1-9.アルカナ教会-朝ごはん-
私はいつも通り、部屋で目を覚ます。
私は目を覚ましてすぐに歯を磨く。これは私がこの北海道に来る前からの習慣だ。
歯を磨いて、洗顔をして、髪を整える。そしたらすぐに朝ごはんを作る。
他の人たちは一緒に朝ごはんを食べているみたいだが、司祭様が作る朝ごはんは、カロリーが高すぎる。
ただ、一緒に食べないのもどうかと思うので、週一で食べに行っている。
この前はホットケーキを三枚食べさせられたが、
今日のレシピは白米と豆腐とわかめの味噌汁、鮭にブロッコリーとレタスという割としっかりとした献立
私は席に着き、手を合わせようとした。
だが、席に着いた瞬間に部屋にノックが響く。
この時間は加奈も邪魔しないし、他の人は司祭様と一緒にご飯を食べている。
そうなると考えられるのは一人しかいない。
「おい、フォックス俺だ」
...やはりというかなんというか、
「入っていいわよー」
扉を開けてきたのは、昨日私の新しいチームメンバーになった男、ロストだった。
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「君たちにはラバーズを討伐してほしい。そして私達は札幌に拠点を移動する。」
そう司祭様が言う。私としては賛成だ。ラバーズのタロットカード、『恋愛』を奪い取れば加奈もタロットカードの能力を使えるようになる。そしたら化け物どころか、ギルドにも対抗できるほどの戦力になる。
だが、ロストは何か微妙な顔をしている。
「ラバーズを倒すと言っていたな、だがこのタブレットのデータを見るに、体は人間よりもでかく、能力は魅了能力、それ以外の情報が記載されていない」
「そうだね、ラバーズの能力は魅了、ラバーズの身体的なデータを取りに行こうとしたら、それこそラバーズに魅了されて終わりだ」
「それはわかった。だがデータが足りなすぎる。それにこの三人で戦闘したのもたった一回だけだ。
まだ連携が取れない状態でそんな大物に挑むのは難しすぎる」
私は正直驚いた。この男、きちんとそこは考えていたのか、てっきりそのまま直行するとか無茶を言い出すと思っていた。
「もちろん、まだそんなことはしないよ色々準備もあるしね、だからラバーズに挑むのは一か月後、君たちはそれまでにパトロールをして色々練習していてくれ」
「パトロール?」
「それらもろもろは明日説明するわ。そろそろ疲れたから解散しましょ」
時計を見ると、夕方の18時になっている。さすがに座ったまま、この時間までいるのは厳しい。
「わかった。美波、明日も頼む」
...そうだ、こいつにはまだ教えていなかったな。
「ロスト、私達とチームになるってことは教会の一員になるってことだから」
「ああ、それがどうした」
「ここにもいろいろルールがあるってこと。例えば教会に所属している人の本名は言ってはいけないとか」
ロストは少し驚いたような顔をしている。まあそりゃそうだろう。
私も最初に聞いたときは驚いた、それになぜそんな必要があるのか疑問だった。
まあ今はそんなヘンテコなルールがあるで納得しているが、
「なら、加奈と美波のことはなんていえばいいんだ」
「私の事はフォックスって呼んで、加奈の事は...って何をしてるの」
私は加奈の方を見る。すると加奈は手で目を隠していた。
「ああ、失礼、一般人はラバーズの画像を見ただけでも魅了されちゃうからね。加奈君もう目を開けていいよ」
司祭様がそういうと加奈が手をどける。
「私はカードを持ってないから、特別に名前で呼ばれてるんです。」
「そうなのか」
ん?
加奈が少し悲しそうな表情をした気がする。
ロストもそれに気が付いたのか何かを考え始めた。
10秒くらい考えた後、ロストは何かを思いついた顔をして
「なら俺は加奈の事をパラと呼ぶことにする」
そういうと加奈は驚いたような顔をして
「え?」
と小さい声でつぶやいた。
「加奈は俺達の『柱』だから『pillar』という名前だ。まあ嫌なら」
「いえ!是非!呼んでください!」
名前を付けられ加奈は笑顔になる。そんなにうれしかったのだろうか
名前が欲しかったなら私に言ってくれれば
「まあそういうことだから今日は解散しようか、フォックス君、君は今日は私の所で食べに来るかい?」
「いいえ遠慮しときます。司祭様、フライドポテト20人前とか平気で食べさせようとしてくるじゃないですか、いつも通り部屋で作ります」
そういうと司祭様と加奈は残念そうな顔をしている。ロストは不思議そうな顔をして
「みな...フォックスはいつも部屋で食べているのか?」
と聞いてきた。
「ええ、私はいつも部屋で自分で作って食べてるわ。それが何?」
私もロストにそう返す。ロストは納得したような顔をした。
「そうかじゃ、また明日」
「ええまた明日」
そんな挨拶をして、私は部屋を出た。
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「この味噌汁おいしいな」
そんな男がなぜか私の部屋でご飯を食べている。
なぜこの男が部屋に来たか、理由を聞いたら
『チームになるなら一緒にご飯を食べれるくらいにはならないといけないだろう。』
『で、なんで私が作ってるのよ』
『俺が作ろうとしたらフォックスが拒否したんだろう』
『紅茶も知らない人間の料理なんて信用できないわよ』
『なら、俺の分だけ作る。ちょっと待っててくれ』
『はあ、まだ残ってるからいいわよ、ちょっと待ってなさい』
という感じで私が料理を作ることになった。
「てかチームメイトと食べたいなら先に司祭様のとこに行きなさい。あそこには加奈がいるから」
「いや、あれは嘘だ。美波と一緒に食べたかっただけだ」
...
「なるほどね」
私は何も言えなくなって、この後は二人で黙々と朝ごはんを食べていた。