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10月24日。         その①

作者: myu

 県立の進学女子高に入学して数か月。母校の中学校長から電話があったということ。どうやら高校に入学してから急激に成績が落ちているということで電話がきたらしく、私はお詫びの電話を入れた。学校で推薦してあげたのにこれはない、ということなのだろう。


 校長「どうしたのかなと思って。非行にでも走ったんじゃないかと思ったよ。」

 ミサト「大丈夫です。ちょっと部活動がいそがしくて…」

もともと頭も良くないのにちょっと頑張ってしまったから、高校に入ってみて中学の時とは比べ物にならないくらい頭のそこそこイイ子がたくさんいて、ちょっと頑張ってもだめだとわかってから一生懸命勉強をすることを諦めてしまっていた。いわゆる”燃え尽き症候群”だ。


 高校に入ってバドミントン部に入部した。女子高ということもあり校則も他校よりは厳しく、思い描いていた夢の高校生活とはかけ離れていた。高校生といえばミニスカート、ピアス、バイト、部活、恋愛…と夢みていたのに!とりあえずこの進学校に入学することが目的だったので、入学してしまって勉強をする目的も目標も見つけられず、取り合えず部活動に専念することにした。


 ミサトには中学から付き合っている野球部の彼がいた。受験中何度か別れそうになったが、受験が終わり安定した付き合いができると思っていた。彼は野球部でシーズン中は一カ月に一度会えたかどうかわからない。会えないなりに毎日携帯のメールで連絡を取り合い、気持ちを確認していた。

 ミサト「私のこと、本当に好き?」

 俊「当たり前だろ。すきだよ。」


 こんなメールを毎日していても会えない不安で今まで毎日一緒だったのに、卒業して自分の目の届かないところで生活しているのがとても怖かった。いくら気持ちを確認しても満たされず、いつも不安でいっぱいだった。その不安も俊に会って体を重ねることで少し癒された。


 ミサトは母と妹との三人で基本的には生活していた。その間に三人の父と、何人かの母の彼氏が家を出入りしていた。ミサトは一番目の父の子で、小さいころはお父さんっ子だったのでお母さんに引き取られてしばらくは「お父さんに会いたい!」と泣いていたのを覚えているが、今となってはここまで育ててくれた母に申し訳なく思う。しかしそう思えるようになったのはだいぶ大人になってからのことだ。当時は二番目の父が一緒に生活していた。二番目の父は金と女癖が悪く、母の父が経営している会社のお金を横領したりと母はいつも泣いていた。でも会社の評判などもあってなかなか離婚までに時間がかかった。妹はストレスで激太りするし、二番目の父の精神的虐待もあり家の中はとっくの昔に崩壊していた。母の気持ちを考えると反抗もできず、子供らしく本当の気持ちを親にぶつけることもできずに、”イイ子ちゃん”になっていた。


 そんな中ミサトにとって俊は本当に心を許せる癒しの存在だった。いつも孤独感を感じていて家で居場所もなくて、妹のように反抗したり非行をしたりすることもできなくて、いろんなことに諦めを感じていた。諦めることで悲しいことも、憎たらしいことも全て知らないふりをして、心を守ってやっていけた。もうそれしか方法がなかった。そうでもしなければ頭がおかしくなりそうで、それができなかった妹は頭がおかしくなった。


 女子高といえば、男子がいない分とっても活動的なところがある。それは恋愛の話やなんやらとなると、もう誰も止められない程話が咲き乱れる。誰が付き合ってるとかキスしたとか、そんな話もちらほら。ミサトもみんなに合わせるように楽しく滑稽に交わってはいたけれど、ミサトはみんなとは少し違った。みんなより3、4歳大人びているような、そんな少女だった。冷静で大人しそうで、少し世の中を小馬鹿にしているような目つきの子だった。


 部活動が一番きつかった夏休みが終りかけ、夕方になると今まで空高く出ていた入道雲に変わって、薄く綿あめを引っ張って広げたような雲になった。真っ赤な秋の夕日が似合う季節になった。


 ミサト「部活終わったよ~☆今日は帰りに会える?…少しでいいから会いたいな。。」


 いつも同じメールだ。でもいつも返事が返ってくるのは夜の8時過ぎ。

 ミサト「部活忙しいのかな…でも会いたいよ。」しつこいかな、嫌われないかななんて思いながら、俊のメールの着信音をいつも待っていた。お風呂に入る時も、寝る時も、友人と遊ぶ時も携帯の着信を待っていた。

 友人の裕子「彼氏に執着していつもメールきにしてるなんてカッコウ悪いよね。ミサトはいつも男の話ばっかであきれるわ~。他に興味ないのかね?」

 ってあんたもだよ!それに人に執着して何が悪い?執着するってのはすごく勇気のいることなんだよ。だって信じた分、執着した分裏切られた時のダメージは大きくなるから。執着できる人、信じれる人がいるってことは凄く素敵なこと。

