天の川の願い事
1話完結の短篇小説です。
七夕ということで、天の川をテーマにした物語を書いてみました。
拙い文章ですが、ふたりの物語を、どうか見届けてもらえたらうれしいです。
小さい頃、七夕の昔話が嫌いだった。
確かに、恋に現を抜かして仕事を放りだしてしまった織姫と彦星は、問題だと思う。けれど、だからって、大きな川なんかでふたりを引き離して、年に一度しか会えないようにするなんて、いくら何でもやりすぎではないだろうか。それ以外毎日働けなんて、ブラック企業が可愛く見えてくる。
その上、ほとんど梅雨に被るくせに、晴天じゃないと会えないとか、あまりにも救いがない。
「なーんて、メルヘンなことを考えてた可愛い子供時代が私にもありましたとさ」
私は、テーブルに顎を付き、ため息交じりにそう言った。それを見て、3つ年上の恋人・和志は、アハハっと苦笑いを浮かべる。
6月末、珍しく晴れた週末。駅に飾られた笹の葉と七夕飾りを見ながら、私たちはカフェのテラス席でお茶を楽しんでいた。
キャップのつばをいじりながら、和志が問う。
「じゃあ、泉美は天の川嫌いだったの?仲睦まじい恋人同士を引き裂く悪者だから」
「まあね。悪いのは天の川じゃなくて、ふたりの親?神様?なんだけどさ。昔は、織姫と彦星が会えないのはあの川の所為だって思ってたのかも」
風が吹いて、五色の短冊と、折り紙で作った輪っかや提灯がゆらゆらと揺れる。駅のそばを通りかかった親子連れが、そこにさらに短冊を付け足していく。
「今の泉美からは考えられないよねぇ。泉美って、俺の知る女の子の中で、誰よりも現実的だもん」
「それって褒めてるの?」
「褒めてるよ」
和志はふわりと微笑んだ。
病院で出会った私たちは、2年前から交際を続けている。和志は当時入院患者で、私は腰を痛めた父の通院に付き添っていた。売店で顔を合わせるうちに意気投合し、告白したのは私から。難しい顔で「考えさせてほしい」と言われ、諦めかけた私だったが、1か月も待たされて彼が退院したころ、逆に交際を申し込まれた。
穏やかで、怒ったところなんて一度も見せたことがない和志。女の子のように色白で身体の線が細くて、でもいざというときには頼りになって、私が落ち込んでいたら優しく包み込んでくれる和志。
和志はもうすぐ30歳を迎えるし、私の妹は去年婚約したし、同棲だってしているし、そろそろ結婚……なんて考えているのだけれど、なかなか彼はそういう気配を見せない。彼にもいろいろ思うところはあるのだろう。少し気にはかかるけれど、和志の言う通り私は他人が引くほどの現実主義者なので、仕事のキャリアアップもあるしまだいいか、とも思っている。
ぼんやりと七夕飾りを眺めていると、突然スプーンが差し出された。
「アフォガード。食べる?」
私がチーズケーキとかなり悩んでいたから、気を遣って注文したのだろう。この人はとことん私に甘い。ちらっと店内を確認し、誰も見ていないことを確かめ、口を開ける。
とろりと溶けるバニラアイスが、苦いエスプレッソと共に舌をなぞり、喉の奥へ滑る。私は、ブラックコーヒーは苦手なくせに、こういう甘さと苦さの組み合わせは大好物という面倒くさい生き物なのだ。
お返しに、私もチーズケーキの端をフォークで切り取ると、和志に突き出した。彼は笑って、それを受け入れた。
スイーツも、この空間も、和志のことも、大好きだった。
「折角だから、ちょっと近くで見てみようか」
彼の提案に乗り、私たちは店を出て、駅へと向かった。傍に寄ると、この笹、案外大きい。上の方は、脚立を使わないと届かない。
下の方から、短冊を見ていく。時々反転した文字で、「おひめさまになりたい」「へんしんべるとがほしい」「ゆうえんちにいきたい」。ちょっと高いところには、「〇〇くんと両思いになりたい」「コンクールで優勝できますように」「第1志望に合格しますように」。さらに上は、「働かずに金を稼ぎたい」なんて大人の汚い野望まで。
「見て、泉美。これ、『世界平和』の隣に、『世界征服』だって。この高さ、きっと大人だよね」
ふたつの短冊を指さしながら、子供のように和志が笑う。私も、つられて噴き出した。
「良かったら、おふたりも書いていかれませんか?」
そう言って短冊を差し出してきたのは、イベントスタッフらしい若い女性だった。
「いや、私たちは……」
「書こうよ、泉美。せっかくだから。願掛けじゃなくて、決意表明でもいいしさ」
