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第23話 殿

無言が続く。


ここは明日香が毎日足しげく通う居酒屋である。

料理の美味さとリーズナブルさが売り。

ただいま、明日香ちゃんと伊藤くんが向き合って座っています。

着席より15分、無言が続いている。

店員も声をかけられないほどの威圧感を出してるのだ。

むっすーとした明日香、ニコニコの伊藤くんが対称的だ。


「あ、すいませーん。あたりめと季節の変わり目サラダ。ビールをジョッキでお願いします。明日香さんは何を飲みますか?」

「…モスコミュール」

「じゃあ、それで!」


さわやかイケメンの注文で店員さんたちの緊張が弛緩した。よかった。喋った。


「明日香さんは、いつもこの店に来てるんですね」

「そうですネ」


じと目の明日香ちゃん。


「いつも飲んでる人殺しでもよかったんですよ?」

「はっ!まさか!伊藤くんのような送り狼の前で酔いつぶれたら何されるかわかんないからな~!」

「ははは、何もしませんよ。」

「嘘だ~!男は狼なんだわ~!」

「ところで、今日の調書はどうでしたか?明日香さんのために難しい漢字にはルビも振っておきましたよ!」

「余計なお世話じゃ!仕事中に人を飲みに誘うな!」

「明日香さんも仕事中よく楓さんたちと飲みに行く約束してるじゃないですか。」

「デートまがいのは別じゃ!」

「市島美穂子さん。調書みましたけど、異世界を選ぶセンスがさすがですよね。」

「そう?」

「市島美穂子。27歳。死因は軽トラにぶつかって心肺停止。転生死あるあるです。それを剣と魔法の世界「ラヴィーネ」にスキル【全魔法使用】【転移】【精霊使い】で送り込んだ。」

「なにかおかしい?」

「おかしくはありません。調書には書いていないゲーマーであることを聞き出し、剣と魔法の世界と相性がよいとした判断力がすごいと言っているのです。」

「ふ、ふふ~ん?褒めてもなにも出ないわよ?」


上機嫌になった明日香は芋焼酎をロックで注文した。

その後も伊藤くんの明日香ヨイショは続いた。

長時間褒められた明日香はもうへべれけである。


「よーし、伊藤!よく言った!今日から俺様の家来になることを許すぞ!」

「ははーっ、明日香殿さま!一生ついていきます!」




翌朝ーー


「おはよ~。」

テンションダウンダウンの明日香が職場にやってくると、

「殿!おはようございます!眠気覚ましのコーヒーをお持ちしました。お飲みください。」

「ありがとう~。」


「殿~」


「殿~」


「明日香、、、あんた、いつから殿様になったの?」

「楓か。わからん、覚えてない」

「伊藤くん、完全に舎弟というか、家来になっちゃってんじゃん。」

「昨日、あたし何したんだろう…」



伊藤くんの恋は家来へと昇華した。



つづく


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