ミサトはそういつも思っていた。カッコウなんてよくなくたっていいんだ。わかる人だけ、自分のことをわかってくれればいい…


 夏休み明けのテストでミサトは苦手な数学三科目を赤点を取ってしまった。それを知った母は「部活なんてやってても進学はできない。赤点取るなら部活なんて辞めなさい!!」

昔からスパルタ教育で周りからも有名だった母。部活中も7時過ぎると着信が母で全て埋め尽くされていた。それでもつながらなければ学校に電話をしてきた。家に帰るのがただでさえ嫌なのに…家に帰ったらあの気持ち悪いオヤジに気を使って一緒にいなければいけないなんてバカバカしい!家に帰って接待をしているようだった。


 そして次のテストでも苦手な数学で赤点をとってしまい、”イイ子ちゃん”のミサトは部活を辞めた。そして心の中で叫んだ。「くそったれ!!!!」声にならない心の声だった。その苛立ち発散するためだったのか、何かを変えたかったのか、この日ミサトは両耳にピアスを空けた。


 バドミントン部を辞めてすぐに友達の加奈からダンス部に入らないかとの誘いがあった。普通の部活動のように毎日ではないし、楽にできるから人数も少ないし是非やらないかと誘われ入部してみることにした。ちょうど暇そうだった由香子も誘った。由香子とはこの後も同じ短大に進学して彼氏も同じ野球部ということもあり、何気に運命共同体になった。二人はすぐにダンス部に溶け込み、適当に適度に楽しく二年間を過ごした。


 ミサトと俊の交際が一年半になった頃、同じ高校内で噂を耳にするようになった。俊がミサトの高校の女と浮気をしているという話だ。ミサトは「俊に限ってそんなはずはない…」と何度も心で繰り返しながらも、ミサトの中学の時の元彼の周平と連絡を取った。周平はミサトが中学二年の時に三カ月だけ付き合った俊と同じ部活の共通の友人だ。


 ミサト「…こういう話を聞いたんだけど…本当なの?本当ならそれは誰なの?」

 周平「…本当だよ。俊もミサトも大事な友だちだからこういうことは言いたくないけど…同じ中学だった正美だよ。」


 正美とは小学校から高校まで同じで、中学の頃は純粋系という感じで男子からの評判はとてもよかった。しかし、もてる故に男女間のトラブルは絶えなくていつも何らかの噂がたつほどモテル子だった。ミサトの高校は体育が2~3クラス合同だったためよく一緒に体育をしていたのに、何も知らない顔して凄い女だな、と苛立ちを隠せなかったミサトは直接話をした。


 ミサト「俊と連絡取ってるんでしょ?みんなから聞いたよ。二人で公園で会ってるって。どういうつもり?」

 正美「勘違いしないでよね。連絡なんてとってないし、会ってないから!」


 俊ともまともに連絡を取れなくなっていた。私と会えなかったのは正美と会っていたからなんだ!!最低。最低な男。もうやったんでしょ。ほんとに汚い!汚らわしい!そんなにその女がいいならそっちにいってろ!!    信じるほど裏切られた時のダメージは大きくて、自分の親と重なった。この時初めて「もう誰も信じない」そう思った。


 結局、その後約一カ月もすると今まで通り何もなかったかのように俊から連絡が来るようになった。正美に振られたのかなんなのか。復縁したいと言われて心が揺れ動いたけれど、都合のイイ女になりたくないし、でも好きだしという間で、いつでも別れられるように当時出てきた”お試し期間”と称して付き合うことにした。


 嘘でも、半信半疑でも、俊に「すきだよ」と言われると心地がいい。俊から連絡がくると一人でニヤッとしてしまう。いつも俊からのメールがくるのを待っている。街を歩けばもしかして俊がいるんじゃないかって、いるはずもないのに探してしまう。少なくても付き合い始めて三年間は俊のことずっと考えてる。もっともっと好きって言ってほしい。もっともっとギュッてしてほしい。もっともっと重なり合って愛し合って、私のことだけ見ててほしい。だって、私には俊しかいないんだから…


 もっと愛がほしかった。ミサトの居場所はやっぱり俊の中でしかなかった。





                                         次回に続く

   

これは作者の経験を100%ノンフィクションで書いています。(人物名または企業名は仮名です。)母、妹との三人の生活の間にいる三人の父。数人の母の彼氏。男女関係、親子関係、母の離婚と三度の結婚、恋愛、思春期の気持ち、今になっての心情の変化、自身の恋愛を軸に素直に今まで感じてきたことを書きました。


現在24歳、2009年10月24日に挙式をあげ、退職し主人の言葉に甘えて少しばかりの休息をしています。友人たちに「家にいるなら書きものでもしたら」とのことで今回乗っかってみました☆


 同じ立場の方、母と同じ立場で子供はどんなふうに感じているんだろう…とか、今まさに恋愛真っ最中の思春期の皆さんの少しでもお腹の足しになってもらえるようなものが書けたらいいなと思います。全く書きものなどしたことがないので面白いものが書けるかわかりませんが…


 24歳の飾らない、気取らない、ただただ純粋に書いただけの物語です。ぜひ最後までお付き合いください。

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