断ろうとする私を遮り、和志が短冊を受け取る。「ね、お願い」と言いながらじっと見つめる子犬のようなその目に、私はめっぽう弱いのだ。仕方なく、ペン立ての中から一本、油性ペンを手に取った。
「ふたりが天の川を超えて出会うためにはさ」
願いをしたためながら、和志は呟く。
「カササギの橋を渡らないといけないんだよね。ふたりが出会えるように、沢山のカササギが集まって、橋を作ってくれるんだって」
「……普通に舟じゃ駄目なのね。それか、泳いで渡るとか」
「織姫様も彦星様も、そんなに脳筋じゃないと思うよ……」
和志は、先に短冊を書き終え、パっと裏返した。見せるのが恥ずかしいということだろう。まあ、無理に見ようとは思わないし、私も見せるつもりはないけれど。
私の短冊にもこよりを通して、脚立に乗った男性スタッフにふたりで短冊を渡すと、スタッフは見えづらい高い位置にその短冊を吊るしてくれた。
「8日の朝、この笹は短冊ごと燃やします。そうすると、煙が空まで届いて、神様が願いを叶えてくださるそうですよ」
スタッフは、そう言って私たちを見送った。
和志に言われた通り、私のは願いというより決意表明だ。神頼みをするつもりはないし、神様の存在を信じてはいない。私が信じるのは、自分自身と和志だけだ。
その日の夜、私たちはいつも通り散歩に出かけた。ここ最近、晴れた日の夜のルーティンになっている。私たちの住むアパートはそこそこ田舎にあって、ひとつ線路をまたげば、虫の声と川のせせらぎだけに包まれる。街灯はないが、星明りが優しく照らしてくれて、そう不便はない。
空を見上げると、うっすらと天の川が見えた。煌々と輝くベガとアルタイルが、もうすぐやってくる約束の日を心待ちにしているようで、「会えるといいね」なんて私らしくないことを呟いたのだった。
7月7日。曇り空。雨こそ降っていないけれど、やっぱり今年もふたりは出会うことができなかった。
そして、いつもの夜の散歩道、私も、ひとりぼっち。
——彼が死んで、今日で1週間になる。
突然のことというわけではなかった。彼が入院していたあの頃から、彼は死を覚悟していた。彼を侵していた病は、発見時に既にステージⅣまで進行し、打つ手はなかった。私はそれを知ったうえで彼に好きだと伝えたし、それでいいと思っていた。
彼は、既に絶望的だった未来を、全て私にくれた。本格的な治療はせず、痛み止めと内服薬だけで対処し、それでも絶えぬ苦痛を押し殺して、時には血を吐きながら、私の傍にいてくれた。最初付き合うことを渋っていたとは思えないほど、溺愛してくれた。
2年も生きられたことが、むしろ奇跡だったのだ。幸福だったのだ。
本当は彼と籍を入れたかった。残される人生を、彼の家族として生きたかった。けれど、彼にとってはそれは不幸だったのだ。私を縛り付けたくない。他の誰かと幸せになってほしい。ありきたりな願望だったけれど、彼はそのありきたりを望んでいた。
最後まで、優しい人だった。
そう、覚悟していたのだ。後悔するつもりで付き合い始めたわけじゃない。いつか彼が私の目の前からいなくなってしまうこと、この散歩道を、ひとりで歩く日がやってくること、それを分かったうえで、私たちは結ばれた。
そのつもりだった——はずなのに。
「……会いたい」
川沿いを一歩、踏み出す。じゃり、と小石が擦れる音がする。
「会いたい」
もう一歩。
「……会いたいなぁ……」
何の捻りもないその言葉は、一度呟けばもう止まらなかった。思わず、膝を抱えてしゃがみこむ。サンダルの金具が、水滴で濡れる。雨が降ったのかと顔を上げた。違った。ああ、私、泣いてるんだ。現実主義の合理主義、男勝りで可愛げのないこの私が。
和志を失った、そのたったひとつの現実で、泣いているんだ。
「大丈夫だと思ったのにな」
「俺は、きっときみなら泣くだろうって思ったよ」
突然、そんな言葉が耳に届いた。
バッと立ち上がり、辺りを見回す。聞き覚えのある声。もちろん、あり得ない。でも、何度も聞いたその声を——大好きな彼の声を、私が聴き間違えるわけがないのだ。
川の向こう。丸っこい石で埋め尽くされた川岸と、その奥には深い森が続いている。その一番手前、川に足を浸けるように、その人は立っていた。
「1週間ぶりだね、泉美」
「……和志……」
彼を失ったショックから見える幻覚か、それとも夢の中なのか。どちらにせよ、そこには、あの優しくて穏やかで女の子みたいな見た目の、大好きな大好きな恋人が立っている。
私の考えを見透かすように、彼は笑って言った。
「一応言っておくけど、本物だよ。現実主義のきみには納得できないかもしれないけど、一応、幽霊ってやつかな」
