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第26話 警察官

死は一瞬だった。

平凡な人生、平凡な警察官。

ある日、車に轢かれそうになった少女を助けて、代わりに轢かれた。

少女が無事だったことは、最期の意識で確認できた。これで思い残すことはない。

自分が信じた、人を助けるヒーローになれたと、満足だった。


「ようこそ、異世界転生課です。お望みとあらばどんな世界にだって転生させちゃいます!さあ、吉田元太さまのご要望はどんな世界ですか?」


死を認識した瞬間、いや、認識できるものなのだろうか?

とにかく、気づいたときには、目の前にスーツ姿のうら若き女性が座っていた。

自分の頭はどうかしてしまったのだろう。

区役所の窓口にいるような風景である。


「異世界転生課…?私は転生するのですか?」


聞いてみて、なんとなく得心がいった。ここはあの世なのだ。

死した人間が輪廻転生をする場所なのだ。

まさか異世界に転生するとは、始めて知ったが。


「はい、吉田さまには新たな世界で記憶をもったまま活躍していただきます。」


死して記憶が引き継げるのか。

しかも転生先を選べるという。

これは悩ましい。

今まで生きてきて、警察官として市民を守ることばかり考えてきた。

新たな生で、どうするかなど夢想だにしなかった。


「私は警察官として生きてきました。記憶を引き継げるのであれば、このまま人を守ることが出来る世界がよいと思います。」


我ながら柔軟性がない。

もっと自由に生きる道はいくらでもあったであろう。

しかし、自分にはそれしか生きる道を知らない。


「それでは、あなたの転生先は「剣道師匠国レディコルカ」。剣と魔法の世界です。この国の始祖は大日本帝国軍人さんでした。ですので、暦など日の丸の記憶が色濃く出ております。レディコルカは今まさに他国からの侵略にさらされようとしています。吉田さまの力で守ってあげてください。転生課からの餞別として、スキル【剣術】【探知】を潜在能力としてお付けします。目が覚めたときには、この転生課での記憶は消えていることでしょう。現地で混乱すると思いますが、どうか、ご武運を。」


「レディコルカ」…。

果たして無事に済むのだろうか。

剣道には少し自信があった。だが、魔法とはなんだ?

次の世界では平凡なんて言葉を使うことはなさそうだ。


身体を白い煙が包み込む。

ああ、これで逝くのかと、理解できた。


「お嬢さん、ありがとう、私は向こうで一段と頑張ることとしよう。」



意識が暗転する。

次に目が覚めたら、きっと異世界なのだろう。









「だーっ!疲れた!今日はたくさん飲むぞ~!」

「明日香、いつだって限界まで飲んでるじゃない?」

「それでいいのだ~!剣道師匠国レディコルカに転生させた記念なのだ~!」

「あらま、特に難易度高そうなとこ選んだわね」

「んふふ~、今日の警察官さんは、真面目そうだったから、頑張ってくれるかと思って~」

「すぐに死ななきゃいいけど…」

「大丈夫じゃない~?しらんけど~」

「あなたのそのテキトーさ、見習いたいわ。」

「うへへ~、ありがとう~。」




続く


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