1-5.アルカナ教会
私は今、教会の医務室のベットの横で本を読んでいる。
ベットには、ロストと名乗る人物が寝ている。
一時間おきに3人で交代で彼の見張りをする必要があるらしい。
...この人が王国やギルドの人物の可能性があるかららしい。
私はそうではないだろうと反論したが、決まりは決まりということらしい。
この人は誰かを助けるために行動できる人なのに。
私はただ本を読む。
彼が眠ってから、3日が経とうとしていた。
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いつからだったかは覚えていない。
ずっと俺は人を救おうとした。
助けてという声が聞こえて、
救われたいという願いが聞こえて、
だけれど、たどり着いたときにはもう手遅れで、
でも、たった一回、たった一回だけ、生きている人に出会った。
それは、瓦礫の山、崩れた家の下で見つけた。
足も手もつぶれた少年、
瀕死の状態で見つけて、彼は俺も見て、
「やっぱり...来てくれたんだね、ヒーロー...」
そう言って、眠った。
俺はただ、助けたくて、ただ助けたくて、
彼に盾をかざした。
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15時ごろ、本もほとんど読み終わったときに彼は目を覚ました。
「おはようございます」
私は挨拶をする。彼はびっくりしているようだ。
私が彼の横にいることにだろうか?それともこの場所事態にだろうか?
そんな無駄なことを考えていると、彼が起き上がり
「...おはようございます」
そう言った。
どうやら、状況は飲み込めたようだ。
「体、大丈夫?ロストさん...は3日も寝ていたんですよ」
でかかった言葉を飲み込む。
大丈夫だ、そのこと関しては、新さんが聞いてくれることになっている。
「寝ていた?俺が?」
彼がまた驚いている。無理はない、
彼は見た目的に20代前半くらいだろう。それでこの北海道で生まれたのだ。
こんな危険地帯では普通3日も寝る事なんてないだろうし、
その間にギルドに殺されて終わりだ。
さて、本題だ
「実は、貴方の持ち物を調べさせていただきました。それで司祭様からお話があります」
「そうか、なら案内してくれ」
彼は真顔で答える。...これにも驚くと思ったんだが、
そう彼が言うと、彼は立ち上がる。
「ちょ、ちょっと!」
私は必死に止める。彼は自分が3日も寝ていたという自覚があるのだろうか
「何だ。」
「何だって、貴方は3日も寝ていたんですよ!」
「だからどうした、それに何の問題がある」
「問題って...」
私があたふたしていると、医務室の扉が開く。
そこに現れたのは、美波と司祭、新名様だった。
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私は司祭様を守る。
...私自身は奴が司祭様を攻撃するとは思っていない。
だが、万が一の事もある。ギルドはないにしても、あれくらいの覚悟を持った奴は、王国にはごろごろいる。
それにあいつは、タロットカードを吸収した。
司祭様のタロットカードを吸収する可能性だって...
「君は...ロストくんといったね。僕の名前は新名 澪、この教会の管理人のようなものだ」
司祭様は本を持ちながら話を続ける。
本の間には、タロットカード、法王のカードと彼のカードが挟んである。
司祭様は彼がカードを奪い取ろうとした瞬間に、法王のカードを発動して、
彼を押さえつけるつもりなのだろう。
彼は私達を助けた以上、この教会では客人として、もてなされる。
だが、攻撃した場合は敵になる。牢屋に閉じ込めることができる。
...私は、
「君のポケットから、手帳と、あるカードが見つかった。」
彼が本から彼のカードを見せる。
彼のカードは、見たことのないカードだった。
どのタロットカードでも見たことがなく、
絵柄は、一人の人間が、苦悶の表情を浮かべながら、霧となり消えていっている絵柄、
そして、カードの名前は
「驚いたよ、カードの番号は0、そして名前は、ロスト。君の名前と同じだ」
司祭様はカードを本に挟む。そして自分のカードを見せる。
「本来、北海道にある強大な力を与えるタロットカードはマルセイユ版が元になっているとされ、絵柄も同じ、だが、君のカードは今まであるとすらわからなかったカードだ。
しかも」
彼はロストのカードをかざす。だが、何も起こらなかった。
「今までのタロットカードは、タロットカードが示す意思を持った人間の下に現れるが、そのタロットカードを他人が奪ったとしても使えるものだった。君のは、君にしか使えないようだな。」
タロットカードを本にしまう。
「さて、君に聞きたいのは3つだ」
「君の本当の名前、君の目的、君の能力についてだ」
ロストは、少し考えている。
その間、司祭様は法王のカードにずっと触れていた。
...これで、彼の真実がわかる。
「俺の名前はロストだ、間違いない。俺の目的は、助けを求める人類を救うこと、俺の能力は...説明するのが面倒だ。美波から聞いてくれ」
「ちょ、あんたね、私達に説明した能力ならとっくのとうに話してるわよ」
「なら、なぜ聞くんだ」
「...君、いや失礼、ロスト君の体はタロットカードを吸収しただろう。そっちの能力を教えてほしいんだ」
奴はしばらく考えた後、
「知らん、俺も初めて見た」
と言った。
「...あんたねぇ」
正直呆れる。こいつは、自分がどんな立場か分かっているのだろうか、スパイの容疑をかけられていて、
少しでも暴れたり、嘘をついたりしたら即、牢獄に入れられるっていうのに
「...ふむ、本当のようだな」
司祭様はロストのカードを本から抜いた後、そのまま本を閉じ、彼にカードを渡した。
「ちょ!いいんですか!?」
「彼の発言に嘘はなかったよ。だが、彼は自分の能力を正しく理解してないようだね。
ロスト君、3日間も寝ていたんだし、今日1日は安静にしてなさい。
明日、君の能力を少し調べさせてもらうよ」
そう言って、司祭様は出ていった。私もそれを追いかける。
法王のカードの能力を使って、奴が白だと司祭様が判断したなら、奴は白なのだろう。
だが、こんなに怪しい奴を放っとくなんて、
私は、司祭様を追っかけ、文句を言おうとした。
...だが、心の奥で彼が白だったのを安心した自分に気が付き、
なぜかはわからないが、質問するのをやめた。