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1-1.狐と■■■

「ここが小樽東病院ね」

訪れたこの施設は、不気味な雰囲気を醸し出してきた。

私達がこの施設に来たのには、かなり強い化け物が病院に現れたからだ。

「で、どんな化け物だっけ」

「一人が天使のような見た目の化物です。ですが顔が見えなかったみたいですね」

「大きさは?」

「遠目で確認したのでわからないらしいです」

「小アルカナのカードを持って能力が制御できなくなった人間の可能性が高いわね、一人で行動してるのを見ると8~10くらいかしら」

小アルカナのカードを持っていてそれを奪い取れるならラッキーだ。

私だけではなく、毎回私に同行してくれているこの子にも能力を使えるようにすることができる。

「で、もう一人が真っ黒な男性で、顔が鏡みたいになっているらしいです」

「そう、で?その幽霊と鳥人間は具体的にどこに何時に現れるの?加奈」

加奈は持っていたタブレットを起動し、調査書を開く

加奈、私の同僚であり、私たちが所属している教会、アルカナ教会の見習いシスターであり、私のバディー。

私とは違い、能力を持たない為、基本的に現場を入り口待機し、私に問題が起きたら応援を呼ぶ係になっている。

「鳥人間が、3時に屋上で確認されてますね、そして真っ黒さんは」

「ちょっと待って」

私は急いで彼女の

「はい?どうしましたか」

「真っ黒さんって何よ真っ黒さんってこれから任務っていうのに気がゆるんじゃうでしょ」

「いいじゃないですか、真っ黒さん、可愛くないですか?」

「なんで化け物に可愛い名前を付けたがるの」

「真っ黒さんって実際に見たっていう報告はちょくちょくあがってるんですけど、被害報告がないんですよね、行方不明になったとか、攻撃されたとかの報告がないんです。だから実はいい人なのかなと思って」

「こんなところにいる人間がいい人なわけないでしょ、まったく」

加奈は自分が敵と思ったものに関しては全く容赦がない。話を聞く前にナイフを投げたり、相打ちにしてでも殺そうとしてくる。だが、味方にはかなり甘い。いつか足をすくわれるんじゃないかと思う。

