠牲者はホルマリン漬けにはしないで、最近考案されたドライアイスで低温保存されている。
「どうでしょう、教授?」ムルダー警部はヘルシングの顔をのぞき込む。
「見事としか言いようがない。というより人間業ではない。」
「と言いますと?」
「この頸椎破壊の跡だが、手刀の一撃だ。何か鈍器を使ったものではない。骨折の様相が違う。人間が手刀で頸椎を一撃で破壊できると思うかね?よほどの怪物でもない限り無理だ。だが、複数の死体が同じ手口でやられている。複数の怪物が襲いかかったと見るべきだろう。そのような怪物で私が知るのはただ1つ、ヴァンパイアだ。」
「どういたしましょう?」
「ヴァンパイアが金を欲しがるとしたら、おそらく海外への進出もしくは脱出のためだろう。しかしこうなるともはやお手上げだ。オランダから消えてくれたことを喜ぶしかなかろう。」そう言いながら、ヴァン・ヘルシングは突き止めた元凶のことを考えていた。
「集まったわね。これからロンドンで何をしようか考えていたのだけれど、決めたわ。私を結界の牢獄に30年も閉じ込めたヴァンパイア・ハンターの復讐よ。それもただ本人を殺すのではなくて、彼が愛して信頼したかつての仲間を1人ずつ殺してあげるの。1人ずつ死ぬたびに心が抉られるでしょうね。」
「喜んでお手伝いいたします。」バイロンが進み出た。
「殺すの大好き。」サロメが無邪気に笑った。
「できるだけ複雑な道筋の果ての死を与えることにしましょう。」エイダはすでに計算に入っている。
「対象の周辺にいる人たちも殺して良いんだよね?」カロリーヌはかなり魔物らしくなってきた。
「ドラキュラの敵討ちじゃないのよ。あんな時代錯誤の爺は消滅して当然なの。ドラキュラ討伐のために結成された仲間たちという絆を壊してあの男の心を壊すのが目的です。」
エクスター、ハーカー法律事務所。
「お帰りなさい、ジョナサン。」エプロン姿のミナがジョナサンを迎える。
「ただいま、ミナ、何もなかったかい?」
「あるわ、あなたにニュースがあるの。」ミナは嬉しそうに頬を紅潮させた。
「あのね、きょうハミルトン先生に診てもらったのだけど、赤ちゃんができました。」
「本当か、ミナ!でかした!最高だ!ぼくらの子どもだ!」ジョナサンは狂喜乱舞した。
ここから先は殺戮とバトルが始まります。スプラッター要素は少ないので苦手な人も大丈夫ですよ。




