2-5.海波中学校-確認-
私達が中学校に入り、とある教室へと入りました。
教室は案外綺麗で机が10個並んでいました。
「さてと、会議を始めましょうか」
美波が机にすわる。なんというか、さっきはしっかりしてると思ったんですけど、こういう所は変わらないですね。
「と言っても何から話したらいいのかしら、まず聞きたいこととかある?ロスト」
「じゃあまずは、加奈のドローンの事を教えてくれ。この前パトロールで使ったものではなく、その変な形のドローンだ」
ロストは私が手に持っていた戦闘用のドローンを見ています。正直、あまり教えたくないんですけど、チームなので仕方ありません。
「これは戦闘ができるドローンです。このドローンは起動すると操作している人間の周りを飛び回り、私がこの眼鏡越しに3秒見た人間を攻撃してくれます。大アルカナ使いには効きませんが野犬を倒すことはできますし小アルカナの化け物も少しひるませることができます」
「何で攻撃するんだ?」
「9mm弾というハンドガン用の弾ですね」
「9mm弾...?」
ロストは心底不思議そうな顔をします。それはそうです。この島北海道では銃なんかとは比べ物にならないほどの力を人間に与えるタロットカードがあります。まだタロットカードが見つかったばかりの頃は銃も使われていたらしいですが、今はあまり使われていません。そもそも外部との連絡手段がないから銃が規制されていた日本では玉の補充は困難です。なので、この国、北海道で生まれた人間は銃の事を知らない人間が多いのです。ロストに限ったことではありません。
「ハンドガンっていう武器がありまして、いうなればタロットカードを持たない生物向けの中距離での戦闘用兵器です。このドローンはハンドガンの機能を一部追加したドローンで装弾...と言ってもわかりませんよね、ハンドガンは補充なしで6発撃てますが、ドローンは一発しか打てません」
「なら素直にハンドガンを持っていた方がいいんじゃないのか?」
「この日本ではかなり古くから銃の制作や輸入は禁止されているんです。アルカナの北海道戦争で警察官も全員撤退してしまいましたし、その戦争から20年は経っているので今見つかっても使い物になりませんよ」
「ふむ...色々あるんだな」
「それに、このドローン自体も合計で3台、今教会が所有している9mm弾の合計は152弾、すぐ減るって量ではないですけど無駄遣いできない量です。だからこのドローンを使うのはあくまで非常用です」
このドローンは2030年頃に政府が自衛用に機密で作ったドローンだ。この小樽で見つかったのは3台だけ、札幌にいければまだあるだろうがそれは敵の手に渡っている可能性がある。
「わかった。次に美波、タロットカードの能力表について教えてほしい」
「いいわよ、というか細かく説明しなくてごめんなさいね」
そういうと美波はポケットから自分の小アルカナの能力表を取り出します。
美波の能力は、攻撃力B、近距離の防御力C、遠距離の防御力E、スピードB、持久力Eと書いてあります。
「この五つの能力だけど、基本的に一般人レベルが全部Eとかんがえなさい。そして小アルカナを使う人間が五つの能力全部合わせて5で割ったらDになるようにできてるわ。で、小アルカナの中でも数字が大きいものや『キング』や『クイーン』などの名前を持ったカードを持っている人間はCランク、大アルカナを持っている人間はBランクになるわ」
「なるほど、だから美波のステータスは大体Cランクに近いのか」
「そっで、あんたの能力がこれね」
次にロストの能力表を出します。攻撃力E、近距離の防御力C、遠距離の防御力S、スピードC、持久力Sと書いてあります。
「あんたの場合、全部合計して5で割ったらBが近くなるでしょ」
「確かにそうだな、だが一般人並みのスピードしかない俺がスピードCなのか?」
「ここに持久力ってあるでしょ、これは運動の体力の話じゃなくて、どれくらい攻撃を食らったら能力が解除されるのか、能力が解除される難易度...説明が難しいわね、どれくらい無茶をしたら能力が解除されるのかを検証したものなのよ。人間でいう運動での体力はスピードの方に割り当てられてるわ。あんたは走るスピードは一般人と変わらないけど、2時間くらいグラウンドで同じスピードでぐるぐる回れてたからCってことよ」
「なるほど」
「次に防御力なんだけど、これは純粋にどれくらいで倒れるか、基準としてはDランクで9mm弾に余裕で耐えられてCランクで小銃の攻撃を余裕で耐えられる...って言ってもわからないわよね、ダメージを軽減する能力値よ。攻撃力は...相手にどれだけ攻撃を与えられるか、ただここのステータスだけインフレしてて、これ見て」
美波はポケットからロストのものでも美波のものでもないステータス表をだす。
攻撃力C、近距離の防御力E、遠距離の防御力不明、スピードE、持久力Bとかかれてあります。
「これ誰の表でしょう」
誰の表...?イレブンさんたちの部隊の表でしょうか?ですがそれなら不明と書かれてあるのは納得が
「メイジか」
ロストさんがそう言います。メイジ、昨日戦った遠距離の攻撃を使う化け物でしょうか
「正解、あいつにめちゃくちゃ苦戦したけど攻撃力はC、私吹っ飛ばされてあなたも重傷を負ったのにC、正直おかしいと思ったけど、これがあいつの評価なのよ。話によれば私達3人が最初に戦った。あの天使の推定攻撃力は『B』、Sじゃない。この表は今まで司祭が見てきた化け物を元に作られている。つまり、メイジをもろともしないくらい、やばい攻撃力を持った大アルカナ使いがいたって事」
あの天使がB?いやあってもAでしょう。ビルを一瞬で崩壊させ光の矢を放った天使がBランク?正直信じられません。
「つまり、このステータスの中で攻撃力のみ基準が跳ね上がってるということか」
「そういうこと、だから気をつけなさい。私達は大アルカナの討伐チーム。このさきあの天使よりも強い奴が現れるかもしれないから」
正直恐ろしいですが、攻撃力がSの大アルカナカードを手に入れたら、この教会は誰にも負けない組織になる。
「こんなところね...で、あと聞きたいことは?」
「そのもう一つのチームの事について教えてほしい」
「ああ、大した奴らじゃないわよ、私達がしているパトロールや調査をしてくれるチーム、裏方と言えばいいのかしらね」
...あの三人が裏方?正直三人のうち二人がなんというか、
「ま、イレブン以外感情で動く馬鹿野郎たちだけどね、ただあいつらがいるから私達が成長できてるところもあるから」
「...?わかった」
多分ロストはわかってないんでしょうね。ただ、今そのチームのやらかしを知っても意味がないと思ったのでしょう。あるいは教会についたら嫌でも会うからでしょうか。
「ま、こんなものでしょ、それぞれの役割についてはもう話してるし」
「ん?俺の事についてはいいのか?」
「あんたの能力は細かく聞いてるし、いいでしょ、ほら行くわよ」
美波は立ち上がり、教室を後にする。
「ロストさん、色々聞きたいことはありますが、後にします。ただこれだけは言っておきます」
私は攻撃用ドローンを飛ばす。
「貴方が敵なら、全力でつぶすから」
「俺は目の前の人間を救う。ただそれだけだ」
ただそれだけ、ただそれだけロストは真顔でそう言った。