そう言われればその通り——というのも変な話なのだが、この暗さの中、彼の姿は異様に明るくはっきりと見えた。この際幽霊の真偽は置いておくとして、足がないとか白装束を着ているとか、てっきりそういうものだと思っていたのだけれど、彼の足は水に浸かっているだけでちゃんとあるし、服は死んだ日のままだった。
「……あんまり、幽霊っぽく、ないのね」
絶対、言うべき言葉はそれじゃない。でも、私の口からは、そんなことしか出てこなかった。何か核心的なことに触れてしまえば、彼がまたすぐ姿を消してしまいそうな気がして、少しでもこの時間を引き延ばしたくて——。
彼は、可笑しそうに口元を押さえた。
「幽霊に”らしさ”を求めてるんだから、やっぱり泉美は現実主義者のふりして、根本はロマンチストなんだろうね」
笑ってくれたのが嬉しくて、私もつられて笑みを零した。死に際の彼は、本当に苦しそうだったから。死んでしまったのは寂しいし、できることならもっと生きていてほしかったけれど、彼はやっと、長年の苦しみから解放されたのかもしれない。
ふと、彼を見ていてぞわりと鳥肌が立った。——体が、さっきよりも透けている。
「和志……その体……!」
私が指を指すと、彼は困ったように言った。
「ああ、うん……あまり長くはもたないからね、この体も。
俺はね、願いを叶えたかったんだ。そのために、ここに来たんだよ」
「願い?」
「そう。短冊に書いたでしょ、願い事」
——確かに、書いた。でも、彼が何を願ったのか、私は知らない。
「なんて書いたの?」
そう言って川に足を踏み入れると、彼は激しく恫喝した。
「来ちゃダメだ!」
びりり、と空気が震える。彼のこんな大声を聞いたのは、初めてだった。
そして、もう一度、今度は優しくゆっくりと呟いた。
「来ちゃ、駄目だよ。
川っていうのはね、あの世とこの世の境界線なんだよ。三途の川、ってよく聞くし、漫画でもそういう描写見たことあるでしょ。きみがここを流れに逆らって無理やり超えてしまえば、なんだろう……『天命に逆らった』ことになるのかな。とにかく、俺と一緒にはいられなくなるんだ」
川を渡ったら死ぬ、なんて話だったら、迷いなく渡っていたと思う。ああ、認めてしまおう。私は桁外れにロマンチストだ。恋だの愛だのに溺れるなんて思わなかったけれど、彼がいないこの世界に、こんなに未練がないなんて。
でも、渡ったら離れ離れなんて——そんなのは、嫌だ。
「……ねぇ、和志」
「……なあに」
「和志は、どんなときが、一番幸せ?」
少しずつ体が透き通り、腕の先やひざ下はほとんど見えなくなっている彼に、そう問いかける。このまま彼を見送ることしかできないなら、せめて最期まで、話をさせてほしい。
和志は、そうだなぁ、と考え込んで、こう答えた。
「……泉美の隣にいるとき」
その声は、溶かされてしまいそうなほど甘くて温かくて、柔らかなシルクの布のように私を包み込んだ。
「泉美が笑ってくれるとき。泉美が手を握ってくれるとき。泉美と抱きしめ合うとき。俺が作った焦げだらけのご飯も、仕方ないなぁなんて言いながら、何だかんだ全部食べてくれるとき。泉美に似合うアクセサリーをネットで探しているとき。撫でたりキスしたりすると、2年も付き合ってるのに未だに慣れなくて、顔を真っ赤にして、割と本気で殴り掛かってくる泉美をなだめるとき。せっかくお出かけしたのに、普段しっかり者の泉美がうっかり財布を忘れて、いいよって言ってるのに頑なに奢られてくれない泉美を笑いながら説得してるとき。それから……」
最後の方は、声が震えっぱなしで、彼が何とか涙をこらえているのがよくわかった。
「泉美が、俺の傍で、大好きって言ってくれるとき」
その言葉が引き金となったように、和志は嗚咽する。私よりも女の子みたいだったのに、どんなに苦しい時でも一度も涙を見せたことのなかった彼が、今、体を折って、大粒の涙を流している。
「泉美っ……、俺、まだ、泉美の傍にいたかったよ……!」
ああ——傍に行けたらどんなにいいだろう。彼の肩を抱きしめてあげられたらどんなにいいだろう。私が、あの短冊に書いた決意表明を全うできたら——どんなにいいだろう。
「……カササギが来てくれれば良かったのにね」
私は、無意識のうちにそう呟いていた。
彼が、顔を上げる。
「カササギが来て、川を無理やり渡らなくても、私たちが会えるようにしてくれればいいのにね」
せめて、彼が寂しくないように。私は、涙も鼻水もぐちゃぐちゃで、それでも何とか笑顔を向ける。
