表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロスト~異能バトルや戦争でタロットカードは何を見る?~  作者: 柏崎カナタ
2.小樽市、ラバーズ討伐編
17/26

2-3.運命の輪

「ねえヒーロー」

ボク達は話している。この空間で、真っ白にも真っ黒にも見えるこの空間はヒーローがボクに与えた救いだった。

「なんだ」


ヒーローはボクに返事をする。ボクにはヒーローの姿は見えない。ボクはただ無の空間に話しかける。

ただ、ボクは嬉しかった。ボクのヒーロー、ボクだけのヒーロー、その人と会話ができるのが、嬉しかった。

ボクのヒーローの手助けができるのが、嬉しかった。

『ん?なんだあれは』

「どうしたの?ヒーロー」

「ドローンが見える。だが、何かおかしい」

「何がおかしいの?」

「ドローンっていうのはプロペラというものが動かないと飛ばないんだろ?」

「うん、そうだよ」

「動いてないのに飛んでいる」

最近ヒーローが色々な人と交流するようになった。複雑な気持ちだったけど、ヒーローはやっと一人救えたと泣いていた。だからボクも嬉しい。それに色んな事を喋ってくれるようになったから、ヒーローとの時間は今より増えているそれも嬉しい。

「そう、じゃあ災害が来たのかもね、どうする?マイヒーロー」

「知っているだろう」

ああ、知っている。だから聞かせて、マイヒーロー

「俺はいつだって、救える人を救うだけだ」


_________________________________________


俺は走る。待ち合わせの時間に丁度行こうとしていたのが間違いだった。

俺は急いで美波に連絡を取ろうと通信機を起動する。だがつながらない。

『天使の時も同じことあったよね、大アルカナが近くにいると通信機が起動しなくなるのかな』

「そうかもしれないな、急がなければ」

俺が校門までたどり着くと、空中に固定されていたドローンが落下する。

『あれ、運命の輪のカードだね』

「運命の輪?」

『確か今の子の能力は、対象をその場に固定する能力だったはず』

「固定?」

『その場に固定するんだ。固定された人間や物は世界に干渉できなくなる。老ける事も歩く事も考える事もできなくなるんだ』

「なら急がないとな」

校門から校庭に移動する。そこには固定された加奈と青い炎に包まれた人間が立っていた。

「あれが運命の輪を持った少年か?」

「ああ、僕の事?よく気が付いたね」

「お前意識があるのか」

声的に13歳くらいの少年か、大アルカナのカードを持ってよく意識を保っている。

「お兄さん、あのお姉ちゃんのお仲間さん?」

「今はそうだ」

「...そうなんだ、正直なんだねお兄さん」

少年の左手は加奈に向けられている。多分、手を向けた人間や物を固定するんだろう。

『まだ確定してないけど、手を下げられたら解除できるかも』

(なるほど、手を降ろせたらいいんだな)

