2-8.アルカナ教会-子供と大人-
僕はいつも教会で本を読んで過ごしている。
本は素晴らしい、暇な時間をつぶしてくれるし、同時に賢くもなれる僕のお気に入りだ。
それにしてもこの一週間は楽しい事ばかりだった。
謎のアルカナカードを持つ者が現れる。それに美波がその人に惚れて、加奈は疎んでいる。
まるで一昔前に見た少年漫画のような展開だ。こういうのを待っていたんだ。
ゲームができなくなり、紅茶もクッキーも食べられなくなったこの世界では、娯楽が外出と本しかない。だけど、僕の『法王』の能力と立場的にここを離れるわけにはいかない。だから外出もなくなる。
そんな中で現れた彼だ、そりゃ楽しみになる。数少ない娯楽がやってきたんだから、
「...だが、彼の持つカード、0のロストのカード...」
あのカード、0は元々は愚者のカードの番号のはずだ。それがなぜロストのカードになった...?
大アルカナの化物との戦闘...そして飲み込まれたカード...翼をはやした天使...
「...ははっ、素晴らしい」
奴...ロストの能力は遠距離攻撃への絶対防御能力、触れたものを消す能力...それが真実だというのならば、カードが吸収されるなど不自然だ。
あいつには何か裏がある。そして、それを隠している...
...それがとても面白い、これからも観察させてもらうよ。ロストくん。
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まったく、なんなんですかね、美波はそんなに彼がいいんでしょうか、確かにイケメンですし、体格もいいですが、そういう人間ほど、信用ならないものなのです。
『私は騙されてるのかもしれない。家族に、兄に騙されたように、でもあいつの顔はただ優しくて信じたくなったの』
...何が信じたくなったですか、そういうことばかり言ってるから、すぐに騙されるんですよ。
「...荒れてますね、加奈君」
「...司祭様」
「あれ?新さんって呼んでくれないんですか?」
...気が付けば私は、教会の告解室まで来ていました。
この時間、告解室にはいつも新さんがいます。なぜかと聞くと、狭い空間は本を読むのにぴったりだからと言っていました。
「聞いてくださいよ!美波がまた騙されているんです!」
「誰に?」
「ロストさんにですよ!彼、能力を隠していたんです!彼の能力は遠距離攻撃の絶対防衛能力だと思っていました!でも、彼は『運命の輪』を討伐できるほどのパワーを持っていたんです!しかもその能力を話さないんですよ!こんなに怪しい人物を...美波は信じるって...」
「なるほど、で?3人と真剣に話し合ったのかい?」
「それは...」
...でも、あんなに怪しい人と話し合っても、解決なんてするはずがない!一刻も早くあいつを
「加奈君、君は今、感情的になって説明ができてない」
...新さんは落ち着いた声で私に話しかけます。この声は知っています。私を叱るときの声です。
「君は怒りに身を任せて、自分の意見を一方的に話し、共感を求めている。それじゃだめだよ」
「...でも」
「いいかい、君は討伐隊の司令塔になる人間だ、そんな人間が感情的になったらダメだよ、彼にも言い分があるかもしれないし、そもそも私は君たちが『運命の輪』に接触したという事実も知らなかった。報告より君は自分の感情を優先したんだ、女性が共感を求めるのは仕方ないことだけどこの世界でそんな事を優先していたら、命がいくらあっても足りないからね」
「...はい、すみませんでした」
「いいんだよ、君たちは子供で、それを守り成長を手助けするのが僕の役目だからね。それで、まずは『運命の輪』の事から教えてくれるかい?」
「わかりました」
...この人はいつも私の目を覚まさせてくれます。でも、今回だけは納得がいきません。
結局、私は中学校であったことを報告し、部屋に戻りました。
彼の事は信用できません。私はなんとしても彼の正体を暴いて見せます。
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「あれはダメそうですね」
彼女は感情的になってしまっています。子供に諭してもあまり効果はありません。
怒りを抱いている時は視野が狭くなってしまいます。大人はそれをコントロールできますが、彼女はまだ子供、コントロールできる域まで行っていません。
ですが、ロストに怒りの感情を向けられたのは、好都合ですね。
「彼は大アルカナを使える資格を持っている...彼は必ず、加奈君と向き合おうと努力をし始めるでしょう」
そうすれば、加奈君は、精神的に成長できる。そして、自分の役目を理解し、このカードを取りに来るでしょう。
彼女はまだ、『正義』に理想を見ている。その理想が取り除かれ、現実を理解した時、彼女は誰よりも、強いヒーローになれる。
「...成長が楽しみですね。加奈君」
私は、経典を開き、私が持つ4つのカードのうちの1つ『正義』の大アルカナを取り出した。