「で、真っ黒さんがいる場所が...」

加奈はタブレットを見たまま少し固まる。

「どうしたの?」

「あそこですね...」

彼女は指をさした場所は、北海道大震災の慰霊碑の前だった。

「なるほどね」

「どうやら真っ黒さんは死んだ人が想い人を思って泣いている幽霊とか...いわれてるらしいです」

「なるほどね、まあ、あの災害は最悪だったものね」

私たちはあの災害を経験していない。

だが、町にいる災害を生き残った住人は口をそろって

『あそこは地獄だ』

と語った。あの災害、北海道大震災が生み出したタロットカードのせいで、まだたくさんの人が死んでるなんて、最低な話だ。

「加奈がいう真っ黒さんは、攻撃したって事例を聞かなかったんでしょ?ならここの調査は貴方に任せるわ」

「わかりました。こっちならやりますよ」

「あら、少しは駄々をこねると思ったわ」

「...ここの幽霊さんは、多分いい人でしょうから」

加奈は慰霊碑の前に移動する。

「そう、じゃあ私は屋上で待機しておくわ、3時の5分前に連絡入れて」

「わかりました、問題があったらすぐ連絡してくださいね」

「加奈もね、やさしい幽霊さんに会えるといいわね」

私は手を振って、屋上へ向かった。

__________________

「出現5分前ですけど、問題はありましたか?」

屋上で待機していると、加奈から連絡が入った。

「こっちは何もない、そっちは?」

「こっちも何もないです。やはりただの噂だったんでしょうか」

「さあね、ただあの三人が調べたことなら、大丈夫なはずなんだけど」

「こっちは、そうね、風が強くなってきたくらいかしら」

加奈の声が一瞬聞こえなくなる。

「風ですか?どれくらいですか?」

電話越しに何かを取り出す音が聞こえる。多分、最近買ったと言っていた電子メモだろう。

「髪が崩れるくらいかしらね」

「...こっちは風なんて吹いてませんよ」

その時だった。空に亀裂が入る。

その亀裂は少しずつ、少しずつ、まるで何かが壁をかじっているような音とともに広がっていく。

やがて、その亀裂の先が見え始めた。

闇だ。その中には闇が広がっていた。

「...おでましね」

私は、腰にぶら下げておいた狐のカードを前に出すと

「フォックス!レディー...」

私は走る体制をとる。このポーズを何て言ったか、クラウジン...忘れた。

そのポーズをとった瞬間、前に8つの鳥居が、重なるように出現した。

「...GO!」

私はその真ん中を一気に走りだした。

一つ目で、目が、二つ目で、髪が変化していく、

全ての鳥居をくぐると、私の体は成人男性くらいの大きさの狐に変わっていた。

「ほんとになれないわね、この体...さあこい!」

私が空を見上げると、亀裂の大きさは、この病院の大きさくらいデカくなっていた。

「...加奈、ごめん、見誤った」

「どうしたの!?美波!」

裂け目から何かがでてくる。

確かにそれは天使であった。

白いきれいな翼が6つ生えていて、マルチとかそこら辺の人が来てそうなきれいな白いスーツを着ている。異質なところは、顔だけが闇に覆われてるところだろう。

だが、これは小アルカナなどではない。間違いなく

「大アルカナの化け物!」

天使が近づいてくる。

「しかもかなりでかい。何が小アルカナの化け物よ」

こいつには私じゃ絶対に勝てない。ただ、こんなに町の近くに大アルカナの化け物が現れるなんて、

こいつを放置していたら間違いなく町が崩壊する。

「加奈、ドローンを三体上空に飛ばしたら一旦教会に応援をお願いして...加奈?」

...あれ?今気が付いた。加奈から返事がない。

狐の姿であろうと、この首にかけているチョークさえあれば、話せるはずなのに

「通信阻害か!」

天使が翼を広げる。

「何か来る!」

私は身構えようとする。だがすべてが遅かった。

天使が羽を羽ばたかせると、床が崩れ落ちた。

いや、床じゃない。この病院が全壊したのだ。

「これが大アルカナの暴走...ろくでもない力ね」

この状況、私は無事に着地し、逃げられる確率はある。かなり低いが、

だが、加奈はどうだろうか、彼女は普通の人間だ。この化け物に襲われたら、ひとたまりもない

それどころか、もうしんでるかもしれない。

「とりあえず安否の確認、そして救助しないと」

私はなるべく大きいがれきの上に飛び乗り、地面に着地する。

そして、急いで慰霊碑を探す。

「ここはあまり広い病院じゃない。しかも加奈は慰霊碑の前にいた。あいつらは墓は破壊できないはず、慰霊碑が見つかれば」

「美波!」

遠くから加奈の声がする。加奈は生きていたが、足を負傷していた。

あれじゃ逃げられない。私は急いで加奈の方へと走る。加奈は親友なんだ。死なせるわけにはいかない。

「加奈!」

私は獣になった手を彼女の方へ伸ばす。

だが、それをあの天使に見られていた。

天使は翼を広げる。

「危ない!」

その瞬間、光の矢が加奈の方へ降り注ぐ。

がれきがどんどん粉々になっていき、塵が風に乗り、煙になる。そして加奈の体を隠す。

「う...そ...」

いや、違う、死んでない。死んでるはずがない。

だって、加奈は私と約束してくれたんだ。死ぬはずがない。大丈夫...

「加奈!」

煙が消える。

加奈がいた場所には、大きな鏡のドームができていた。

やがてそのドームは消え、中から鏡...いや、鏡の盾を持った真っ黒な男が出てきた。

男は黒いヘルメットをしており、シールドの部分は鏡になっている、黒い鎧のようなものを着ていて。そして、赤いマントを羽ばたかせていた。

「...真っ黒さん?」

これが私の、いや私たちの物語の始まりだった。




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