2-6.小樽市最上-帰り道-
私は駆け足で美波が行った方向へと向かいます。
美波は教会に向かっていると思ったが、校門の前で待っていた。
「美波、先に行ってると思ってた」
「加奈があんなに感情的になるの珍しいからね、何かあったのかなと思って」
やはり美波はみんなの事をよく見てくれている。
「...美波、ロストの事、本当に信じるの?」
「さあね、でもチームなんだから信じる信じないじゃなくて連携しないといけないのよ」
「連携しないといけないというけど。でも彼は疑わしいものが多すぎる。正直チームを組むのは反対です!」
「最初に協力しようと言ったのは加奈でしょ?何が不満なの?」
「それは...あの人、一度大アルカナ使いを捕まえているんです」
そう聞くと、美波は驚いたような顔をしました。
「そう、大アルカナ使いを...」
「あの人の攻撃力はE、大アルカナ使いの変身を解除できるほどの攻撃力はないはずです。なら彼は大アルカナ使いを捕まえられたのか」
「そこら辺も聞いておけばよかったわね、あいつの能力は知ってるからって聞かなかったし」
そういうことじゃないのだ、ロストは私達が知らない事実を隠してる気がしてならないのだ。
「でもね、あいつは大丈夫よ。そんなことする奴じゃないわ」
「何の根拠が...」
それに、この三日で美波とあそこまで仲良くなるのも妙だ。何か精神を操作するような能力を持っている可能性が
「大丈夫よ」
「だから何の根拠があってそんなこと言ってるの!」
私は強く、そういった。彼女が騙されているかもしれない。目を覚まさないとと思ったから、でも彼女はただ私の目を見ている。諭すような顔で今まで見たことないような優しい顔で
「あいつはね、私をプールで助けたとき、すごく優しい顔をしたの」
優しい顔...?そんなの誰でもできる。その顔をわざと作ってたかもしれないのに、
「私は騙されてるのかもしれない。家族に、兄に騙されたように、でもあいつの顔はただ優しくて信じたくなったの」
信じたくなった?
「そんなの!貴女がただ依存先を探してるだけでじゃないですか!」
...はっ、私は言ってはいけないことを言ってしまった。私は急いで美波に謝ろうとしました。だけど、彼女の顔はただ変わりませんでした。悲しそうな顔も怒った顔もしてません。ただ諭すような顔です。
「確かに私、ずっと失敗ばかりで、もう失敗しないように考えないようにって思考を停止させようとしてたわ、でもねそれはもうやめたの、『依存させたら救えないから』って言われちゃったから、私は自分で考え行動し続けるわ。仲間を信じてね」
...なんなんですか、彼女は誰ですか、今まで私と行動していた期間は彼女はまるで猛獣で手を付けられなくて、そんな私が憧れた彼女はどこ行ったんですか。
「...私、美波の考えがわからないです」
そう言い残して、私は美波を置いて教会に歩き始めました。
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『会議終わったね』
「ああ」
俺はただ話しながら廊下を歩く、中学校というのは結構広くて迷いそうになる。
『でも、今後の方針とか決めなくてよかったの?』
「あいつは、加奈は俺の事を警戒していた。そんな時に何か言っても火に油だ」
『ははっ、それはそうだ』
俺はただ廊下を歩く、加奈は俺の事を警戒していた。尋常じゃないほどに、まるで初対面の時の美波みたいだ。まあ仕方ない、俺はあの時、運命の輪を倒した時の方法を教えなかった。
何かを隠している人間を信用する人間なんていない。
『運命の輪は心を読む能力だ。運命の輪を逃がした以上、切り札となる新たな能力については説明しなくていいって事でいいんだよね?』
「ああ、すべてが終わったら説明する」
運命の輪ともう一度戦うことになる以上、切り札は知らないほうがいい。もしも私が新たな能力の事を知ってしまったら、すぐさま対応されて二人を救えないし、最上町の住民たちも危険に晒すことになる。ならば、少しでも対応が遅れるように、その場で判断し色々試してみるほうがいい。
『ほぼギャンブルだね、でもボクはそういうの好きだよ?』
そう■■はいつもと同じ楽しそうな声で言った。そうこれはギャンブルだ。だが、ギャンブルをしなければ倒せないほどあの運命の輪の能力が強力だ。
『それにしても本当に失礼な人だね!ロストは命を救ったのに!あんなこというなんて!』
今度は子供のように起こり始める。ここまで感情が豊かな■■は始めてみた。
いや、今まで人間と接してこなかったから、そういう感情を出す機会がなかっただけか。
「救った人間を無条件で信用する方が無茶だ。普通の人なら、裏があると考える」
『でもひどいよ!』
■■はまだ怒っている。ただ別にいい、俺はただ救いたかっただけだ。かんしゃされたかったわけじゃない、ただ目の前の人を
「...あれ?」
突然足に力が入らなくなり、その場にしゃがみ込む。顔からは大粒の雫が流れていた。
感情がこみあげてくる。今まで知らなかった感情。今までわからなかった感情。
「救えてよかった...二人を救えてよかった...」
それは、喜びだった。俺は心の底から、涙が出るほど喜んでいた。
よかった。よかった。
ずっと救いたかった。ずっと救えなかった。たどり着いても死体になっていて、生きてる人間も救えなくて、でもやっとやっと
「俺は、救えたんだ...やっと救えたんだ...」
俺は泣いていた。ただ泣いていた。静かに、ただ心に身を任せ、
今日俺は初めて、人間になれた気がした。