俺は足に力を入れる。すると地面から黒い霧が出現する。

黒い霧に俺が完全に包まれると、いつものあの姿に変身する。

少年はすぐ俺の方に手を向ける。

「固定しろ!<ホイールオブフォーチュン>!」

そうして、俺に能力をかけようとしたのだろう。だが、俺には効かない。俺は世界から追い出せない。

「...お兄さんの中から別の誰かの声が聞こえる。能力も聞かないし、お兄さん、何者なの」

「さあな、考えたこともない」

『やっちゃって、マイヒーロー』

俺は右手の甲を盾に変え、正面から突撃する。メイジ戦でもやった戦術だ。

だが、少年はそのまま盾を殴りつける。その瞬間、盾は右手の甲へと戻る。

「お兄さんの盾、生物が触ったら元の形に戻っちゃうんでしょ?お姉ちゃんから聞いたよ」

「そうか、なら肉弾戦だな」

俺は思いっきり殴りつけようとする。だが、少年は一瞬でその場から消える。

「お兄さん、肉弾戦は雑魚でしょ、動きで丸わかりだよ」

後ろから声が聞こえ、振り返ろうとした瞬間に殴りつけられる。

3mほど吹き飛ぶがすぐ持ち直す。身体能力は美波よりは低いが俺では敵わないな

「そうだよ、だから諦めたら?そんな力のお兄さん達がラバーズを倒せるわけがないからね」

「お前、何処でその情報を手に入れた」

「さっきも言ったでしょ、お姉ちゃんが教えてくれたよ」

加奈が教えた?固定した人間の情報を除く能力が付いているのか、

『いや、多分彼心を読む能力を持っているね』

心?

『ほら、彼ボクの事も認知してたから、マイヒーローの心の声も聞こえてるんでしょ?』

ああなるほど、なら厄介だ。こちらの弱点や情報がそのまま筒抜けになるんだから、

だが、彼女が戦闘中にそんなこと考えるだろうか、何か妙だ。

「ほらお兄さん!よそみしないで!」

俺が考えていると、次は横からけりを入れられる。今度は20mほど吹き飛び、地面に思いっきり叩きつけられる。

『マイヒーロー!これを使って!』

目の前に真っ黒いカードが現れる。空中に浮いたカードには『ロスト』と名前が書かれていた。

「それがやりたかっただけだろ」

『へへ、やってみたくて、ダメ?』

「ダメじゃないよ、相棒」

俺は『ロスト』のカードを思いっきり殴りつけた。その瞬間、カードから赤い霧が出現する。

その霧はどんどん広がり、校庭を包み込んだ。

「な、なんだ!?」

あいつは俺の中からもう一つ声がするといった。そして今までの情報をお姉ちゃんから教えてもらったとも、ならば、あいつは相棒の声は聞こえていても、相棒の心の声は聞こえていない。

それなら、相棒がしようとしていることに俺は合わせればいい。

なら、戦術は読まれない。

赤い霧が晴れる。周りを見渡すが、何も変わっていない。

『変わってるよ、自分の体を見ていて』

自分の手を見る。すると、黒かったはずの腕は白色に変わっており、手の甲についていたガラスは赤いカラーが入っていた。

「これもしかして顔のガラスも赤くなってるのか」

『ええー!そんな感じになったの!?見たい!見たい!』

そういえば、見れないんだったか、今度どうにかして見せてやろう。

「...お兄さん本当に何者なの?」

『ボクの!ボクだけのヒーローだよ!』

「ヒーロー...」

少年は何かを考えている。俺はいつも通り左手の甲の鏡を盾に変えようとした。

だが、変わらない。なぜか変わらない。

「なんだ、変わらないんだ。なら雑魚じゃん!」

少年は俺の方へとまっすぐ走ってくる。そして目の前まで来ると、俺の顔に向かって思いっきりパンチをする。だが、少年は気が付いていない。今までの俺はその動作すら見えていなかったことに

『やっつけて!マイヒーロー!』

俺はしゃがみパンチを回避する。そしてそのまま、少年の腹を思いっきり殴った。

「がは!」

少年が20mほど吹き飛ぶ。地面に叩きつけられる様は、まるでさっきの俺みたいだ。

少年の姿が人間に戻る。俺は歩きながら少年に近づく。

『あ、一応元の姿に戻ったほうがいいよ、ほら、胡散臭い人が見に来るかもしれないし』

「それもそうだな」

俺は足に力を入れる。するとまた地面から黒い霧が出て、元の黒い姿に戻った。

少年はまだダメージから動けないでいる。

「俺は君も救いたいんだ。そのカードは子供が持っていると暴走するかもしれない。俺に渡してくれ」

「げほげほ...いやなこった。これは僕達の希望なんだ」

「仕方ない。奪い取るしかないな」

俺は少年の首をつかみ持ち上げる。

「お前!なんなんだよ!離せよ!」

俺は次は一般人並みの力でおなかを殴ろうとする。だが、

「ロスト...?」

彼女、加奈が目を覚ましてしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