2-2.小樽市最上-グラウンドにいた子供-
簡単なパトロールが終わり、グラウンドに来ました。
午後1時にパトロールが終わり、新さん達と昼食をとり、ドローンや機械の表を用意し、表に書いている機械を一体ずつ用意して、集合時間の10分前に来ました。
準備するものが多かったので、さすがに私が一番最後に合流するのかなと思ったんですけど、グラウンドには誰もいませんでした。
また二人で昼食でも食べてるんですかね。
仕方ないので、持ってきたドローンや警備ロボを調整します。
私が使えるロボットは3種類あります。
1つ目がこの無人ドローン、タブレットでルートを指定することで、1週間そのルートを監視してくれます。
教会にあるのは30台ほどですが、その内10台が町全体の監視に使われていて、10台が予備として保管されてます。なので私が使えるのは10台になります。
2つ目が犬型の警備ロボ、これは壁を認識するまでまっすぐ走り、壁があったら引き返すというシンプルな道具です。これもアプリで位置を判断できます。このロボットが変なところで引き返したり、GPSの反応が消失したらその場所を探索しに行きます。正直ドローンより断然使い勝手いいです。
そして3つ目が、
「お姉ちゃん、こんなところで何してるの?」
機械の調整をしていたら子供に声をかけられました。
子供の声がした方を向くと、髪は青色で白いパーカーを着た。身長が140cmくらいのちょっと不思議な子でした。でもこんな子いましたっけ?
私はとりあえず、子供に目線を合わせて
「こんにちは、見たことない子だね、どこの子?」
と聞きます。普通の子ならすぐに答えられるんですが
「僕はこの街に住んでいるただの子供だよ」
「そうなんだー、町のどこに住んでるのー?」
私は急いでナイフを取り出します。この子はすぐに答えられませんでした。
なら、敵である可能性が高いです。ラバーズは色々な生物を虜にして奴隷にしているという噂もあります。この子がそれではない可能性も少なくありません。
今はロストも美波もいない状態、ならばここで刺し違えてでも殺します。
「僕はこの先の大学に住んでるよ」
「そうなん、だ!」
私は子供にナイフを投げました。この子はこの先の大学に住んでいると言いました。
恋科大学は化け物がうじょうじょいる状態なのにです。ならば、この子供は敵です。
私は急いで3つ目のドローンを起動させます。このドローンは操作している人間が見ている人間に自動で攻撃してくれる自衛用ドローンです。9mm弾を一発だけ飛ばすことができるドローン。それをタブレットで起動させる。
子供の方を向くと、ナイフを二本の指で受け止めている。
私は急いで眼鏡をかける。この眼鏡はいわばドローンの操作装置、この眼鏡で対象を見て、『撃て』と言ったら撃つ。そういう仕組みになっている。
「今度は逃がさない」
「お姉ちゃん、戦闘中は口調が変わるんだね。そっちが素なの?」
子供の発言を無視し、子供に狙いを定める。パトロールが終わって油断していた。
だが、悔やんでも仕方ない。
「撃て」
私はそういうと、ドローンから一発の弾が発射される。子供は先ほどと同様に手で受け止めようとする。
だが、弾はそんな少年の手を貫通し少年の首に命中した。
少年はなんでもなさそうな顔で倒れる。私は急いで投げたナイフを拾う。そして少年から5mほど離れた場所で様子を見る。
あの少年は、まだ死んでいない。絶対に、首を撃ち抜かれてあんな顔ができるはずがない。
私の予想は的中し少年のパーカーのポケットからカードが一枚出てくる。
『WHeel Fortune』...運命の輪のカード、それが現れた瞬間、床に何かが出現する。
黒い輪、どす黒いオーラを漂わせた輪は少年を囲むように出現し、少年を飲み込んでいく。
「平和ボケしちゃってるんじゃないの?『ラバーズ』はすぐそこにいるってのに」
少年が立ち上がる。いや、飲み込まれた少年はもう少年ではなかった。
少年は全身が青い炎に燃やされている。まるで聖火のような炎は綺麗にも見え、恐ろしくも見えた。
「貴方何者?大アルカナを持った子供なんて聞いたことない」
「僕の正体なんてどうでもいいよ。お姉さん『ラバーズ』の討伐チームでしょ?」
「自分の正体も言わない人間に教えるわけないでしょ」
...待ち合わせ時間まで後5分、それまで何とか時間を稼がないと、
「へぇ、待ち合わせの時間まで後5分ねぇ」
...なるほど心を読む能力、ならもう
「話すのは無駄ね」
無人ドローンを1体、警備ロボを一体起動する。そして二つを逆の方向へと移動させる。
そして、私も逃げる!これで、近くまで来ている2人が気づけば、二人が戦ってくれるし、私が逃げ切れば3人で迎撃できる。
「へぇ、なるほどね。でもさ、全部壊されたら終わりだよね」
少年は左手をドローンに右手を警備ロボに向ける。その瞬間、ドローンも警備ロボもその場で停止した。
何が起きたかわからない。だが、動かなくなってしまった。
何が起きている?わからない。警備ロボはともかくなぜドローンは空中にいるのに停止している?
「お姉さんが知る必要はないよ」
少年が左手を降ろす。するとドローンは落下した。
対象をその場に固定する能力か?いや確証が持てない。
「お姉ちゃんは知らなくていいことだよ」
そういうと今度は私の方に左手を向ける。
「じゃあね、お姉ちゃん」
その瞬間、私の世界は暗転した。
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「は!」
意識が戻る。目の前の景色は変わっていない。
何をされた、何が起きた。
「お前!なんなんだよ!離せよ!」
私は少年の声がした方を向く、そこには人間の姿に戻った少年と、その少年の首をつかみ、持ち上げているロストがいた。




