俺の能力がわからないまま追放していいんですか?~追放されてから使えるようになったスキル「なち」で魔王討伐~
「キリシマアサヒ。貴様は追放だ」
俺を召喚した国の王様からそう言い渡された。その理由は俺のスキル「なち」にあった。山の名前で船の名前のスキルだから、海と山両方で使わせてくれと俺は頼んだ。突然この世界に召喚されて、魔物に侵攻される国を救えと言われたんだ。それぐらいの権利はあると思った。
海から魔王軍が攻めてくるから駄目だという。馬鹿な話だ。
俺は海岸にいる。追放されて海を目指し、漁村にやってきたのだ。最も魔王の領域に近い村だが、村の人たちは俺に優しく接してくれて、寝食と仕事を保障してくれた。
王曰く世界の半分を支配する魔王を倒せば俺は日本に帰れるらしい。そして、この村の人も助かるだろう。「なち」はきっとそれに役立つはず。
そして今、初めて海の近くで「なち」を発動させる。俺は目を閉じて、スキルを発動させるべく強く祈った。
俺の思いに答えてくれ……「なち」
目を開けると、俺の目の前には海原が広がっていた。正確には、甲板と単装砲。俺は、イージス艦なちになっている。なっているんだ。乗っていない。
視点がなちの観測機器のどれかに自由に切り替えられる。自分の手を動かすように主砲や魚雷発射管などの向きが変えられる。
戦闘にならなければ、性能は分からないが、どうしようもない全能感が俺を包んでいる。なぜ俺が「なち」を発動した海岸から若干はなれているのかとかは気にならない。
そういえば、村の人たちがドラゴンとかの話をしていたな。漁船が襲われているとか。恩返しだ。倒してきてやる。
船として移動する感覚は、泳いでいるようで気持ちがいい。
ドラゴンの群れを補足した。一体十数メートルほどのやつが37体だ。今まさに船を襲っている。撃ち落としてやる!
なんだかすごく計算ができる。どこを撃てば当たるか分かる。ミサイルも扱い方がわかる!
一発、一発と狙って134mm主砲を撃つ。対空ミサイルも三発ほど使った。気が付けばドラゴンの群れは海中に沈んでいる。
いける……。なちなら魔王とやらも絶対に倒すことができる。
魔王軍の本拠地に向けて突き進む。魔王は海上に城を立てているらしい。
しばらく進んでも全く疲れない。さすが船だ。そして、巨大な青い建造物が見えてきた。あれが、魔王の城か。
「人間の船が魔王様の城に行こうとはどういうつもりだ!」
大きな海月の女性が、俺に向けて触手を伸ばそうとする。俺は23式艦対艦誘導弾を女性に向けて放ち、爆散させた。人の見た目をしているからか、殺したという実感が伝わってくる。
これは、本当にやっていいことなのか? 俺は今家に帰るためだけに人殺しをしたんじゃないか? 魔王討伐という大義名分を背負っているはずなのに心が痛い。
……もう一人殺した。後戻りはできない!
俺は城の周りを回りながら城に向けて23式の誘導弾を二発打ち込んだ。
城は爆散し、破片が船体に飛び散った。城の中から飛び出す怪物たちを、武装を全力で活用して殺していった。
いつの間にか、戦いは終わっていた。敵は残っていない。俺の勝利だ。そのまま俺は血に染まった甲板を見て、意識が遠のいた。
目を覚ますと、俺は布団の中にいた。なんの変哲もないただの朝だ。日常に戻ってきた。
スマホを探そうと布団から手を出す。その手には、青い液体がべったりとついていた。




