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第7話 残業はしない主義

異世界転生課にとってのイレギュラー。

それは、想定されていない異世界召喚である。

通常、日本人が亡くなり、火葬されてから案内されてこの課にやってくるのだが、

異世界の何者かが急に呼び出したりすると、転生課にまず現れる。

今まさに明日香の目の前に召喚陣が顕現している。

明日香は「しまった」と思っていた。

もう定時なのだ。

事務作業を終了して、さあ飲みに行こうとした段階でのイレギュラー。



残業確定である。



「な、なんだここは!」


パニくる青年。20代前半と思われる。

急な召喚は手元に書類がすぐに届かないので、明日香側もなんだかわからない。


「異世界転生課へようこそ。あなたはどうやらどこかの世界から呼ばれてしまったようです」


「な、なんだそりゃ」


意外に冷静だった。


「本来なら死んだ人間が行くのですが、貴方は生きたまま別世界に飛ぶことになりました」


窓口に書類が届く。大急ぎで書類担当官がもってきたので手書きであった。


「…水口さま、どうやら貴方の転生先はディランモード。魔王なる存在が世界を侵略しているご様子。貴方には世界を救ってもらう使命が課せられました」


「えェェェェェえ」


本当にびっくりしているようだったが、話を続ける。


「改めてディランモードに行った際に誰かしらから説明があると思います。もしかしたら向こうの事情で説明がないかもしれません」


「説明ないんかーい!」


ノリがよくなってきた。


「なお、ここ転生課で喋った記憶も場合によっては無くなる可能性もあります」


「待って、情報量が多すぎる!俺は元の世界に戻れるのか!?」


窓口に詰め寄る水口さん。隔たれてた透明ガラスにへばりついている。かわいそうに。


「不明です」


「怖いよ!行くの怖すぎるよ!」


「こちらでスキルが付与されます。転生先でもしくはスキルが手に入るかもしれません」


「スキルってなんですか!」


説明が早すぎてついてこれない水口さん。


「水口さま固有の能力です。こちらでつく能力は【未来視】。少し先の未来が視えるようにしておきました。せめてもの餞別です。どうぞ新たな世界で、生き延びてください」


「え。なんだかすごく優しい。惚れそう」


暗闇に吸い込まれていく水口さん。果たして彼は無事、日本に戻れるのか。

なんのために呼ばれたのか。謎が謎を呼ぶ。


だが、明日香にとってはどうでもいい。初めから意識は酒に向いていた。

今、話していた相手の名前がなんであったかももう覚えていない。


残業とはそういうものだ。



続く。





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