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1-12.小樽市緑-『聖杯』の『メイジ』戦-

その瞬間、メイジも手を伸ばし、そして、子供に向かって炎を放つ。

「Purge the innocent, salvation for the guilty.」

メイジが放ったその言葉を合図に、戦いが始まった。

直ぐ子供の方を見る。子供がいた場所には小さな鏡のドームができていた。

ロストはどうやら間に合ったようだ。ただここからどうするか...

メイジが手を降ろし、こちらを向く。

「おい、聞こえるか」

ロストから通信が入る。応答したいところだが、

「それどころじゃなさそうね」

メイジがこちらに向かって手を向ける。

その瞬間、私は横に向かって走り出す。あの炎が飛ばされる。

私はプールの周りを走り回る。あいつの炎は子供の位置まで一直線で向かってきた。

だから移動していたら当たらないと思っていた。だが、

私の予想は外れた。

「炎が曲がってきてる!?」

あれはどんな原理なんだ?自動追尾か?それとも空中で操作しているのか?どちらにしても不味い。

炎は着実に私の方へ向かってきている。このままならいい。追尾してくるのだったら私のスピードならば当たることはないだろう。

だが、奴は移動している私に手を向け続けている。

「このままだと、また放ってくる!」

「美波、応答しろ、今どんな状況だ」

ロストからの通信が入る。大丈夫だ、子供が撃たれてから私に撃ってくるときもラグがあった。

まだ撃てないはずだ。私はマイクをonにする。

「ロスト、聞こえる?」

「やっとつながったか、そっちはどうなってる?」

「子供を襲った炎にプールの周りで追尾されてるわ。そっちは?」

「ドームの中で大人しくしてる。子供はずっと泣いていて話を聞いてくれない」

...こいつダメだ、多分、子供の扱いがわからないんだ。

「大丈夫、なんとかなる。一か八かしかないが...」

「おい!大丈夫か!美波!」

「ロスト、私が合図したら、ドームを解除して子供を連れて一旦避難して」

あの骸骨が炎を撃っていたタイミングで私が空に飛び、炎が飛んだ私に向かって集中してる間に子供を逃がせばいい。問題なのがあいつのスピードやパワーが一般人並みなことくらいだが、あの防御力ならんとかなるだろう。

「美波、加奈と連絡を取ったほうが」

「いや、私達はここから300m離れた位置から走ってきた。私達の通信機の受信範囲は半径150mだから、加奈が合流するには時間がかかる」

「...というか加奈も危ないじゃないか!」

「ああもう!あんたが突っ走らなければこんなことになってないのよ!自覚しなさい!」

ダメだ!初めて一緒に行動して分かったが、ロストは後先考えずに行動するタイプ...体が先に動いてしまうタイプだ。なんでこんなに似てるところが多いのよ!

そんなことを考えていると、いきなり背筋が震える。慌ててメイジの方を向く。

これは

「来る!」

メイジの周りに11個の火の玉が現れる。

そして、私に向かって放った。

(問題はクリア、あとは)

私は空に向かって思いっきりジャンプする。ジャンプした私に火の玉が付いてくる。

「ロスト!」

私はロストの名前を呼ぶ。その瞬間、ロストのドームが解除され、子供を連れてプールの外へ出ようと走り出す。

そうだ、それでいい。このまま外へ連れ出せたら、なんとかなる。

だが、ロストがプールから出ようとしたその瞬間、火の玉は一斉に止まる。

「...え?」

その瞬間、自分がまた判断ミスをしたことを理解した。

ロストと子供はプールサイドに上がったところに22個の火の玉が飛んでくる。

「危ない!」

そういった時には遅かった。火の玉はロストたちの目の前にまで迫っていた。

火の玉が地面に当たり、また煙が舞う。

「同じだ...」

私はいつも判断ミスをする。何も考えずに命令して、人の命を無駄にする。

何回繰り返せばいい。慢心も大概にしろ。私は何のために加奈と組んだんだ。自分で考えずに行動するためだろ。なのに、何回も自分で勝手に行動して、人の命を無駄にして...

煙が引いていく。そこには




子供の死体はなかった。



「え...?」

子供にロストが覆いかぶさっている。あの一瞬でに盾が出せないと判断して子供に覆いかぶさったっていうの?ロストは少しよろけて立ち上がる。そうすると、子供の首根っこをつかんで、

道路へと放り投げた。

「え?」

子供は泣き止み、ただロストを見ている。

「町に戻ってくれ、明人、そしてもう危険なことはしないでほしい」

そう力強い声で子供に言う。

(あの子の名前、明人っていうんだ)

状況が飲み込めず、そんな無意味なことを考えていると、

子供は最上に向かって歩き出した。

「さてと」

ロストはメイジの方へと向く。メイジもずっとロストの方を見ていた。

「俺は君も助けたかった。だが、お前を殺さないとあの子供が死ぬことになる」

ロストは左手の鏡を盾に変える。

「Purge the innocent, salvation for the guilty.」

メイジもそう唱え、再び火の玉を11個生成する。

「だから、君を救うことは諦めることにする。勝負だ、メイジ。全力でかかってこい」

そう宣言した彼は、私の目にはヒーローに見えた。

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