すると、彼も、ハハッと笑って、鏡のように笑顔を見せた。
「駄目だよ、泉美。だって、俺も泉美も、会えるのが年に1回だけなんて耐えられないでしょ」
そうだね——と、頷こうとした、そのとき。
ふわりと、草むらの影から、一筋の光が舞い上がった。
和志も気づいたようで、ふたりしてその光を目で追う。1分も経たないうちに、光はひとつ増え、ふたつ増え、次第に真昼のように辺りは明るくなっていった。
「蛍……」
丁度、羽化の時期だった。この川は水質もいいし、昔はたくさん蛍がいたと聞いたことはあったが、ここ数年はめっきり減っていたはずなのに。
黄色い点滅、優しい光。それが、ふわふわと飛び交い、水面に反射する。イルミネーション見たいと比喩するには、それはあまりにも自然的で。
「何だかこの川、本当に天の川みたいね」
私がそう呟くと、和志は一瞬目を見開いて、晴れやかに笑った。
「……本物じゃないけど、俺の願いは、叶っちゃったみたいだ」
「え?それってどういう——」
「何でもない。とにかく、全く未練がないと言えば嘘になるけど、俺がここに来た目的は果たされた。……もう、時間がないや」
そう言った彼の体は、もうほとんど消えかかっている。
私は自分の決意表明を果たせていないのに。
彼は、酷く一方的で残酷な愛情と思い出だけを私に残して、消えてしまおうとしている。
「やだっ……やだよ」
駄々をこねる子供のように、そう言葉を吐いた。
「私の傍にいるのが幸せだって思ってくれてるんでしょ!?だったら、行かないで!傍にいてよ!!」
和志は、申し訳なさそうな笑みだけを浮かべる。
——やっぱり神様なんて、いない。世の中は、不平等で、不親切だ。私は和志が大好きだけど、だからこそ仕事だって真面目に頑張ってたし、恋愛に現を抜かすなんてしていない。それなのに、こんな結末なんて、あんまりだ。カササギすらも、私たちを助けてくれないなんて——。
ふわり。
蛍が、私の足元へと降り立った。力尽きてしまったのか——そう心配した矢先、次々と蛍が集まってくる。それは、少しずつ川へとアーチ状に距離を伸ばし、やがて和志の足元へと——。
カササギの橋に比べれば、それはとても細くて、ふたりが同時に渡ってしまえば、きっとすぐに崩れ落ちてしまいそうな、とても頼りなげな光の橋。でも、私だけなら——。
迷いは、無かった。
私は、躊躇いなくその橋に足をかけた。ぐらりと体が傾くが、構わない。一気に駆け抜ける。足が離れた先から、蛍たちは再び霧散して、自由に飛び回り始めた。もう、来た道は二度と戻れない。それでもいい。私は、目の前にいる彼の元へ行きたい。
いろんな感情が複雑に絡み合ったようなその目を、和志はずっと私に向けていた。でも、止めることはしなかった。きっとそれが、彼の答えだ。
蛍の橋を——私たちを隔てる天の川を渡り切ったとき、私は、彼の腕に抱かれていた。触れる。消えたはずの腕も足も、ちゃんとそこにある。それはきっと、私が彼と同類になったからだ。
「……無茶しすぎだよ、泉美」
彼は、私の耳元で、消え入りそうな声でそう呟いた。それは、感謝にも聞こえたし、懺悔にも聞こえた。でも、私は自分の決意を果たすために、そして彼のいない世界で生きていくことが耐えられなかったためにそうしたのだ。後悔なんて欠片もない。
「ねえ、和志。これからも、ずっと一緒にいようね。もう勝手に置いていったりしないでね」
彼が頷くたびに、私の肩が濡れる。案外泣き虫だったんだなぁ、この人は。
それがまた愛おしくてたまらなくて、私はそっと、彼に囁いた。
「和志。今までもこれからもずっと、永遠に、大好きよ」
私たちは、抱き合ったまま、蛍の光と共に、闇に溶けていった。
◇ ◇ ◇
翌朝、駅前。
スタッフたちの手によって、七夕飾りがドラム缶に放り込まれ、そこに火が投げ入れられた。
根元から燃えていくその先、一番高い笹の葉に、ふたつの短冊が並んでいる。
『七夕の夜、泉美と一緒に天の川を見られますように』
『和志を私の手で幸せにする!』
その短冊は、やがて白い煙となって立ち上り、すっかり晴れ渡った空に吸い込まれ、消えた。
最後までお読みいただきありがとうございました。
悲恋……というには大げさだったかもしれませんが、私の中では、彼女らの物語の結末はしっかり悲恋です。
でも、川の向こう側で、ずっとふたり寄り添いながら過ごしていってほしいです。
恋愛短篇集『日々を彩る、恋愛短篇。』も投稿中ですので、ぜひお読みください。