スタートダッシュは成功?
「いやいやいやいやこんなところしょっぱな来るところじゃないでしょ!いや場合によっては来るけどさぁ!」
希は青い顔をしながら入るのを拒否する。しかしモアはそんなことをお構いなしに
「まぁまぁそんなに焦らなくても大丈夫、優しい人多いから」
と、希の手を引っ張ってギルドの扉をガンッ!っと蹴って開けた。その瞬間、騒がしかった声が静まり皆の視線が希とモアに集まる。
(ちょ、無理無理!こーゆーのが一番苦手なんだって!)
希は緊張のあまり吐き気がするのを必死に抑え、なるべく視線を合わせないように目線を下に下げる。
「お?モア嬢じゃねぇか?!一体どうしたんだ?」
一番前にいた厳つい女性の冒険者がモアに話しかける。
「散歩の帰りだよ。ついでにお父さん今いる?もしかしてどっかいった?」
「マスターならさっき向こうの部屋に入っていったぞ」
そういって厳つい女性の冒険者は二階の部屋を指さした。モアはそれを聞くと
「ありがとう!あ、ついでにこの子は私の友達だから優しくしてあげてね!」
と言い残すと希を置いて二階に跳んで行ってしまった。
「…あれ?置いてけぼりですか?」
見知らぬ場所に知らない人達がいるところにポツンと残されてしまった希。そこへ見かねた男性冒険者が
「大丈夫、モア嬢はいいやつだから絶対に悪いことはしないさ」
と、声をかけてくれた。すると二階の手すりからモアが希に向かって手を振り
「希!二階においで!そこの螺旋階段から登れるよ!」
そう言って部屋の中に入っていった。
「…まぁ人相的には心配してないんだけどね」
希は螺旋階段を上り、モアが入っていった部屋に恐る恐る入ってみる。そこには…
「よく来てくれたね、君がモアの友達の希…だっけ?ここにいる限りは衣食住は保証するから安心したまえ」
黒と白のツートンカラーの猫がいた。